第64話 はじめて校閲をしてもらった(17)
第六章第二話。
ここでも、視点ゆれ、表現調整、丁寧に、コンパクトに、トーンを軽く、ナレーションの客観性確保、時制調整、モノローグに入る前の前置き、もっと柔らかく……と、細かく指摘が入りました。
一見些細な部分でも、手直しするとグンと読みやすくなるんだよなあ。
三話。
「相手」と不要な代名詞排除がメイン。指摘部分を羅列してみる。
そう思い→そう決意し、やれる→探れる、問いから入った→聞きただした……とか。
しかし彼は、その事実を向けるためだけに
← 表現調整。代名詞を減らしましょう。「向ける」削減。
「しかしルシファーは、その事実を突きつけるためだけに」
感じられるもの→感じられる戸惑い、向けられる→ぶつけられる……とか。
お気づきでしょうが。思い→決意とか、やれる→探れるとか、感じられるもの→感じられる戸惑いとか。ちゃんと「ネーミング」してるんですよね。その行動に名前を付けている。
そっか。行動の意味をハッキリさせて名前をつけていったらいいんだと気づいたな。
向けるじゃなく、突き付けるって変えるのも同じ。多用している向けるの削減にもなるし、しっかり「突き付ける」と名前をつけたことで、この場に相応しい強い言葉になってるし。
行動には根拠があって、根拠を考えるとネーミング出来るようになるんだ。同時に語彙も増えるんだなあ。
四話。
言葉に出来ない気持ちをルシファーは『声』にのせる。不思議そうにちらりと見上げた神秘的な瞳。それに射すくめられ、彼は複雑な思いにとらわれていた。
← 表現調整。うーん……視点が不安定だなあ。下記に二種類の改稿例を並べます。
(1)ナレーションバージョン
「ルシファーは言葉に出来ない気持ちを『声』にのせた。それを読んだカツミが、不思議そうに視線を投げかける。神秘的な瞳に見通され、ルシファーは複雑な思いにとらわれていた。」
(2)ルシファーのモノローグバージョン
「ルシファーは言葉に出来ない気持ちを『声』にのせた。想いを読み取ったのか、カツミが不思議そうに視線を投げかけてくる。その神秘的な瞳に見通され、複雑な思いにとらわれてしまう自分がいた。」
推敲後。確かに視点が不安定だったなあ。
『良かった。自分が負けていて』
ルシファーは言葉に出来ない気持ちを『声』にのせた。
想い(テレパシー)を聞き取ったのか、カツミが不思議そうに視線を投げてくる。その神秘的な瞳に見通され、ルシファーは複雑な思いにとらわれていた。
あと、カツミとユーリーのやりとりをルシファーが見てるシーン。ここは事前に文章の整理を指摘されました。これは推敲後。
「怒っちゃいないけど、この和んだ空気が気に入らないんだよ!」
「そんなこと、言われてもー」
カツミとユーリーのやりとりを横で見ていたルシファーは、笑いを堪えるのに必死だった。この二人、全く噛み合ってない。原因はカツミの方だ。なんでこんなに飄々としてるんだ。ドライすぎるし、感覚がズレてる。天然か?
作者がルシファーに憑依して書いてるって指摘だったのだが(汗)なるべく引いて引いて書き直した。
最後のところも、ナレーションとルシファーの視点がごっちゃだったので手直しした。推敲後。ルシファーのモノローグで統一。
カツミとの出会いで残されたものは不可解さ。そして興味。チクリと残る罪悪感。ルシファーは知らずカツミをフィーアと比べていた。
フィーアの弟だって?
俺は、フィーアからこんな印象を受けたことはなかったのに。彼はいつも思考の範囲内にいた。分からないなんて思ったことはなかった。優秀で謙虚で、他人にとても優しかった。フィーアにまた会うために、俺は特区を目指したんだ。彼がみずから命を絶つなんて夢にも思わずに。
カツミが自室に消えたのを確かめたルシファーは、首を傾げつつ自分の部屋に入った。とても不思議な人物に出会ってしまったと思いながら。
浮世離れした感じ。ころころと変わる印象。その一方で、悟ったような、自分を捨てたような態度も見せる。『聞けない』相手は、見える部分も想像を超えていく。
カツミに比べてルシファーって「フツーの人」なので、書きやすいし入り込みやすいのよね。この話のキャラの中で一番イジリやすいんじゃなかろーか(笑)
ってことで、今日はここまで~!
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