第36話 Side:エイシス 暗礁

「情報に間違いはないんだな?」

「ああ、俺が聞いたところ間違いない」


 僕は念を押し、シーマスが自信たっぷりに答えた。

 シーマスの話では羽ペンが高騰しているらしい。


「高級羽ペンの材料、グリフォンを討伐するよ」


「よし、リーダーやろう。小型バリスタの手配は任せて。誘導の矢はかなり高いけど大丈夫?」

「実家の伝手で借金したから、平気さ」


 ビジの問いに若干の不安を隠しながら僕は答えた。


「では俺は引き続き情報を集めるぜ」


 シーマスはそう言うと出て行った。


「食料と野営道具は任せろ。リーダー」


 ディドルが手伝いを買って出た。


「収納は任せて下さい」


 イシュトンは頼りになる。攻撃が出来なかったおっさんと比べて、射手がいるのは心強い。


  ◆◆◆


 遠征の準備は着々と進み、グリフォンの居る森へと僕達は出発した。


「リーダー、あそこにグリフォンが飛んでいるぜ」


 シーマスが報告する。


「よし、イシュトンは小型バリスタを設置して、誘導の矢を射撃。ディドルは襲って来た時に防御。ビジはグリフォンが落ちたら拘束の魔法。魔法で拘束したら、三人で切り掛かる。そういう作戦でいくよ」




 イシュトンが小型バリスタから矢を放ち、誘導された矢は翼を見事貫いた。


拘束バインド

「今だ。集中攻撃。斬撃スラッシュ

「おら、くたばりやがれ」

盾撃シールドバッシュ


 攻撃は効いている。

 拘束の魔法により、グリフォンは身動きのとれない状態だ。


「不味い拘束が解かれる」


 拘束が解かれて片羽でグリフォンは僕に襲い掛かった。

 そこへイシュトンのバリスタの矢がもう一方の羽に突き刺さった。

 見事な援護だ。

 助かったよ。


「とどめだ。身体強化フィジカルブースト斬撃スラッシュ


 身体強化された斬撃はグリフォンを深く切り裂いた。

 バリスタの矢が頭に突き刺さる。

 あまり苦戦はしなかったな。

 準備が整っていれば、こんなにも容易い。

 イシュトンをパーティに入れて正解だ。

 グリフォンを収納してもらい、僕達は意気揚々と引き上げた。


  ◆◆◆


「不味いぞ、リーダー。羽ペンが売れない」


 羽の素材の交渉を任せていたシーマスが飛び込んで来るなり言い放った。


「なんだって!? 今回の討伐で借金がかなり減る予定なのに何でそんな事に」


 僕は驚きの声を上げた。


「何でもポールペンとかいう物が売られていて、羽ペンはもう時代遅れだと」


 不味い事になった。借金が更に増える。もう実家の伝手は使えないだろう。

 借金奴隷落ちの可能性もちらつく。

 誰だボールペンを売り出した人間は。

 ボールペンの情報を探るようシーマスに言った。



 しばらくして、シーマスが帰って来た。


「分かったぜ。ムニ商会が元凶だと」

「ムニどこかで聞いた名前だ」

「俺も聞いた時から、出てこないんだよ。小骨が刺さったみたいだ」


「リーダー、おっさんの名前」


 ディドルが答えをくれた。


「そうだ、確かにおっさんの名前だね。くそうあの時殺しておけば」

「リーダー、落ち着きが大切。今後どうするかが大事」


「そうさ、これから巻き返す為には高額な仕事を率先してこなそう」


「ギャンブルみたいな仕事は良くないと思うけど」


 ビジはそう言うけど絶対に奴隷は嫌だ。


「私は新参者なので皆の意見に従います。気になったのですが、ムニさんという方は何をされたのですか?」


 イシュトンがそう言った。


「ポーターをしてたんだが、長年雇ってやった恩を忘れやがった。魔石や貴重なドロップ品を盗んで逃げたんだぜ」


 僕がどう答えようか迷っているうちにシーマスが代わりに答えてくれた。


「それは許せませんな。ポーターの風上にも置けない男ですな。なぜ、訴えないので?」


「それがあの男の巧妙な手口にだまされた。てっきり死んだと思っていたぜ。そしたら、Sランクだからちょっとな」


 シーマスは熱弁をふるう。


「そうさ、Sランクになれたのだってドロップ品を使ったのに決まってる。何かイカサマをやったに違いない。僕達はイカサマを使わず、正々堂々とやっていく。だから、仕事は大丈夫だ。絶対上手くいく」


 僕は話を締めくくった。


 あのおっさんは僕にどれだけ祟るのだろう。

 つくづく気に入らない。

 絶対に後で葬ってやる。

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