第191話 おっさん、子供達を養子に出す

「お前達、村まで貰い手を探しに行くぞ」

「はーい」


 元気な返事が返ってきた。


 さてと、バスが使えればいいが、あいにく魔力通販は手に取った物しか買えない。

 バスを買おうとした事はなかった。


 しょうがないので、村まで走らせる事にした。

 俺だけがバイクだとなんか悪い気がしたので、俺も付き合って走ろう。

 レベルが270を超えているので、耐久力には自信がある。

 それは問題ないのだが。


「おい、立ち止まるな」

「だって、綺麗な蝶々が」


 子供達が好奇心を覚えてしまって、途中に珍しい物があると足が止まる。

 今まで殺しの訓練だけだったから、見慣れない物があると楽しいのだろう。

 野外訓練とかなかったのかな。


「そんなもの、野外訓練の時に死ぬほど見ただろう」

「あの時は生きるか死ぬかだったから、そんな余裕は無かったの」

「お前ら、はぐれた奴は置いていくぞ」

「いい、後から追いつくから」


 そんなこんなで村に着いて、着いた時には人数が10人ほどになっていた。

 迷子になって野垂れ死んでも俺は知らん。

 抑圧されていた物がなくなって自由になったのだから、分からなくもない。


 農村は麦畑と野菜が植えてある畑があり、それと牛とヤギと豚が飼育されていた。

 10人ほどの子供を引き連れている俺は奇異の目で見られた。

 全員いなくて良かったのかも知れない。


「よう、モーガス。元気にやってたか」

「ええ、スラムと比べれば農村の暮らしは天国ですね。上手い飯。気の良い隣人。あげたら、きりがない」

「それでこの子供達なんだが、養子の先を探している」

「10歳を超えてますから、子供のいない所では喜ばれるでしょう」

「あまり働かせるのは気が進まないが」


「農村では過労死なんて物はありません。死ぬとしたら何らかの要因で飢餓が起こってでしょうね。その時はみんな死にます。村全体が家族ですから」

「そうか、村全体で子供達の様子を見てくれるのだな」

「ええ、そこが、うっとうしいと同時に良い所でもあります」


 子供達を引き渡して、俺は残りの子供達を村の外れで待っていた。

 おかしい後続がこない。

 何かあったのか。


 その時子供達を引き連れた大人が二人やってくるのが見えた。

 親切な人が送ってくれたのだろうか。

 突然大人の一人から3メートルの火球が放たれた。


「ならず者の来襲だ。鐘を鳴らせ」


 村の外れでモンスターの警戒に当たっていた気体魔導士の一人が声を上げた。

 火球は俺に着弾。

 服を焦がした。


 火球の大きさから、相手はダイヤモンド魔導士だと思う。

 魔力壁があるから、火傷は負わないと思っていたから、無理して避けなかった。

 気体魔導士達が風船を持って現れる。



「ごめんなさい。この人達を案内するしかなかったんです」


 子供の一人が駆け寄って来て謝罪する。

 呪いが掛かっているから道を聞かれたら答えない訳にはいかない。


「いいんだ。危なくない所へ逃げていろ」


 流石に元暗殺者の卵、戦闘の邪魔にならないように秩序だった動きで避難した。


「火球放て」


 気体魔導士達が10センチほどの火の玉を放つ。

 敵の魔導士は土壁を出して防いだ。


 いい機会だ。

 気体魔導士がどれぐらいやれるのか見させてもらおう。

 もう一人の敵は、腰の剣を抜いてこちらに駆けよって来る。

 こいつは普通の剣士か。


「石つぶて連射」


 気体魔導士達は石のつぶてを剣士に魔導で叩きつけた。

 剣士はかわす動きを見せたが、10人以上いる気体魔導士の連射で昏倒した。

 その間、魔導士は火球を土壁を越えて撃った。

 火球は放物線を描いて気体魔導士に迫る。


「不味い逃げろ」


 おいおい、火球の防御を考えてなかったのか。

 まあ、ゴブリン相手だと火球は撃ってこないからな。

 仕方ない。


属性魔導アトリビュートマジック、炭よ酸素と結合し二酸化炭素の屋根になれ」


 炭をアイテムボックスから出して二酸化炭素で屋根を作った。

 逃げ惑う気体魔導士の上に火球が差し掛かりふっと消えた。


「何をぼやぼやしてる反撃しろ」

「みんな、石つぶてを発射」


 放物線を描いて石つぶてが相手の魔導士目掛けて落ちていく。

 短い悲鳴があって、敵の魔導士の反撃が止まった。


「どうです。気体魔導士は」


 そう尋ねるモーガス。


「60点だな。後で二酸化炭素の技を教えるよ」

「ゴブリン相手だと無双出来ていたんですが、魔導士相手はやっぱり厳しいですね」

「搦め手を使えよ。毒とか罠とか色々とあるだろう」

「ええ、考えてみます」


 気体魔導士も集まれば戦力になると分かった。

 彼らをあてには出来ないが無視も出来ない。

 仲間に入れてやらないと、革命は総意で行くのが望ましい。

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