第11話 おっさん、スーパーボールを売る
「おもちゃ売りのおっちゃんだよ」
「早く早く」
「二列に並んで、並んで」
子供達が並んで、俺とアルマは商売を始めた。
「おっちゃん、スーパーボール3個」
「はい、銅貨3枚ね」
「お姉さん、ビー玉5個」
「おおきに」
俺は玩具の種類を増やした。
ビー玉と同じぐらい安い商材を見つけたのだ。
スーパーボールだ。
5百個で魔力3280。
ビー玉の6百個で魔力2080には負けるが、かなり良い線いっている。
どれも一個で銅貨1枚だ。
1セット売ると銀貨5枚になり、一日の宿代が出る。
「お前ら、誰に断わって商売している」
厳つい顔の男が因縁をつけてきた。
「スラムの顔役のケイムだが」
「ちっ、そんななりしてスラムの出か」
「おう、そうだ」
「ちっ、協定がなけりぁなぁ」
「お近づきのしるしにこれをどうぞ」
俺はビー玉6百個を渡した。
「おう、すまねえ」
「話は通してあるとは言え、立場って物があるんじゃねぇか。ここで商売をする時はそのガラス玉を毎回やるよ」
「かたじけねぇ」
相手の顔を立てれば摩擦は起きない。
いらん騒動を起こすと追っ手に感づかれるからな。
さあ、商売は終わりだ。
ダンジョンに繰り出すぞ。
ダンジョンの攻略は現在三階にまで及んでいた。
今日はボス戦だ。
◆◆◆
ボス部屋の扉を開けて中に入ると、鎧を着て大剣を持ったスケルトンが現れた。
「アルマ、気をつけろ」
「はいな」
俺はじりじりと間合いをつめて相手の出方を見る事にした。
間合いに入ったのだろうスケルトンが剣を振り下ろす。
ふっ、甘いな。
俺はメイスで剣を弾き飛ばした。
こうなればこっちの物。
頭蓋骨を粉々に砕いて、手足を砕く。
アルマが駆け寄り紫外線ライトで骨を溶かしていく。
ほどなくして、魔石と火付け魔道具が現れた。
魔石が大分溜まったので思い切って結合魔石を作る事にする。
ドロップ品もかなり溜まったが冒険者じゃないので今は売れない。
宝箱も見つけたが開ける技能を持った仲間はいないから無視した。
◆◆◆
「ケイム、居るかい!」
俺は大声を出しケイムの家に入った。
「奥にいるぞ!」
相変わらずのだみ声で返事があった。
俺達は奥の部屋に入り椅子に座る。
「今日は頼み事があってきた」
「そっちの嬢ちゃんは初めてだな。借金奴隷か」
「初めまして、アルマや。借金奴隷やで」
アルマは幾分、緊張しているようだ。
「訛りからみて西部の人間だな。そんなに表情を強張らせなくても。ここらの人間は逃亡奴隷と友達の奴もいる。だから偏見は殆んどない安心しろ」
ケイムの顔が怖いんだよと言おうと思ったが止めた。
「それで頼み事なんだが、結合魔石を作って欲しい」
俺は話を切り出した。
「市場に流すと冒険者ギルドがうるさいぞ」
「自分で使う。材料の魔石も用意した」
「うーん、まあいいだろう」
ケイムは渋々頷いた。
「報酬はこないだくれた紙あるだろ。あれを沢山くれ」
ケイムは少し考え要求を口に出した。
「何に使うんだ?」
「発禁本を作る。禁断の恋の物語とか。王家の秘密とか色々だ」
「ちょっと席を外してくれ。事情は聞かないでくれると嬉しい」
ケイムが出て行ったのを見て魔力通販でコピー用紙を一万枚出す。
しばらくして、ケイムが帰ってきて紙を見て言った。
「おう、十分だ。魔石も出してくれ」
「
テーブルの上に魔石の山が出来る。
「子供達相手に商売してるんだってな」
「ああ、してる」
「スーパーボールって言ったかあれの製法が知りたい」
しまった。
うろ覚えだが、ゴムは戦略物資だった。
まずった。
そういえば異世界でゴムを見た事がない。
現代技術でしか作れない物を売らないはずだった。
うかつだったな。
「あれはもう売らない。材料が尽きた。俺が作った訳じゃないが、製法は木の樹液に硫黄を混ぜるんだったかな」
「その木の種類は」
「南の国だとしか分からん」
「そうか残念だな。結合魔石が出来上がったら宿に言伝しておく」
「おう、よろしく。アルマ、行こう」
◆◆◆
俺達はそれから、子供達に商売して、アンデッドを討伐して、宿に帰るという代わり映えのしない生活を繰り返していた。
ある日宿に帰ると言伝が来ていた。
これで魔石の上乗せが使えて、通販の限度額が上がるな。
魔力の充填もダンジョンコア以外でアイデアが一つある。
わくわくしながら俺達はスラムに向かった。
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