金級認定とパートナー登録

 まっすぐに進んだケントだったが、なかなかハンター組合らしきものは見つからない。


「あれじゃないですか。赤い建物だし、ハンター組合って看板出ているし」


 そこに左横からシロが口を出し、右斜め前の建物を指さす。


「本当だ。大したものだよ、シロは」


 ケントが感心すると、


「えへへ。お役に立てて何よりです」


 シロはうれしそうに笑う。

 建物に入ると彼らに視線がいっせいに集まった。


「見たことがない上等そうな装備に、女の子連れ……あれがホワイトライダーか?」


「たぶんそうだろう」


 敵意はないかわり、たっぷりの好奇心が感じられる。


「みんな見てますね」


「まあだいたいお前のせいかな」


 とケントは他人事のように言う。


 自分がやったことを自覚していないわけではない。


おそらくワームの群れを大量に片づけた出来事はまだ広まっていないだろうから、原因はシロにあると考えたのだ。


「マスター以外のヒューマン、弱いですからね」


 シロは遠慮のない言葉をつむぐ。


 聞こえたらしい男たちは何人かムッとしたものの、相手はホワイトバードという伝説のモンスターだと認識しているのだろう。


 悔しそうな顔をしながら視線をそらしただけだった。


「こちらで金級ハンターに登録し、その後昇格試験を受けてほしいと聞いてきたのですが」


 ケントは気づかないフリをすることにし、受付にいる茶髪の女性に話しかける。


「は、はい。ケント様ですね? 話は承っております」


 あわてた感じで女性は金色のライセンスと、一枚の紙をカウンターの上に置く。


「まずはこちらがライセンスで、こちらの書類はパートナー登録です。そちらにいらっしゃるのがホワイトバードの」


 ちらりと青い視線をシロに向ける。

 

「シロですね」


 名前を知りたいのだろうと思い、ケントが告げた。


「ありがとうございます。シロ様の件を登録し、こちらから各所に情報共有させていただきます。これによってレント王国内でシロ様が同行できる場所が増えますので」


 女性の説明に彼はうなずく。


「よろしくお願いします」


 ホワイトバードが攻めてきたと誤解され、騒がれなくなるのはいいことだ。


「よろしくーです」


彼の返答を聞いていたシロがマネをする。

 これに受付嬢は意表を突かれたのか、一瞬ぽかんとした。


「礼儀正しいな」


「モンスターなのにか」


「変身と会話ができるモンスターは、基本的に知能が高いぞ」


「知能が高いのと礼儀正しいかは関係ないけどな」


 という会話が建物内部で生まれる。


 最初のほうの驚きは黒鉄などの低ランク、後ろのほうは銀などの高ランクのハンターのものだ。


 ランクが違うと持っている情報も違うらしいなとケントは思う。


「では引き続きまして、金剛級への昇格試験についてになります」


 受付嬢の話に彼は意識を彼女に戻す。

 大都市ペスカーラまでやってきた本命の用件だからだ。


「金剛級は戦力42を超えていないと、まずクリアは不可能と言われている難関です」


 受付嬢はそう言って、ちらりとシロを見た。


「ホワイトバードのシロ様をパートナーにしていらっしゃるケント様なら、問題はないでしょう。ですが受けていただくのが規則ですので」


 彼女は申し訳なさそうに彼に言う。


「当然だと思います。規則は守られてこそ規則でしょう」


 とケントは答える。


 一気に金級にまでランクアップさせてもらっただけで、充分に便宜は図ってもらったという認識だった。


「ありがとうございます。今回指定されている試験内容は、コカトリスの捕獲になります」


「へえ、コカトリスか」


 とケントは気のない返事をする。


 コカトリスはニワトリのような外見をしているが、毒のブレス、毒のかぎ爪、毒のくちばしで攻撃してくるモンスターだ。


「ちゃんと処理すれば鶏肉くらいには美味かったはずだな」


 彼はゲームの設定を思い出す。

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