第24話 おっさん、ヴァンパイヤモスキート対策する

 俺は窓から外を眺める。

 砂漠に土砂降りの雨が降る。


「ほんとうに雨が降って来た。元冒険者の老人の言う事は間違ってなかったな」

「災いの天使の涙。砂漠の悪魔を呼び起こす」

「そうだな。これからが正念場だ」


 雨は降り続く。

 砂漠は雨を吸い込んで洪水にならないのだけが救いだ。


 翌日、一日中降り続いた雨が上がった。

 砂漠は瞬く間に緑の絨毯になった。

 皆が総出で草を刈る。

 モレクの餌にする為だ。


 3日、草を刈っていたら、ヴァンパイヤモスキートがついに出て来やがった。

 俺達は急いで家にこもる。

 しばらく経つとあのブーンという耳障りな音がする。

 手で叩いて仕留めたが、家の中にのあちこちにヴァンパイヤモスキートが飛んでいる。


「おい、家の中がヴァンパイヤモスキートだらけだ」

「我は悪魔を使役する者、悪魔には無敵なり」


 俺は魔力壁でモニカは体の作りで無敵なんだが、うっとうしい事この上ない。


「どこから入ってきたんだよ」


 俺は電池式蚊取りを何個も設置した。

 落ちていくヴァンパイヤモスキート。

 入って来た場所が分かった。

 煙突だ。

 煙突に網で蓋をする。

 他の家は大丈夫かな。


 携帯用蚊取りを付けてアズリの家を訪ねた。

 アズリの家の扉をノックする。


「おい、入るぞ」


 殺虫剤を体に吹き付けて、素早く入ったが何匹か入ってしまったようだ。

 ハエ叩きで落とす。


「いらっしゃい」

「この家の煙突は大丈夫だったんだな」

「当たり前よ。砂漠で何年暮らしていると思う。入って来そうな所は分かるわ」


 そりゃそうか。

 何年も暮らしていれば、自然と暮らしの知識が身につくよな。

 知らないのは俺だけって訳だ。


「電池式蚊取りは良いわね。この際だから、ヴァンパイヤモスキート対策品の試験をやらない?」

「いいね。蚊取り線香は試したから、電撃の蚊取り器だな」


 俺は発電機と蚊取り器を設置する。

 青い光が部屋に満ちた。

 ドアを少し開けるとヴァンパイヤモスキートが入って来た。

 紫外線に惹かれて、ヴァンパイヤモスキートが蚊取り器に近づく。

 パチッと火花が散ってヴァンパイヤモスキートが感電した。

 良い感じだ。


「これは良いわね。屋外でも威力を発揮しそう」

「よし、次は虫除けスプレーだ」


 スプレーを掛けてヴァンパイヤモスキートを招きいれる。

 ヴァンパイヤモスキートは俺達に近寄らない。

 かなり効果があるな。

 と思ったら。


「これ駄目。顔に寄ってくる」

「顔にスプレー出来ないものな。どうするかな携帯用蚊取りと併用かな」

「顔だけの防護服を作ったら良いんじゃない」

「どっちも安いが、顔だけの防護服の方が安いな。作ってもらおう」


 虫除けスプレーは毎日スプレーしないといけないのが難点だと思う。


 秘密の草は何年も持つらしいから、性能的には負けてるな。

 ただ、値段的にはこっちの勝ちだ。


 電撃殺虫器に良いのがあった。

 太陽光で充電して起動する。

 但し夜だけ点灯する。

 よし、外に設置だ。

 朝になれば死骸の山になるだろう。


 おっ、これなんかもいいな。

 電撃殺虫ラケット。

 ハエ叩きより威力がありそう。


 さっき、招き入れたヴァンパイヤモスキートを三人で追いかけ回す。


「そっち行ったぞ」

「任せて。やったわ。一匹倒した」

「くらえ、暗黒の稲妻。地獄の猛撃」


「いい汗かいた。電撃殺虫ラケット、楽しいな」

「ええ、癖になりそう」

「暗黒の戦棍は無敵なり。はっはっはっ」


「二人とも楽しんで頂けたようでなにより」


 色々と蚊取り器はあるのだが、大半はUSB電源か100ボルト電源なので使えない。

 このオアシスだけなら良いが、売り物にするには電池式か太陽光充電でないと。


 交易品が決まった。

 電池式蚊取りと虫除けスプレーと太陽光充電の電撃殺虫器と電撃殺虫ラケットだ。

 電池式蚊取りが1000円。

 虫除けスプレーが500円。

 太陽光充電の電撃殺虫器が2500円。

 電撃殺虫ラケットが600円。

 5人の魔力で1セット出せる。


 交易に行くのに出来るだけ多くの人を連れて行きたい。

 虫除けスプレーを駆使しよう。

 夜は100ボルト電源の電撃蚊取り器を駆使だな。

 発電機を使えば良いだけなので楽だ。


 交易に何故行くかと言えば、蚊取りグッズが売れるのは今だけだからだ。

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