第30話 合流

「ぶっ壊してやるッ!」

「!?!?」

 アイシャが馬から飛び上がり、踵落としで骨絡繰兵の頭上をカチ割ってみせる。

 跳躍力もさることながら、ぶっつけ本番で馬上から飛んで見せたのは修行のたまものだ。

「おお、やるわね!」

 京が骨絡繰兵をいなしつつ、器用に馬上蹴マーシャンツゥを放っている。

「無茶苦茶だ……」

 頼は頭に手を当てているが、頼りになる増援ではあるのは間違いない。

「ですが、相手の勢いは削がれています」

 凛は冷静に状況を見ていた。骨絡繰兵は、突然現れた増援に対応できず、その数を減らしている。

「忌々しい絡繰からくりどもめ!」

 陣の気合に呼応するかのように紅く光り輝き、そして――。


「おおおおおおおッ!」


 一閃。

「!?!?」

 陣たちに襲い掛かってきた骨絡繰兵の胴を両断してみせた。 

「おっさん、やるな!」

 アイシャが歓声を上げると、陣が怒鳴る。

「愚弄するか娘ッ、私は二十八だ!」

「褒めてんだよ! あと俺は娘って名前じゃねェ!」

 アイシャが軽口を叩きながら、骨絡繰兵を蹴散らす。

「口喧嘩してないで集中しなさいよ!」

 京が馬から飛び上がり、陣たちの

「ヒヒン!」

 馬は骨絡繰兵を器用に避け、後ろ蹴りを食らわせる。

「ガガッ!?」

 蹴りの威力はすさまじく、骨絡繰兵の肋骨をへし折った。

「……なるほど、なかなか戦い慣れた馬のようだな」

 頼が感心していた。この馬を選んだ街長の目は確かだと思わされる。

「こいつ、骨だけだから脆いみたいね! 熊猫拳シュンマオチュアンッ!」

 京の熊猫拳だ。《氣》を込めた拳を放つという極陽拳の基礎の技だけあり、状況をさほど選ばないのがこの技の強みである。

 骨絡繰兵も絡繰兵なのだから、骨なのは外見だけだとは思われるのだが、脆いのは事実だった。馬の後ろ蹴りでへし折れるぐらいなのだから。

「敵はどうした!?」

 陣が叫ぶ。敵の増援が途切れたのを不審に思ったからだ。

「隊長様、どうやらあの連中は本当にいなくなったようですッ!」

 見張り台にいた村人が大声で怒鳴った。

「そうか。どうやら、この場を凌いだようだな……」

 陣は剣を鞘にしまい、その場に座り込む。

「助かりました」

 安堵した凛は流れる汗を綺麗な布で拭う。

「……連中によって亡くなった者がいなかったのは、幸いか」

 京の顔を見て頼が吐き捨てるように言うのは、京の素性を知っている故だろうか。

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