第59話 刺客現る
「帝サマ自ら出撃って大丈夫かよ……?」
「私は帝である前に軍人、国をむしばもうとする悪を止めるのは責務だ」
肩をすくめるアイシャを見てフェイは奇妙な形の銃を構え決意を語る。悪を止めねばなるまいという意思が強く感じられる。父が引き起こしたというのもあるからだろう。紫禁城は陣たちに任せようというところか。
「えっと、なにそのヘンテコな銃は?」
京がフェイの持つ銃を気にした。西洋のライフル銃ににているが、奇妙な機械が取り付けてある。どうにか銃とは分かるぐらいだ。
打ち解けたのか京の口調も砕けたものになっていた。叔母ということもあるがフェイ自身が気にしていない。フェイは軍人出身ではあるが、オンオフの切り替えができているからだろう。
「これは宝貝を解析し陽の雷の力を放てるようにしてある試作ライフルだ。威力はかなりのものだが、西洋の突撃銃と比べて弾幕を張るのには向かない。万能という訳ではないな」
「……」
フェイから説明を聞くものの、銃の事はまったくわからず、二人は首を傾げるばかりだ。
「開発中の出力を調整するパーツを取り付けることで威力は落ちるが弾幕を張り敵を圧倒する運用が可能になり、さらには――。いや、すまん……」
二人を置いてきぼりにしていることに気づき、悪い癖だと首を横に振る。
「私は技術者でもあるからな、どうにもうるさくなってしまうんだ」
「なるほどねェ……」
フェイは古代遺跡にある宝貝を解析した兵器を作り上げたのだから優れた技術者といえるだろう。
「まにあ、って奴か?」
「そうかもしれない」
アイシャがふざけて笑うと、フェイは苦笑した。
「さて、当初の目的通り太公望廟に向かうぞ。馬を使えば遠くはないはずだ」
まず三人は馬の厩舎に向かうのだった。
一行は馬を走らせ太公望廟に向かう。太公望廟は都から少し離れた場所にあるのだが――。
「……」
黒い道着を着て、黒い色の眼鏡を掛けた男がそこにいた。
「どうも、初めまして」
男は一行を一瞥し、挨拶だと手を合わせる。
「……、何者だ?」
だがフェイは友好的な相手だとは思っていない、油断なく銃を構える。
「私は量産型オートマトンです。早速ですが、命令によりあなた方にはここで死んでいただきます」
しかしフェイが引き金を絞る方が早かった。銃口から凄まじい雷が放たれる。
「量産型と舐めていただいては困ります」
黒い人形は放たれた雷をかわす、この銃は本物の雷と違い弾速自体は遅いようで、それも災いしていた。
「一発だけだと誰が言った?」
フェイが続けて引き金を絞る。弾速は遅いが、正確に人形の動きを制限している。
「只人であるのになかなかやりますね」
人形はステップを踏みつつ、フェイへの接近を試みる。
「それに私を斃しても、我々の戦力はまだ――」
「ごちゃごちゃとうるせェェェェ――ッ!」
人形の見下した物言いにアイシャの頭は沸騰し、勢いに任せて接近し人形の頬を殴り倒す。
「ぐッ……」
人形が殴られた頬を摩る。
「なるほど、量産型だけあって複雑な動きに対応できないのね」
京のいう事は正解だ。京たちは知らない事だが、ズーハンと違い人間の脳を移植されているわけではないようだ。
絡繰兵よりは複雑な動きができ、強いのかもしれないが。まだ課題が多いという事だろう。
「
京は接近し、熊猫拳を人形に叩きこむ。
「ぐ……!」
人形は受け身を取り、体勢を立て直し――。
「こちらとて意地がある――!」
人形はフェイに狙いを付け、接近する。
「指揮官を狙うは定石、ここで死んでいただきます」
人形は奇妙な音と高熱を発する。自らを自爆させ、帝であるフェイを道連れにする腹づもりなのだろう。
「ちッ、小癪な真似を!」
しかし、フェイとて帝である前に正規の軍人だ。近接戦闘の心得はある。
「でぇぇぇい!」
人形の手を掴み、背負って投げ飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます