第243話 おっさん、ジーナを見つける
踏み込んで来た増援を、瞬く間に血祭りに上げた。
増援が途切れた所で見覚えのあるシルエットが現れた。
「また派手にやったわね」
ジャスミン達が現れた。
「序の口だよ。ダンジョンの時はもっと凄かった」
「うっぷ」
カイルが吐き気をこらえている。
外で待っておけばいいものを。
「まだ、ジーナの捜索はしてないが。それらしい人はいたか?」
「適当に覗いてみたけど居ないわ」
「カイルを護衛して、調べて回ってくれないか。俺は兵士達を処理する」
「ええ」
ジャスミンが答えたと同時に俺の腹に穴が開いた。
この感じは聖杭ミスランター。
「ほっほっほ。どうじゃ、わしの作った聖杭ミスランター改は」
老人が聖杭を構えて出て来た。
「みんな隠れてろ」
「しぶといの。腹に穴を開けられても動じないとは」
俺は聖杭を奪うべく踏み込んだ。
聖杭から七色のビームが飛んだのが見えた。
「ぐっ。またか俺のスピードについてこられるとは」
俺の頭の半分が吹き飛んだ。
「お前、人間じゃないな」
「ばれては仕方ない」
俺は血を飲んだ。
瞬く間に傷が元通りになった。
「ヴァンパイヤかのう。噂に聞く最上位種とやらか。相手にとって不足はないわい」
俺はコアを右足のくるぶしに移した。
そして、老人に撃たれるのも構わず踏み込んで聖杭を奪った。
「驚いた。体中に穴を開けられても平気だとは。研究したいのう」
「みんな出てきていいぞ」
俺は血を飲んで体の穴を塞いでから言った。
「ムニさん、ヴァンパイヤだったんですね。でも僕は敵対感情は持ちません。体中が穴だらけになっても守ってくれた」
「そうか。だが、ヴァンパイヤはモンスターだ。忘れるな」
「ええ。こ、これは。ジーナの声が聞こえる」
カイルがとんでもない事を言い出した。
俺は何にも聞こえないんだが。
「どこから聞こえる?」
「あなたの手の辺りから」
手に持っているのは聖杭ミスランター改だ。
これがジーナなのか。
「おいじじい。オレンジ色の髪の女性から聖杭ミスランター改を作ったのか」
「そうじゃ、聖杭は人間を魔力タンクに変える技術じゃ」
「なんて外道な事を」
ジャスミンがそう口を挟んだ。
こんな状態でも生きているのか。
そう言えば聖杭ってどんな状態だ。
魔力の流れが分かる魔力回路の上に聖杭を置いた。
なるほど、魔力回路が幾つも刻んである。
これを解除したらどうなるかな。
爆発する可能性が高い。
だが、人間に戻る可能性もある。
実験の前に。
俺は老人を殺すべく手刀を構えた。
「何をするんじゃ。聖杭ミスランター改のすばらしさが分からんのか。一撃必殺の聖杭を何度でも使えるようにしたのじゃぞ。遠距離攻撃も出来るし、照準も自動じゃ」
「死んどけ」
老人を血祭りに上げた。
「魔力回路を解除したら、ジーナさんが人間に戻るかもしれない。爆発する可能性もある。どうする?」
「やって下さい。ジーナもそう言ってます」
「よし、この場から離れろ」
「僕は残ります。ジーナと死ねるなら本望です」
「そうか。決めたなら何も言わない」
カイルと二人で聖杭を前にする。
「やるぞ」
「覚悟はできてます」
俺は聖杭の魔力回路を解除した。
まばゆい光が出て、一瞬見えなくなって。
目が見えた時にはオレンジの髪の半透明な女性が浮かんでいた。
これはどういう状態だ。
「ジーナ、こんなになっちゃって」
「カイル、心配しないで。これでも生きているの」
コアがジーナの中にあるのが見えた。
そうか、聖杭ってのはゴーストの一種か。
ゴーストの最上位種辺りだな。
レイスとでも呼ぼうか。
「二人はこれからどうするんだ?」
「ジーナと二人いつまでも暮らします」
「聖杭を解放したいわ」
「解放できるんだな」
「ええ、通常の聖杭は眠っているけど私なら起こせる。そんな気がするの」
「確かか」
「私は聖杭にされてから意識が起きていたけど、これは改良に失敗したせいだと思うわ。他の聖杭に話し掛けたけど、その時も反応はあったのよ。完全に起きなかったのは、パワーが自由に使えなかったからだと思うわ」
「よし、やってみてくれ」
俺は兵士から奪った聖杭を並べた。
ジーナが半透明の手で触れた。
「起きたわ」
「よし、解放しよう」
聖杭は全てがレイスになった。
「カイル、試したい事があるの」
「何だいジーナ」
「魔力が少し欲しいわ?」
「いいよ、持っていっても」
カイルとジーナが抱き合うと、ジーナのコアが分かれて、赤ん坊のレイスを作り出した。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
おいおい、魔力から同族を作り出したってのか。
他のレイスが祝福の声を上げる。
「ジーナと子供が持てるなんて。大変だ。この子供は何を食べるんだろう」
「あなた、魔力を与えればいいわ。魔力はモンスターから吸い取りましょう」
レイスの能力が少し分かった。
人間がこの種族に取って代わられる日も遠くないかもな。
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