第40話 推敲のメモ帳⑧ 推敲で本筋を見つける

 はじめての推敲。八回目。最終回です。

 28万文字の小説の2/3ほどを詳細に見てもらいました。

 期間で二か月。往復したメッセは四十通くらいでしょうか。

 推敲のやり方をまるで知らなかった初心者に手ほどきするのは大変だったと思います。

 ただ、これを切っ掛けに推敲の楽しさを知りました。

 今は句読点でジタバタしていますけど(^^; もう三年やってます(^^;


【M】本編、完結しましたね。処女作にしては、とてもきちんと編まれているんじゃないかと。背景の設定にでこぼこがあるのは、最初の作品なら仕方ないかなあと思います。そこらへんは、慣れもありますね。

 テーマはとても普遍的なものですし、愛情の形の多様性と自立の不確かさが最後まで印象に残りました。

 誰が正しい誤っているというわけでなく、それぞれの自己スタイルの違いが全体の綾を作っていて。そのスタイルが全く噛み合わなかった人同士の、軋轢と悲劇の物語かなあと。

 カツミがあっさり突き抜けてしまったのが、かえって最後のバイプレーヤーたちの弱さをあぶり出しにしてますね。



 二稿目をあげた後のMさんの感想です。や、優しい(^^;

 まだまだぐだぐだだったのに(^^;

 で、推敲の手ほどきも終盤あたりのシーン。その十稿目を。



【K十稿目】

 ロイがふっと表情をゆるめた。しかし次の言葉にカツミは耳を疑う。

「今回の作戦に、私は出ない」

 目を瞠る息子を見て、知らされてなかったか……とロイから独り言がもれた。

「昨日、退官願いが受理された。私はもう降りる。タイミングは悪かったがね」

「……なぜ?」

 茫然と向けられたカツミの問い。しかしロイは答えなかった。黙ったまま、冷えた空気に紫煙を放つ。

 白く変わる視界が、その煙のためなのか、この不可解な言葉からなのか。カツミにはもう分からない。

 頭の中で微かに、しかし確かに、警鐘が鳴り響く。


「カツミ。おまえは私を追い越した時、許すと言ったな」

 自分を凝視している息子に、ロイはあの突き刺すような眼光を向けた。

「その言葉、忘れるな」

 低く通る声が、二人のあいだにどさりと落とされた。

 それを待っていたかのように、凍てつく風がカツミの髪を大きく煽る。


 ──束ねるものの予言が、またひとつ結実する。意識の底を洗う鏡を磨くため。導く者のために。


 困惑のなか、それでもカツミが頷くと、ロイがふっと目を細めた。静かに歩み寄り、擦れ違いざまに肩を叩く。

 足音が遠ざかり静寂が戻るまで、カツミは微動だにせずロイの言葉の意味を考えていた。ひとつだけ分かったことがあった。

 父はずっとジェイを愛していたのだ。彼が去った特区に何の未練もないほどに。ジェイを奪った自分のことを憎むほどに。

 だが……今、父が自分の肩に託していったものは何なのか。


 過去のことはカツミには分からない。

 分かっているのは、自分とジェイとの間に立ち塞がる者はもういない……ということだけである。

 鋭く見据えるトパーズの瞳が、まだカツミの脳裏に残っていた。目を細めた顔も。そして、肩に残った大きな手の重みも。

 父は自分に道を譲ったのだ。なにか大きなものを抱えたまま、自分に道を拓いたのだ。




 第一部のラストに差し掛かったこのシーン。ここの推敲をするうちに気づいたことがあります。

 初稿を書いていたのは二十代だったので、カツミの父親であるロイの内面には深く踏み込めなかったんですよね。自分よりだいぶ大人なので、よく分からなかったんです。こんな着ぐるみ着たくなーい! じたばた!

 ただ、今なら分かる。そしてロイの内面が分かったことで、この小説の大元の背景がハッキリしたわけです。


「百年前の予言」の話。それまで、まるで伏線を張っていなかったわけで(^^;

 推敲しなかったら、気づけずに終わっていたでしょうね(^^;

 ガーン!!

 ……というわけで、最初から全て見直して余計な部分を削り、伏線を入れ直したわけです。

 すると、最初から最後までピーンと一本縦糸が通りました。

 右往左往していたのは、これをしっかり認識してなかったせいかよっ!

 ……ひでぇ作者(^^;

 でもこれで、カツミの性格にも、ロイの所業にも、フィーアに関することにも、明確な根拠が示せます。


 で、三稿目でハタと思ったわけです。

「これ、問題提示はしてるけど、解決してねえええ!」

 ってわけで、解決編である続編を書くことになりました(^^; どんだけ(^^;


 最初は手取り足取り教えてもらわないと、なにが間違っているのかも分からない。

 小説の書き方の本は色々あって参考になります。でも、自作の推敲に勝るものはないですねえ(^^;

 他者の目って必要だと思います。私はホント恵まれてました。

 逆に私だったら頼まれてもやらないわあ(おい)めちゃめちゃ大変ですもん(^^;


 物書き上級者の方で、他者の作品の校正、校閲を手掛けてる人ってどれくらいいるのでしょ。めっちゃ少ないと思いますわ。すんごい労力ですし。

 でももし、そんな方に見てもらえるチャンスがあるのなら、ホント掴んでほしいです。

 んで、数年前に書いた作品。読み返してみて下さい。顔から火が出そう! だったら、成長しているんですよねえ。

 おめでとです(笑)さあ、推敲を始めましょ(笑)


 じゃ、これで。またなにかネタが降って来たら、いつか!

 楽しい執筆ライフを!

 重ねて、Mさん、ほんとうにありがとうございました!!!











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