油色の町

作者 一式鍵

ギブスンの短編も思い出すような令和のSF

  • ★★★ Excellent!!!

超ひも理論とは、物質の最小単位を粒子ではなく、広がりのあるひもであると考える理論です。物質の最小単位がひもであるならば、その一次元の広がりの分想像できる次元を拡張でき、世界は10次元ないし11次元以上で表される、と言うとその理論の広がりの面白さが少しは伝わるでしょうか。
SFはかつて(今もそうだけど)作家の妄想から、理論に即しただけでは記述しきれない現実を描くものでもありました。古典SFなどを読むと、どのようにかつてのSF作家は現実を記述しようとしたかがわかります。クトゥルフ神話も、ラヴクラフトの活躍した19世紀には当然一種のSFであり多くの論者が、これは後世の予言になっていると論じています。

作家の妄想は妄想とは限らず、それがもしかしたら現実を記述するものかもしれない、と読む側も妄想することができるのが現在進行形で発表されるSFを楽しむ意味のひとつでもあると考えます。

多元に繋がる"ひも"は我々には文字通りひもには見えないかもしれません。それはドーナツの穴のようなものかも。

地球が丸いのは全世界の大多数が地球を丸いと思っているからだ、なんて話もありますが。
あなたがこの短編を読むことが、もしかしたら現実を現実たらしめる記述の強化に寄与するやもしれませんな。

さあ、現実を現実たらしめるために。読みましょう読むのですそうしましょうさあさあさあ。

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