第15話 おっさん、結婚する

「水の神アクエルの名の下に、ムニとアルマの結婚を許可する。誓いのキスを」


「アルマ、俺のどこが気に入ったんだ」

「サンドシャークにうちの代わりに飲まれた時、思ったんや。この人ならうちを守ってくれる。たとえ異世界におったとしてもや」


 俺はアルマの背に手を回しキスをした。

 仲間達の歓声が上がる。


「話しておかないといけない事がある。エリナとモニカも俺の嫁なんだ」


 異世界では三人の妻をめとっていた。

 エリナとモニカは残りの二人という訳だ。


「そないな事やと思っとったわ。二人ともうちと家族の儀をしとったさかい」


 家族の儀というのは義兄弟の盃みたいなものだ。

 アルマの世界ではこれをした人間同士は極悪人でも裏切らない。


「すまんな」

「ええよ。男は甲斐性や。稼ぎのある男は女がぎょうさん寄ってくるものや」


 異世界では一夫多妻が常識だったからな。


 サンドシャークの干し肉で宴会した。

 俺とアルマはカップラーメンの豚キムチ味だった。

 もっと豪華な物があると思うが、アルマがカップ麺を食いたがった為だ。

 異世界では俺が出してやらない限り食えないからな。


 そして、夜が来て、アルマと結ばれた。

 アルマのひんやりとした体を隅々まで味わった。

 よく考えたら、このアルマの体って、元は俺の体だよな。

 いや、考えまい。

 考えたら負けだ。


 夜が明けアルマを帰した。


助手アシスタント、来いエリナ」


 青い髪にきつい目つき、久しぶりに見たがエリナだな。

 エリナは2番目の妻で、少し皮肉屋だが、良い奴だ。


「あんた誰。私をさらってどうしようという訳。返答によっては、ただじゃおかないわ。水魔法が炸裂するわよ」

「出来るならな」

アロー。あれっ? 唾液を飛ばそうとしたのに飛ばない。何で?」

「混乱しているな。エリナはスキルで呼び出した。スキルは使えない。ステータスも使えないぞ」


「ステータス。えっ、嘘っ」

「な、使えないだろ。実は昨日、俺はアルマと結婚した」


「アルマの様子がここ数日おかしかったのは、きっとそのせいね。もしかして私も狙っているの」

「すまん、運命なんだ」


「私は認めないわ」

「まあ、仲良くいこう」


「何させる気?」

「とりあえずは通訳だな。立っているだけでいい」

「ちょっと無能扱いしないでよ。これでもムニ商会のナンバー2なんだから」


「名乗りが遅れたが俺はムニという」

「えっ、もしかしてアルマがあんたの名付け親」

「逆だ。俺の名前を商会につけた」

「そう言えば、商会の名前の由来を聞いた事がないわね」


「まあ、その経緯は置いといて、今日は頼む」

「仕方ないわね。今は召喚獣みたいだし、あんたに従ってあげる」


 エリナを従えてアズリの所へ行く。


「アルマさんではなくて違う人を連れているのね」

「紹介するよ。アズリ、こちらはエリナ。まあ何だ。妻候補」

「最低ね。エリナさんよろしく」

「誰が妻候補よ。絶対に認めないわ」


「紹介が済んだ所で、俺達はサラダサボテンの収穫に行ってくる」

「嫌な仕事だけどいいの」

「エリナがいれば百人力だよ」

「おだてても妻にはならないから」


 サボテン畑に行き収穫に入る。


「エリナ、有能な所を見せてくれ」

「このトゲトゲの植物に触れというの」

「その体は大丈夫なんだ。無敵なんだよ」

「スキルがない代わりなのね」


 エリナは疑いもせずにサボテンを素手でもぎ取っていく。

 もいだ葉のトゲをやはりエリナが素手で抜いていく。

 俺は処理が済んだサボテンの皮を剥き齧った。


 プルプルした食感で美味いな。

 味は少し甘いパイナップルのゼリーという感じだ。


「食べてないで、あんたも働きなさいよ」


 今、使える魔力は千ぐらいだな。

 対刃グローブは買えない。

 軍手は買えるが、軍手ではトゲは防げないだろう。

 ここは厚手のゴム手袋だな。


 ゴム手袋をしてサボテンの収穫に俺も加わった。


「ムニさん、良い物を使ってるな」


 討伐隊の仲間が来てそう言った。


「魔力をくれ。手袋出してやるから、手伝えよ」

「おう、痛くないなら余裕だぜ」


 俺達が痛がりもせずに収穫しているのを見た男達が収穫に加わる。

 段々と人数が増えていき、今朝食べる分の収穫は瞬く間に終わった。


「結局、私の優位って手袋に負けるのね」

「サボテンの詳細が知りたいと思ってみろよ」

「うわ、サボテンの事が分かる。どうなってるの」

「鑑定能力だよ。これがスキルが使えない代わりの本当のチートだ」


 エリナはとっても嬉しそうだ。

 エリナ攻略の鍵は褒める事だとみた。

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