第28話 おっさん、再会する
珍しい人間と再会した。
「久しぶり」
「そうじゃな」
客はアタンだった。
「元気そうだな」
「ああ、変わりない」
「ところで、流砂地帯はどうやって抜けた」
「飛びネズミを飼いならしてのう」
動物を道先案内人にか。
アタンは凄腕のテイマーのようだ。
「ここに来たのは何か目的があったんじゃないか」
「そうじゃ、ガラス製品を仕入れたい」
「あんたには魔石の借りもある。欲しいだけ売ってやる」
「それでは100程もらおうかのう」
「提案なんだが、俺達がいるオアシスの専属にならないか」
「それは無理じゃ。理由はじゃな」
アタンは過去の出来事を話し始めた。
「わしはあるオアシスに拠点を構える大店の主だった。わしは店を切り盛りし、友人がオアシス間のキャラバンを率いていたんじゃ。ある日、いつも安全に行き来できてる交易路に、友人を送り出す事になった。この時、わしは効率を考えてしまった。護衛の数をへらしても良いんじゃないかと。護衛の数を減らしたキャラバンは全滅。わしは挽回できないほどの損害をこうむった」
「それはアタンのせいじゃないだろう。運が悪かっただけだ」
「キャラバンが全滅して店が傾くよりも、友人が死んだ方が何倍も悲しかった。もう店をやったり誰かに仕えたりするつもりはない」
「そうか、気が変わったら教えてくれ」
数日後。
「じゃあ、達者でな」
「お前さんもな」
俺はドローンを出して、アタンのキャラバンを見送る。
充電池の残りが少ない。
ドローンを引き返そうとした時に、サンドウルフの群れが現れた。
必死に応戦するアタン。
「モニカ、ナビを頼む。アタンを助けるぞ」
「諾、闇の道標よ、指し示したまえ」
アタンの無事を祈りながら、駆け付ける。
モレクが方陣を組んで蹴りを繰り出す。
よく調教してあるな。
モレクを倒せないサンドウルフはいらだっているようだ。
サンドウルフがアタンの乗っているモレクの首に噛みついた。
モレクから血しぶきが上がる。
アタンはモレクの上で立ち上がるとジャンプ。
別のモレクに乗り換えた。
俺が駆け付ける事も無かったか。
俺達はサンドウルフをサクッと倒して後始末をした。
「アタン、言いたくはないが、護衛を雇わないのは自殺行為だ」
「分かっとる。これがわしの贖罪なんじゃ」
「あんたのその考えは間違っている。友人の分も長生きするべきなんじゃないのか」
「わしに、もっと生きて贖罪を果たせと言うんじゃな」
「俺は思う。俺を助けた事で多少はプラスにはなったんじゃないか。俺以外にも人助けはしているだろうし」
「じゃが、罪は消えん」
「そうだ。圧倒的に贖罪が足りてない。早く死ぬと贖罪が果たせないぞ。できるだけ長生きして沢山の人を助けた方が良いだろう」
「残酷な男じゃ。わしをお役御免にしてくれんとは」
「オアシスに居る男達を護衛につける。他のオアシスにいる孤児なんかも助けて良いから。長生きしてバンバン贖罪しろよ」
「ああ、そうじゃな。贖罪が足りとらんな。よかろう、オアシスの専属になってやろう」
アタンに交易を任せる事になった。
「話は分かったわ。彼に任せましょ」
本部でアズリがそう言った。
「これで、俺の仕事が一つ減ったよ」
「疑問なんだけど、贖罪はもう終わったとか言ってあげないの」
「そうすると生きる目的を失ってしまうんじゃないかと思ってな」
「なるほどね」
「腹が減ったな。モニカ、何が良い」
「牛丼」
「そうだな牛丼が好きだったな。よし、アタンのキャラバンも呼んで牛丼パーティだ」
本部でキャラバンのメンバー達と牛丼を食う。
「これ、マヨネーズと凄く合う。新しい発見だわ」
アズリさん、それはもうチェーン店でやっているから。
アズリに習ってみんなマヨネーズを掛けた。
「美味」
「モニカ、美味いか」
「あんた、不思議な男じゃな。食べた事の無い物を生み出しとる」
アタンが寄って来てそう言った。
「米ぐらいありそうだが」
「似たようなのはあるが、ここまで美味いのはな。忠告しておくぞ。この豊かさは妬まれる。気を付ける事じゃ」
「分かっているさ。このまま行くと盗賊団や他のオアシスに目を付けられるだろう」
「分かっとるなら良い」
そろそろ、戦闘の準備もしておかないと。
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