第10話 おっさん、農薬を試す
次の日。
「今日はじょうろの農薬をアンデッドに掛けてくれ」
ダンジョンの前で俺はアルマに話し掛けた。
「任せといて」
薄暗い通路を歩いて、小部屋の扉を開け中に入る。
一段と腐臭が強まりゾンビが現れた。
俺がゾンビの手足を砕くとアルマがじょうろで農薬を掛ける。
ゾンビは濡れただけで手足を直そうともがいている。
「駄目そうだな、ここにあるのを順番に試してくれ」
俺は別の農薬が入ったじょうろをアイテムボックスから出し並べ言った。
「はいな」
アルマはじょうろを交換し農薬を掛ける。
ゾンビがオーオーうるさいが、観察していると、ある農薬でゾンビが溶けた。
「やったで!」
魔石になったゾンビを見てアルマは嬉しそうに言った。
「よし、次だ」
「こら前のより溶ける速度が遅いような」
「そうだな、次だ」
「これはあかん」
結果、何種類かの農薬で効果が確認された。
聖水の正体って殺菌剤なのか。
でも、現時点で農薬は利点がないんだよな。
紫外線ライトでも遠くに届くしな。
それに、農薬を広範囲に散布するにはエンジンつきの機械がいる。
結合魔石をどうにかしてから考えよう。
明日からは紫外線ライトで良いな。
危険を冒さない程度でダンジョンも攻略しよう。
◆◆◆
困った事がある。
宿代がもうない。
ドロップ品はかなりあるんだが、冒険者ギルドは敵に回したくない。
安い物で換金しても良い物。
他の人間に目をつけられ難い物。
ビー玉だな。
魔力通販でビー玉を出す。
それをアルマと二人、一時間ほど子供に売り歩く。
子供達にブームとなったらしくて、笛を吹くと自然と集まってくるようになった。
この仕事をこなしてからダンジョンに繰り出すのが日課となった。
そして、30日ほどダンジョンでアンデッドを狩ったある日。
「今の残り魔力はどれぐらいだったかな。ステータス」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV104
魔力:9875/10400
スキル:
収納箱
魔力通販
――――――――――――――
あれ、俺のレベルは103だったはずだ。
なんども見るが104だ。
「アルマ、今日はお祝いだ」
「どないしたん」
「モンスターを倒してレベルが上がったんだ」
「普通の事ちゃいますの」
「いや、俺は特異体質でレベルが上がらないと思っていた」
「ほな、お祝いやな」
でもおかしい。
100以上のレベルだと30日ザコを狩ってもレベルが上がるはずが無い。
どうなっているんだ。
スライムの経験値を1とすると、ダンジョンを討伐するレベルアップ経験値は言われている所では五千万だ。
この時普通の人は10レベルぐらい上がるのだから、1レベルあたりの必要経験値は五百万。
俺はダンジョン討伐して100レベル上がったから、1レベル上がるのに必要な経験値は五十万。
俺の必要経験値が明らかにおかしい。
ゲームなんかだと経験値テーブルは累乗だと際限なく大きくなっていくから、頭打ちする曲線を描くと聞いた。
もしかして俺の経験値は最初から頭打ちなのか。
経験値五十万で固定されているのか。
最初はつらいがレベルが上がれば上がるほど有利になるチートだろう。
アイテムボックスの容量も俺のは大きいし、魔力通販もチートだ。
俺を哀れんで神様がつけてくれたのかもしれない。
◆◆◆
「おっちゃん、酒バンバン持ってきて」
「えらく景気がいいじゃないか」
「レベルアップしたお祝いだよ」
「おう、レベルは上にいくほど上がりづらい。高レベルなのか」
「まあ、それなりにはな。では、俺のレベルアップを祝して乾杯」
「かんぱーい。ご主人様、うちもレベル8になりました」
「あれ、あんまり上がってないな」
「そりゃそうですわ。貴族がモンスターにとどめを刺すちゅうのがありますけど。ほとんど経験値がはいりません。役割が大事やって事や」
「そうだよな。とどめだけ刺して経験値入るのだったら、幼児でもSランクになれる」
「その通りや」
「さあ、食え食え」
「最近めっちゃお腹すくねんけど、太ったやろか」
はたから見ると取り様によっては危ない会話じゃないか。
俺達を見る男達の目が羨ましそうだ。
ないからな、そういう事実はない。
「後で体重計を用意してやるよ」
「それはちょっと勘弁や。太とったら、ショックや」
「体調管理は重要だぞ」
「せやな」
アルマの顔を見る限り太った感じはないな。
逆に細くなったようだ。
気のせいかな。
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