よれよれメルヘン

だから今今を一思いに殺して往年を釘付けにする

貪欲な寓話は心臓を丸呑み、その場で終わる

モジュールの徘徊を見届ける 酵素にイロドリを預けて 

表面に膾炙した煤を 木版画に見立てる。

君の零れた笑みを写し取るはずの、


割いた被覆を差し出した むしくいの咎を数えたい。

滲みだした千切れ雲を いくつも 張り巡らされた海図は 

狂った方角を 指さし向ける 私ばかり 連れ去らなかった。


インキが胡蝶に思えて 逃げ始めたときに――

――偽善者の罪の泡沫でも数珠繋ぎに犯したい


悦びに錦織生す秋の斬月も感傷旅行へ、

不用品の在りし日をクレヨンで遠巻きに囲う、

橙の烈 割り切れずにだらしない

よろめくもの

外套に包み隠して。

探海灯で照射する偽薬のような関係で、結ばれた御神籤には、

きっとオオミズアオの 口当たりを分娩する、大海が遷しだされるだろう。


限りなく擬態したシンク上に粉砕した、キミドリを口に含んで、

退行を興す、みずいろの殻から生まれ始めた幻想と玉砂利の経験。

とても手の届かないエメラルドを温情に遺して霧散する墨染アルルカン、

刹那の意識に水死した。

蝙蝠の発情、カルキ臭と動かぬ肢体。玲瓏と刺し違える。かみはわらう


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