第58話 はじめて校閲をしてもらった(11)
第四章第一話に入ります。
まだ猶予のある余命より、当面の興味は自分に向いているらしい。
← 読者にはすんなり伝わらない表現です。ひねらない方がいいんじゃないかな。再考を。
○○より……と来れば、普通は○○より△△の方が大事……という解釈をします。生命よりカネを大事にするやつ……とか。実より名誉をとる男……とか。でも、上記の文では、「余命」と何を対比させているのかよくわからないんです。
あと、猶予のある余命という言い方もぴんと来ない。余命という言葉自体が「もう猶予がない」という意味合いを含むので、すっごく矛盾を感じてしまいます。一時間の寸劇。もしそういう表現があったら、ツッコミません?
ツッコむなあ。そりゃあツッコむなあ(笑)
意味を考えてじゃなく、頭より先にタイピングしている感じだなあ。自分だけが分かっている状態ね。ほんとそういうの多い(汗)
んで、こう変えました。
ジェイの言葉はいつも通りに乾いていた。不条理とも言える現実。だがジェイには受容済みのことらしい。当面の興味は自分に向いているらしい。
不条理な現実は、読者ももう知ってますので。はい。
あ。カツミの父親が原因をつくった病で、ジェイはもうすぐ死ぬんですよ(と、サラッと言っておく・おい)
他はとにかく「丁寧に」と、表現の調節を指摘されました。あと一歩説明が足りないのね。これは前から続いてるなあ。
歯止め → 楔子(けっし くさび、かすがいという意味です)「命綱」のようなもうちょい平たい言葉でもいいんですが、歯止めよりは重い言葉の方がいいかと。
「カツミが生き続けるための歯止めを探して」という表現自体を書き直して重くする方がいいかも。カツミにレゾンデートル(生存意義)を与える……ここはとても大事なところですから、読者にスルーされないようにしっかり重み付けする必要があります。
付け足しました。
生存意義かあ。生存意義って、誰かに与えられたり守られている状態では見出せないよな。ジェイが死なずにカツミをずっと囲っていたとしたら、カツミは籠の鳥。ジェイはロイの二の舞だったと思う。
ジェイは、カツミを置いて死にたくはないけど、反面ホッとしているんですよねえ。あ。横道に逸れた(笑)
「カツミのことを頼む」
思った通りだった。ジェイは自分の死期を確信した時から、カツミを生に引き留める楔(くさび)を探していたのだろう。カツミが生きていく意義をみずから見出せるまで、そのいのちを守る者を。そしてジェイはもう延命治療をしないと決めているのだ。
メリハリつけておかないと、読者にスルーされる(汗)だよな。
歯止めより楔のほうが、強いよね? え? じゃないと困るんだが。
四章二話。
すがりながらも、ほんの小さな染みを拭いされない人に。
← 文意が取れません。「誰が何を」をきちんと書いた上で、略記を考えてください。再考を。
主語はどこに行ったーーーー! って、ほんと主語抜き多い(汗)
で、こう書きかえ。
生死の天秤が再びガタリと傾いた。振りほどいたはずの手が、さらに強く死の淵へと引きずり込もうとする。
ジェイ……生に繋ぎとめるものにカツミは縋る。縋りながらも、ほんの小さな疑いを拭いされない人に。
ロイとジェイとの間にどんな想いがあったとしても、それは色褪せた写真だというのに。
次は視点ゆれ。
まだ顔に鬱血の痕が残っているはずである。なのに、何も問わない。
← 表現調整。ここらへん、視点が揺れてます。カツミ寄りのナレーションとモノローグがまぜこぜになってる感じ……。
「まだ首に鬱血の痕が残っているはずだ。しかし、それが問いただされる気配はなかった」……これでもまだしっくりこない。(^^;;
鬱血の痕を意識しているのはカツミなので、ナレーターがそれを言うのはおかしいんです。でも、表記上はナレーションでしょ?
言われてみて「あ゛ーー!」って気づく。ナレーターが出しゃばってる。
父から向けられる疑念のこもった視線。顔にはまだ鬱血の痕があるはずだ。何か言われるのだろうか。カツミは身構えたが、ロイは何も問わなかった。
カツミ視点に。こんなのばっかじゃあああ。
取り出した書類は、ジェイ・ド・ミューグレーと記された退官願いと診断書。悪性新生物。免疫機能不全。その下にも造血機能障害の病名が連なる。
どれ一つを取っても命に関わる重篤なものばかりで、ステージは最悪だった。ただ、この書類を見るカツミにはよく分からない内容である。
← この部分、基本的に中立のナレーションなので、それを徹底してください。不用意にカツミに近づきすぎると、わけがわからなくなります。
「封筒の中に入っていたのは、ジェイ・ド・ミューグレーと記された退官願いと診断書。診断書には、悪性新生物、免疫機能不全、造血機能障害と、病名が連記されていた。どれ一つを取っても命に関わる重篤なものばかりで、ステージは最悪だった。しかしカツミには、それらの医学的専門用語がよく理解できなかった。」
「ただ、この書類を見るカツミにはよく分からない内容である」って、確かに中立からカツミに近づいてるなあ。
ナレーションカメラから映したら、カツミが「何のことかよく分からない」という顔をしたとか、首を傾げたとか、動作だろうし。
封筒の中に入っていたのは、ジェイ・ド・ミューグレーと記された退官願いと診断書だった。診断書には、悪性新生物、免疫機能不全、造血機能障害と病名が連記されていた。どれ一つを取っても命に関わる重篤なものばかりで、ステージは最悪である。しかしカツミには、それらの医学用語がよく理解できない。
とはいえ。ほぼ、師匠の提案通りに書きかえました(笑)
次も視点ゆれ。はい。通年・直下型で揺れてます(汗)
延命? ジェイから話を聞かされたとき、かなり深刻なのだろうという認識はあったが、すぐに生命が脅かされるレベルだとはカツミは思っていなかった。
← この部分、視点揺れ。ナレーションかモノローグか、はっきりさせた方がいいです。
「延命? カツミの顔から血の気が引いた。ジェイから話を聞かされたときに病状が深刻だというのはわかったけれど、すぐに生命が脅かされるレベルだなんて。そんな……。」
ほんまや。ナレーションとモノローグが、ごっちゃ。
「退官願いは受理せざるをえない。いずれにせよ、延命治療が必要だからな」
延命? 父の言葉にカツミの顔から血の気が引いた。
ジェイから話を聞かされた時に、病状が深刻なのは分かった。でも、すぐに命が脅かされるレベルとは思っていなかった。
なんか私の書きぶりの方がアッサリ(笑)
次も視点ゆれ。
言わなければならない言葉、言うべき言葉はいくらでもあるはずだった。だが彼はなにも言わない。相反する思いの中でなにも言えない。
← 視点揺れ。中立で整理しましょう。
「言わなければならない言葉、言うべき言葉はいくらでもあった。だが彼はなにも言わなかった。いや、相反する思いの中でなにも言えなかったのだ。
」……くらい?
書きかえたやつ。
「……分かった。許可する」
他の言葉を飲み込み指令だけを放ったロイが、一礼して背を向けるカツミをそのまま見送った。
言わなければならない言葉、言うべき言葉はいくらでもあった。だが彼はなにも言わない。相反する思いの中でなにも言えなかった。
微妙だけど、ぺったりロイの心情にくっつくのは避けられたかな。
こういうとこ、しっかり見ようよーー! もう見えないんだよおお(おい)
って、ジタバタしつつ、今回はここまで!
四章は起承転結の「転」の部分なので、以前からわりと時間かけました。
かけてもコレだもんなあ(汗)
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