第27話 おっさん、娘さんを下さいと挨拶をする

「おはよう、アルマ」

「恥ずかしい見んといて」


 微妙な空気の中、着替え、食堂に行って遅い朝飯を摂る。




 俺達を見つけた姉妹がにまにましながら、話し掛けて来た。


「昨晩は凄かったわね」

「嬌声」

「まあ、そのなんだ。そんな訳だ」


「私達も今夜やるわよ」

「えっそれは」

「死ぬ時は一緒なんだから覚悟を決めなさいよ」


 俺は人殺しだしこの際日本なら犯罪行為になる事項も目を瞑ろう。


「分かった」


 ああ、俺は堅気にはもう戻れないんだな今はっきりと分かる。


 その夜、姉妹としてしまった。




「今日はエリナとモニカのお母さんに挨拶に行くぞ」

「そんな事しなくても」

「挨拶不要」


「俺がけじめをつけたいんだ」


  ◆◆◆


 渋々姉妹は俺をスラムのあばら家に案内する。


「「ただいま」」


 二人が声を掛け先導して入る。


「おじゃまします」


 俺は挨拶して入った。


「お帰り。あら、いらっしゃい」


 中には中年の女性がいて二人を迎え入れた。


「初めまして、ムニです」

「クレアよ」


 クレアさんは俺と年がそんなに違わない感じで、やっぱり手入れされてない髪で継ぎ接ぎの服を着ている。

 今度シャンプーとリンスと服をエリナに持っていかせよう。

 姉妹二人と共通な特徴があり親子だと認識できた。

 病み上がりだとは思えない顔つきだ。

 二人が仕送りしているから、食事も充分摂れているのだろう。




「突然ですが、娘さんを俺に任せて下さい」


 俺は緊張しながらうわずった声で言った。


「良いわよ。心配したけど、綺麗になって幸せそうだし、あなたに任せるわ。ついこの間までおねしょしていた二人がね」


 クレアさんはにっこり微笑み。


「「お母さん!」」


 二人は少し慌てた。


「俺はもう行くよ。二人共お母さんと色々話すと良い。なんなら今日はここに泊まっても良い」

「ありがとう、そうさせてもらうわ」

「感謝」




 俺は二人と別れ宿に帰り、アルマの部屋をノックして中に入った。


「アルマのお父さんにも挨拶したいんだが」

「あんな奴、気にする事はあらへん」


「お父さんと何かあったのか?」

「借金を作って押し付けて逃げたちゅうわけや」


「そうか、他に親類は居ないのか?」

「借金の肩代わりの保証人になってくれた伯父さんが居る」


「じゃあ、後で挨拶に行かないとな。約束だ」

「はい」


  ◆◆◆


 俺は少し気になって絶倫の事を冒険者ギルドに調べに行った。

 資料室で受付の女の子を前に考える。

 どう言おう。


「あー、レベルアップの副作用の資料がみたい」

「どんな事です」

「うーん、困ったな。あれ、なんだよ。あれが凄くなった」

「あれじゃ分かりません」

「あれで分からんか。ごにょごにょの事だ」

「もっとはっきりおっしゃって下さい」


「とにかく副作用というか、レベルアップの恩恵の資料だ」

「分かりました。お待ちください」


 文献を見たら、絶倫はレベルアップの副作用のようだ。

 寿命も延びるらしい。

 伝説ではレベル300の仙人が三百年ほど生きたと書いてあった。


 ついでに次の封印ダンジョンの情報も得る。

 次に目を付けたダンジョンはトラップ・ダンジョンだ。


 トラップ・ダンジョンは特殊なダンジョンだ。

 モンスターが一匹も出てこない。

 資料では1階のボス部屋にたどり着いた者は誰も無く。

 何階層あるのか不明だ。


 俺達もそろそろ、罠対策を考える時期にきている。

 練習ついでにあわよくば攻略してしまおうという訳だ。


 それと、一億円分の商材をアルマが雇っている人の所に行って売る手はずを整える。

 商会に売り捌けと言ったら、安くなりますがよろしいのでと言われたので許可を出しておいた。

 腕時計は順調に売れているから、問題ない。

 双眼鏡より切子グラスがよく売れているみたい。

 倉庫を借りて在庫をどっさり入れる。


 かさばるが羽毛布団もサンプルとして幾つか置いていく。


  ◆◆◆


 次の日。


「遅くなったがボーナスを出す。一人金貨100枚だ」

「これで商業ギルドの借金が大分返せます。伯父に迷惑を掛けんと済みそうやで」


「二人はどうする?奴隷から解放出来るが」

「まだ、このままで。その時は三人一緒で」

「現状維持」


「分かった。それで次の封印ダンジョンの攻略に掛かるぞ」

「「「はい」」」


 トラップ・ダンジョンは何人もの斥候や罠破りや鍵開け名人が命を落としている。

 油断できない。出来るだけの想定をして準備しなくては。

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