第242話 おっさん、大暴れする
製造工場までは皇都から馬で一日の距離だった。
案外、近い所にあるのだな。
遠くから双眼鏡で観察する。
分かってはいたが、厳重な警備だ。
「俺一人で侵入してみる」
「それしかないかもね」
「気をつけて」
「必ずジーナを見つけて下さい」
「吉報を待ってろ」
俺は少し離れた場所で全裸になり、複数のコウモリに化けた。
俺が化けたコウモリの群れは、製造工場の壁を乗り越え中に入った。
合体して人間の姿に戻る。
さて、兵士の装備を探すとしますか。
たぶんこの平屋は宿舎だな。
見張りも立っていないし、入ってみるか。
ビンゴ。
やはり宿舎だった。
ロッカールームを漁り、兵士の装備を身に着けた。
工員の制服も見つけたので頂いておく。
重要施設だと思われる建物の入口が見える所にやってきた。
歩哨に立っていると思わせて観察する。
重要施設に入ろうとしている兵士がいる。
聞き耳を立てた。
「所属と階級と名前を言え」
「北方軍第11師団所属、兵士長のジャックであります」
魔道具を操作して何やら見ている。
「通ってよし」
「ご苦労様であります」
所属と名前か。
適当な名前では駄目みたいだな。
しょうがない、通気口から侵入するか。
霧に変身して通気口に入る。
段々と食べ物の匂いがしてきた。
これは食堂に通じているのかな。
それだと、密かに侵入できない。
ええい、ままよ。
光が見えて来た。
出口で止まる。
「おい、鍋が噴いてるぞ」
「すいません」
「いつもの二丁上がり」
どうやら厨房のようだ。
重要施設に厨房とはおかしいな。
有り得ないかと言われれば、そんな事もあるかもと言わざるを得ないが。
とにかく侵入だ。
アイテムボックスから世界一臭い缶詰の中身をぶちまけた。
怒号と臭いという声が聞こえる。
俺は通気口から少し出て中を覗いた。
しめしめ、みんな出て行ったみたいだ。
俺は人間形態になり工員の制服を身に着ける。
そして、厨房から出た。
「異臭が物凄いんです」
「何か食い物を放置したんだろう。今から調べるちょっと待て」
厨房の外ではコックと兵士が話をしていた。
俺の侵入がばれるのも時間の問題だな。
ジーナはオレンジの髪に緑の目だ。
該当者を探すとするか。
料理を運ぶワゴンが幾つも置かれていた。
俺はその一つを押す事にした。
「ぼやぼや、するな。料理はあっちだ」
コックの一人が俺に言った。
偉そうに殺すか。
指差された方向には扉がある。
あの先が食堂かな。
食堂には用がないが、ワゴンを押していかないとコックが不審に思うだろう。
今もさぼったら承知しないという目で睨んでいる。
食堂で皆殺しにしたら気が晴れるだろう。
俺はワゴンを押して扉の先に入った。
扉の先は食堂では無かった。
モンスターが魔力回路の上で鎖に縛られていて、魔力回路は虹色の液体を作っていた。
ワゴンで運ばれた料理がモンスターの口に強引に入れられてた。
人間が台に固定され、口を閉じる事が出来ないようにされて、虹色の液体を流し込まれている。
何だこれは。
モンスターの下の魔力回路は生贄の物とよく似ている。
たぶんだが、魔力を抽出して液体にする物だろう。
それを人間に与えるとどうなるんだ。
ろくな事にならない気がする。
「
ダイヤモンドカッターの刃で鎖を切る。
モンスターが自由になり、暴れ始めた。
「何をする」
「見て分からないか。このけったくそ悪い施設を壊すんだよ」
「聖杭をありったけ持ってこい。モンスターを仕留めるぞ」
やっぱり、聖杭ミスランターを使うのだな。
今のうちに。
俺は台に固定された男を自由にしてやった。
「喋れるか」
「苦しい。体中が火で焙られているいるようだ。殺してくれ」
「待ってろ。たぶん、体に入った魔力のせいだ」
「
魔力は吸い取られない。
魔力がもう男の物になっているらしい。
男は体をかきむしると舌を噛んだ。
助けられなかった。
せめてその魔力は俺が復讐に使ってやる。
「
高密度の魔力が俺に入ってくる。
俺は魔力を衝撃波に変えて四方に放ち始めた。
風通しが良くなり、俺は少し落ち着いた。
兵士が慌ただしく入ってくる。
手には聖杭ミスランターを持っていた。
ヴァンパイヤのスピードで聖杭ミスランターを奪い取る。
アイテムボックスに容れようとしたが、入らない。
何だ。
まあ良いか。
アイテムボックスから背負い鞄を出してその中に容れる。
「敵は魔導で加速を使ってます! 手練れです! 増援を!」
増援か良いぞもっと来い。
皆殺しだ。
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