紅蓮獅王との再会

 四人は教会へと向かう。事件が起きてから既に数日。失踪者の報告は数件。全てが同一犯の犯行とは限りはしないだろう。だが、先ほど話を伺った男性の妻子以外にも、複数人の犠牲者が出ていると見るのが打倒だった。

 教会に近づいていく度に気配を感じた。幾多もの戦闘経験を経てきた結果として得られる独特の嗅覚だ。第六感といっても良い。冒険者稼業をしていると、何となくそういう、カンのようなものを得られるようになる。

 リアラの索敵スキルにより得られた結果は恐らく間違ったものではないのだろう。近づく度にそういう予感が得られた。

 そんな時だった。

 クライン達『白銀竜王』の前に複数人の人影が現れる。


「お前達は……」

「よおっ。久しぶりだな、クライン。白銀竜王って今は名乗ってたな」


 アレルヤはそう言う。四人が現れる。かつてクラインが所属していた冒険者パーティー。

 紅蓮獅王の連中だった。


「……私達、最近Sランクの冒険者パーティーに復帰したところなの。復帰できるのも当然

よね。だって私達、あなたがいた時よりもずっと強くなっているんですもの。これもあのお方に力を授かったおかげよ。ふふふっ」


 イザベラは以前と同じように余裕のある笑みを浮かべる。


「何があった? あの教会に誰がいる?」

 

 クラインは聞く。


「それに答える義務はないわ」


 イザベラは答える。


「誘拐事件の犯人はあなた達だったのですか?」


 シアは聞く。


「さあ、どうかしらね」


 イザベラははぐらかす。


「そこを通して貰おうか。俺達はこの奥の教会に用があるんだ」


 クラインは言う。


「それはダメよ」


 イザベラはそう言う。


「なぜだ?」


 クラインは問う。


「理由は話せないわ」


 イザベラは言う。


「通さないっていうのなら、無理矢理にでも通るしかないな」

「それもダメ。通さないわ」


 イザベラはそう告げる。

 白銀竜王の面々は身構えた。もはや戦闘は回避できそうにもなかった。


「ふっはっはっはっは。やる気満々じゃねーか。言っとくけど、俺達を以前の俺達と同じと思うなよ。俺達はあるお方から力を授かったんだ」


 アレルヤは剣を構える。あるお方、やはり何もかから力を得たのか。しかもそれは良くない存在のようだ。魔族だろう、恐らく。悪魔に魂を売って、紅蓮獅王の連中は力を得たのだ。 そう見て間違いがない。

 そうなるとあの教会にいる存在は魔族と見て間違いがないだろう。

 冒険者である事など差し置いて、魔王の手下である魔族の僕となるとは、言語道断であった。


「来るぞ!」


 セシルは剣を構える。


「ひっやっはああああああああああああああああああああ!」


 アレルヤは奇声を放ちつつ、剣を振るってきた。セシルの剣と交錯し、甲高い音を奏でた。 こうして白銀竜王と紅蓮獅王との戦いが始まったのである。

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