あれだけ不安だった気持ちが、すっと遠のいていた。


 そのせいか、試験も落ち着いて臨めたし、結果合格することも出来た。もしあの出会いがなかったら、きっと何も手につかず失敗していただろう。


 最近、そのことをよく考える。


 大学生活がスタートしたが、慣れないことばかりで、楽しむような余裕は私にはなかった。あこがれと幻滅が入り交じった毎日、それについていくことだけに、ただ必死だった。


 四月が終わる頃、複数のサークルが主催する新人歓迎会に誘われた。そういったにぎやかな雰囲気はちょっと苦手だったけれど、良くしてくれる先輩の誘いだったし、参加してみることにした。


 広い居酒屋の隅の席に腰掛けて、回ってきた自己紹介を何とかこなした。年齢的にもお酒は飲めなかったので、盛り上がっていく周囲のテンションについて行けず、少しずつ取り残されていった。


 ぬるくなったジュースを口にして、ため息をつく。


 一人、うつむいて、昨日買ったばかりのスカートの柄を見つめていた。


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