わたづみ

 倒れ込む ほど そこにあり のびさかる、雑然。

 口から出まかせの掠り傷がそのうち膿んで、わだつみとなる。そのはなし 銀の龍の尾 髭 につく。緩やかな螺旋の みやびやたらと、乳濁し漂白される。数㌢、ほろ甘い新雪の影に隠れる 鬱血痕も屹度あって、お好みで妬いた春の切っ先は いとおしく とびきりの おもい、やや喝采。

 上におわします 我らは はて、この手で救っても色褪せていく。

 ほとぼりがひきつりを催す。ケロイドのとき、それでいてなかったことにされる、無情な易しさに抱かれている、至極鮮やかな冬枯れの染め物を、いづこ、毟り取って喰らってみれば、未知と強いてみましょうかな。

 ただこれは装束なのか、御前を這わす 垂涎を 

/ それとも無垢なのか、とびはねるばかりの後方を。

逝くあてもなく メリハリのない針の筵にて、ぱさぱさしたコク吐く、足跡はのっぺりとうつりこまれた、途上に舞った尋ね者だ。

 その喪失とは 

 どうせ呱々に気のあるもの、ちょこちょこ足が生え、つきのうさぎのように迷夢、尾の永いケサランパサランと やはり栄えている。なんてことだろうか、もう黴臭い箱庭で跳ね躍る情け心。これにて聖廟に。ひたひた 見上げていたもの、至らぬことも、所詮 模汎画に通ずる。

 夢から冷めたようなこの身体、空虚にて清浄に、ひとつ伸びを興しただけ。欠伸ひとひらの泪とは大海の揺りかごに生み出される。

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