Epi61 ハッピーバースデー

 変態が過ぎる内容となっております。


     ***


 風呂場で俺の愚息を持ちながら嬉々として毛を剃る明穂だ。


「今夜のメインディッシュだからね。綺麗に磨き上げないと」


 その髭剃り。

 お義父さんが使った奴だったら、問題無いんでしょうか? だって、俺の股間を剃った奴で顔を剃るってことだよ。ものすごく気色悪いと思うんだけど。


「明穂」

「なに? 今いいとこなのに」

「その髭剃り」

「あーこれ? 刃の交換でいいでしょ」


 いやいや、違う気が。交換したから大丈夫、じゃないよね。なんかお義父さんが哀れに……。俺の心配をよそに明穂は実に楽しそうに剃り上げてるし、傷付けないように慎重に扱ってるみたいだけど、それでも剃られてると怖い。そこに当てられているのは刃物だから。


「縮み気味だね」

「だって、刃物が怖いから」

「大切な大貴だよ。絶対怪我なんてさせないから」

「それでも怖いんだってば」


 持ち上げたり伸ばされたり、ぐりぐりされたり。

 俺の股間から毛が無くなって行くんです。シェービングフォームを塗られて、泡泡の状態から素肌が見えると、そこはつるんつるんに程近い状態で。

 幾度かそれを繰り返すと、見事に生まれ変わった俺が居た。


「子どもみたい」

「すみません。小さくて」

「じゃなくて、毛が無いから」


 子どもはすでにスタンバってます。


「毛が無くてもあの写真とは違うね」


 例の奴ですな。幼少時の写真。


「あ、あたしのも剃ってみる?」

「遠慮しておきます」

「でも不公平だよね。あたしもお揃いでつるつるって、いいと思わない?」


 返答不能です。


「あ、でもあたしのはクリスマスの時に剃ればいいよね。大貴へのプレゼントで」


 返答不能です。

 その後、風呂場で互いに洗い流すと、タオルだけ腰に巻いて部屋へ連れ込まれるんだけど。明穂のお義母さんにしっかり目撃されました。


「なんとなく聞こえてたけど、どんな感じ?」


 返答不能なんですってば。

 明穂のお義母さん。なんかブツブツ言ってる。「若い時に試せばよかった」とかなんとか。「今さらそんな気にはなれないし」とも言ってる。


「大貴君のでもいいんだけど」

「お母さん。大貴のはあたし専用だから」

「ケチねえ」


 で、強制的にその場から引っ張られると。ラブコメだよね。


「あら」


 タオルが落ちて丸出しになって、お義母さんにしっかり目撃されました。

 その直後に口にしたのは「若いっていいなあ」だってさ。猛烈に恥ずかしいんですけど。


「お母さんに見せる気なかったのに」


 タオルで隠さず明穂が手で隠すから、ほぼ握られてる状態なんです。


「見えちゃったんだもん。不可抗力でしょ」


 お義母さん。しっかり凝視してます。反応した状態のまま風呂から出て、そのせいで隠し切れてないから。死ぬほど恥ずかしい。

 明穂が悔しがってるのは珍しい。自分だけの楽しみだったんだね。


 因みに明穂も丸出しなんだけど、そこはお義母さんだから気にしないみたいだ。


 部屋に戻るとベッドにシートを敷いて、そこに寝かされるんです。


「じゃあ、材料用意するからおとなしく待ってるんだよ」


 裸で待たされるって、なんかイヤ。


 少しするとがちゃがちゃ音立てて戻って来た。


「生クリーム、チョコシロップ、イチゴ、缶詰のみかん、バナナ、パイナップル、そしてミント少量。大貴のバナナはメイン」


 材料の解説してくれました。

 マジで大貴盛りとやらを作るようです。


「さあやるぞー!」


 そう言うとボウルに入ってるホイップされた生クリームを、お腹から下半身へと塗ったくられ、次々デコレートされて行く俺。仕上げにチョコシロップ。体が少し冷えるんです。せっかくお風呂で温まったのに、湯冷めどころか風邪ひくかも。

 それにしても変態も度が過ぎると滑稽ではあります。


「大貴! 食べていいんだよね」


 好きにしてください。

 お誕生日おめでとう。明穂も十七歳だね。

 もうここまで来たら諦める以外の選択肢は無い。


 明穂に美味しく頂かれる俺って。

 なんか体を舐め回す明穂がものすごくいやらしくて、このいやらしさって、どこから来るんだろう。あのお義母さんもそうなのかな。

 時々明穂に「あーん」ってされて、自分の腹に乗ってたフルーツ食べさせられて、綺麗に舐めて吸い尽されると、明穂待望のホワイトシャワー。


「ご馳走様」


 もうなにも言うことはありません。


「このまんまじゃ服着れないから、またお風呂行くんだよ」


 で、部屋から連れ出されて、明穂のお義母さん、キッチンからこっち見て「お愉しみは済んだの?」とか言ってるし。

 今回は明穂によって完全ガード状態だから、見られる心配は無かった。


「裸で歩き回っても文句言わないけど?」

「見せないから。大貴はあたし専用だって言った」

「遠慮要らないんだけどねえ」


 そこはやっぱり遠慮させて頂きます。


 風呂場で洗い流されて、冷え切った体を温め直して部屋に戻って服を着ると。


「お腹空いてる?」

「さっき食べた果物だけだと足りないかも」

「じゃあ、もう少ししたらお母さんが用意してるから、一緒に食べようね」


 異常性欲の持ち主かもしれないけど、その笑顔を見ちゃうとね、なんか許しちゃう自分が居る。

 満面の笑みは常に俺に向けられてる。幸せそうで俺にしな垂れ掛かって、抱き合ってキスして。


「ご飯食べに行こうか」

「うん」


 出来上がったみたいで、ダイニングへ行くと、少しばかり豪華な食事が用意されてた。

 食卓には明穂と俺、そしてキッチンから俺たちを微笑ましく見る、明穂のお義母さん。


「明穂の相手も大変でしょ」

「あ、いえ。そうでもないです」

「性欲旺盛だし毎日振り回されて、でも、無理がある時は遠慮しないで、ビシッと断っていいんだからね」


 それは無理だと思います。

 きっとお義母さんも同じで、言い出したら聞かない性格なのでは?


「血は争えないから。お母さんもあたしと同じ」

「そこは違うから。明穂はどこで間違えたのか、性欲ばっかり増進しちゃって」

「お母さんもすごかったの知ってる。幼い頃毎晩声が家中響いてたから」

「気のせいでしょ」


 やっぱり親子だった。

 俺を見て「お母さんの声って、まるで犬の遠吠え。すごく響いて寝られなかったんだよ」とか言ってるし。それも毎晩とか。

 それなのに「弟も妹もできないなんて、お父さんの種が悪かったのかなあ」とか言ってるし。聞いてるこっちが恥ずかしい。


「あたしもね、もう一人二人欲しかったんだけどね。あんにゃろ、全然根性無くて種尽きるの早いし薄いし」


 お義母さん。気のせいとか言ってて、自分で性豪だって認めてるし。

 俺と明穂が結婚して子どもができないと、同じように言われるんだろうな。


「大貴君なら若いからいくらでも絞れそうね」

「駄目だってば、大貴はあたし専用なんだから」

「少しくらい分けてくれても」

「駄目。絶対」


 俺と明穂のお義母さん? 無い無い無い、絶対無いです!


 そう言えば、この家の主であるお義父さんはどうしたのかな。


「今日お義父さんは?」

「帰りが遅くなるんだって」

「明穂の誕生日だから早く帰れるようにする、とか言ってたのに」

「居なくていい。その分、大貴と楽しめるから」


 邪魔者扱いされてる。なんか哀れだな。

 その後、夜九時頃に「遅くなった。明穂に誕生日プレゼント」とか言って、しきりにご機嫌取りをするお義父さんだった。


「プレゼントなら大貴をもらったから、もうお腹一杯なんだけど」

「そんなこと言わないで。前に欲しがってた上下一式買って来たし」

「それはありがたくもらっておく。大貴とのデートで着るから」


 苦笑いするしかないお義父さんだ。「俺とのデートは無いのか?」とか言ってて、明穂に軽く躱されて「お母さんとラブホでもしけ込めばいいじゃん」とか。「明穂がいいんだけどなあ」とか言うとお義母さんに頭叩かれて。

 お義父さんの家と外でのギャップがすごい。文化祭の時のあの威厳みたいのが、全然無いんだもん。

 これも家の中が本当にリラックスできるからなのかも。


 十時前に自分の家に帰ろうとしたら、明穂の抵抗が凄まじかった。

 でも。


「うちの母さんも誕生日祝いたいみたい」

「お泊りだよね」

「時間的にそうなっちゃうね」

「朝まで大貴と一緒だ」


 家の中に入ったと思ったら荷物抱えて出て来た。


「それは?」

「お泊りセット」

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