第199話 おっさん、議会を襲撃する

「ムニ、貴様を死刑に処す」


 議会に呼ばれた俺はそう宣告された。

 まあ、こうなる事は分かっていたさ。

 むしろ遅すぎたぐらいだ。

 理由なんざ腐るほどある。

 ここで大暴れしたら、俺の罪は増して、逃げても賞金首になるんだろうな。

 フレッドの奴はここにはいないし、ダイヤモンド魔導士も大幅に増員されている。

 俺は大人しく牢に繋がれた。


「ムニさん」

「ウェンじゃないか」


 鉄魔導士のウェンが俺を訪ねてきた。


「遅くなった。助けに来たぜ」

「展開が読めない。状況を説明してくれ」


「フレッドはあんたを罪に落とそうと今まで画策した。だが、他の魔導士会が反対していたんで出来なかった」

「そんな事があったのか」

「宝石魔導士会はあんたと仲がいいので話をもっては来なかったが。金属魔導士と万物魔導士には裏で色々と工作してた」

「それが、今日になって身を結んだという訳か」

「そうだな。で、どうする。逃げるか」


「そうだな。ここにいても事態は進展しない。だが、見張りのダイヤモンド魔導士はどうやる」

「鼻薬を嗅がせたから、心配いらない」

「ほう、ダイヤモンド魔導士会も一枚岩じゃないのか」


「そうだな。知っているか。ダイヤモンドは今産出されてない」

「俺が鉱山を潰したからな」

「そっちもだが、古い鉱山の鉱脈が枯渇した。それで動揺が広がっている」


「なるほどな」

「だから、ダイヤモンド鉱山が奴らのウィークポイントだ。よその街からもダイヤモンド魔導士が多数集められている。ダイヤモンド鉱山を稼働させるための人員だ」

「ちくしょう、もっと徹底的に破壊しとけば良かったぜ。さっさと牢を出るか」


 どうやって牢破りをするのかと思ったら普通に鍵で開けた。

 用意の良い事だ。


 見張りの横を何食わぬ顔で通り過ぎる。

 本当に買収されているんだな。


「世話になった。でも良かったのか」

「命を助けてもらっているしな。気にする事はない」


「これ以上迷惑はかけられない。俺はスキル原理主義者の下に身を寄せる」

「そうか。反撃する時は声を掛けてくれ。力になろう」

「ああ、その時はよろしく頼む」


 光学迷彩を発動して、空き家に移動。

 扉にスキル原理主義者との繋ぎを取る為の印を貼った。


 待つ事12時間。

 使いの者が来て、俺は酒場の地下に案内された。


「救世主様、お待ちしておりました」

「お前ら、ダイヤモンド鉱山に襲撃を掛けるぞ」

「お任せを」


 ダンジョンコアを斬撃スキルに変えて、スキル持ちを増員。

 襲撃の準備は整った。


 俺は襲撃とは別行動をとる事にした。

 フレッドとダイヤモンド魔導士の議員をなんとかしないと。


 金属魔導士会に行ってウェンと会い、襲撃する事を告げた。

 脱獄は知られているだろうから、襲撃は予想されていると思う。


「みんな、今から武器を配る。使ってくれ」


 俺は異世界ベティナ産の自動小銃を配った。

 銃は強いが土壁を貫通するほどじゃない。

 初めの一撃が勝負を分ける。


 相手が魔導を行使する前に銃弾を浴びせるのだ。

 100人程で議事堂の向かって行軍する。

 途中でてきた邪魔者は自動小銃の練習がてら、片付けた。


 議事堂の扉を分解スキルで分解し中に入る。

 俺達は自動小銃を撃ちまくった。

 俺達の味方の議員には今日は出席しないように手回してある。

 護衛の数は200人を超えてたと思う。

 しかし、自動小銃の奇襲にはなすすべが無かった。


 フレッドはどこだ。

 見るとフレッドは護衛に押し倒されて庇われていた。

 運のいい奴め。


属性魔導アトリビュートマジック、加速」


 フレッドが魔導を発動。

 むっ、逃げるつもりか。

 逃がさん。

 しかし、護衛に邪魔されて取り逃がしてしまった。


 行先をつきとめないと。

 自白ポーションを護衛に飲ませ、尋問を開始した。


「フレッドはどこに行った」

「新しいダイヤモンド鉱山だ」


 ちくしょう、そっちか。

 ダイヤモンド鉱山の襲撃に行けばよかった。

 だが、あっちはスキル原理主義者が上手くやっているはずだ。

 フレッドはもはや袋の鼠だろう。


 金属魔導士達に別れを告げて、ダイヤモンド鉱山に向かってスクーターでひた走る。

 フレッドとスキル原理主義者は馬車を使ったはずだから、街道で挟み撃ちできるはずだ。

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