第244話 おっさん、強奪する
レイスの連中と製造工場の人間を殺して回った。
レイスの殺し方は綺麗だ。
魔力を吸い取るのだ。
限界以上に魔力を吸い取られると眠ったように死ぬ。
「こっちの金庫の中に重要書類を見つけたぞ」
レイスの一人がそう告げた。
案内されて行くと立派な金庫がある。
ダイヤモンドカッターの刃で切り裂き、中身を取り出した。
ええと、聖杭の配備先の書類がある。
これを元に聖杭を強奪しまくって、レイスにすれば戦力アップ間違いなしだ。
「みなさん、お世話になりました」
カイルが名残惜しそうに、俺達へ別れの挨拶を述べた。
「元気でな」
「お元気で。出産祝いを後で送るわ」
「今度遊びに行くよ」
カイル達は廃村に向かったらしい。
レイスの一人が提案したのだ。
モンスターのせいで廃村になったらしいが、レイス達がいればほとんど無敵だ。
俺達は重要書類をイリスに届けた。
「なかなか面白い物を手に入れたわね」
「聖杭を強奪するべきだな」
「そうね、頼めるかしら」
「乗り掛かった舟だ。最後までやるよ」
イリスは案内人を二人付けてくれた。
一人は元貴族のセドリックで、都市のスペシャリストだ。
知らない街はないくらい都市部に精通している。
もう一人はリネットで、森や砦に精通している。
辺境のスペシャリストだ。
「さて、どこから手をつけよう」
「とりあえず近場からやってみたら」
ジャスミンがそう提案した。
「そうだな。近場からというと軍の聖杭保管庫だな。よし、セドリック頼むぞ」
「頼まれました。保管庫の周辺の建物は把握してます。秘密裏に入るなら、下水道からトンネルを掘るのが宜しいかと」
俺は下水道からトンネルを掘った。
掘る係が俺一人なのは理由がある。
臭いで気分が悪くなるそうだ。
詳しくは分からないが、たぶんガスも発生していると思う。
ヴァンパイヤは呼吸が必要ない分、こういう作業にうってつけだ。
保管庫の床に穴を開け建物の中に入る。
建物の中は暗くヴァンパイヤでなければ見えないところだ。
用心の為に灯りは点けない。
棚には聖杭がずらっと並んでいた。
俺は片っ端から背負い鞄に詰める。
書類に記されていた数よりあるようだ。
こりゃ、一度では無理だな。
俺は何回も往復して聖杭を運んだ。
やばいな。
巡回が来そうだ。
「急いで。銅鑼が鳴ったわ。侵入がばれたみたい」
「先に聖杭をジーナの村に届けてくれ。俺は最後の聖杭を確保してから向かう」
「気を付けて」
「ああ、分かっている」
俺は最後の聖杭を背負い鞄に詰めて下水道を出た。
下水道の出口は包囲されていた。
ふん、こんなのわけないぜ。
蹴散らして、ジャスミン達を追いかけた。
聖杭を起こす必要が無ければ事は簡単なのにな。
ちなみに、起こさないで魔力回路を解除するとどうなるか聞いてみた。
ジーナによればたぶん大爆発を起こすと。
意識があるから大量の魔力を完全に制御可能だと言っていた。
聖杭の魔力回路は魂を眠らせるのと、魔力を安定させるのが刻まれているらしい。
俺は門を出て、街道を少し進んだ所でジャスミン達に追いついた。
「臭い。ムニ、物凄い匂いよ」
その時、犬の鳴き声が近づいてくるのが分かった。
「しまった、臭いを追跡された」
俺はスプレーするタイプの脱臭剤を魔力通販で買うと体に掛けた。
これで騙せるかな。
「急ぐわよ」
「おう」
「うん」
「分かりました」
「はい」
追っ手との戦闘を覚悟しないといけないみたいだ。
とりあえずここは地形が悪い。
遮蔽物がないので、遠距離攻撃を防げない。
俺だけなら迎え撃てるが、後の四人は厳しいだろう。
いくらか距離を稼いでからの、森に入ってのゲリラ戦が望ましい。
俺とジャスミンとアニータはスクーターで、セドリックとリネットは馬で街道を飛ばした。
ヴァンパイヤの耳が、追いかけて来る蹄の音を聞き取った。
名馬と普通の馬では勝負にならないだろう。
俺はロープ使い道を遮断した。
こんな罠に掛からないよな。
ヴァンパイヤの耳はジャンプする馬の足音を聞き取った。
飛び越えたのか。
俺はジャスミン達を先に行かせ、追っ手を迎え撃つ事にした。
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