それから、一ヶ月がたった。


 とても仲良くしていた友人とぎくしゃくした。私の何気ない一言が原因だった。受験のぴりぴりした雰囲気がそうさせたのかもしれない。もちろん、友人を傷つけるつもりは微塵もなかった。


 いつの間にか、私は一人になっていた。他人と話すのが億劫だった。また誰かを傷つけてしまうかもしれない、それなら一人の方がまだまし……。


 だけど、孤独になればなるほど、誰かと心を深く通わせたい、何かを共有したい、そういう欲求がやっぱり湧いてくる。


 また、ざわざわしてる。こんな気持ちのまま、勉強なんて続けられない。明日は試験。死にそうなくらい不安だった。


 どうしたらいい。


 わからなくなって、私はぶらんケットを膝にかけた。プールの水を感じながら、ただぼんやりとする。机の上に突っ伏して、小さい子供のように足をばたばたとさせた。


 このまま何もかも忘れてしまいたい、そう思ってみるけど、それもやっぱり本心じゃない。……とにかくやらなきゃ、そう思って問題集に手をかけようとしたとき、異変を感じ、足を止めた。


 温かい。ほんのわずかだけど、水温が上がったように感じられた。こんなことは今まで一度もなかった。


 まさか、これが混線……?


 と思った瞬間、私の両足はぐぐっと痺れ、ついには動かなくなった。


 すぐに、ぶらんケットの電源を落とそうとパネルを操作したが、ぜんぜん反応しない。生地を剥ぎ取ろうとしてみるが、それを掴んだだけで、足の痺れが激痛に変わった。


 どうすることも出来ない。


 慌てる私に追い打ちをかけるように、つま先に何かがあたった。


 びくっとなる。


 声も出ない。……やっぱり、混線してるんだ。


 どうしよう。パニックになりかけるが、実際に触られているわけじゃない、ここは仮想空間、そう何度も自分に言い聞かせた。


 落ち着け、落ち着いて。


 混線なら、きっと向こうもびっくりしているに違いない。


 ちょっとでも動かそうとすると、痺れはきつくなるが、それでも時間と共にましになってきている。このままこうしていれば、そのうちにおさまる、きっと……。


 少し落ち着きを取り戻しかけたとき、不意に足を重ねられた。


 ……でも、それは意図的なものではなくて、差し出したところにたまたま私の足があった、そんな印象を受けた。


 ごつごつとしていて大きい。


 男の人……?


 たどたどしい想像を巡らせているうちに、彼の足が動き出した。


 微妙に震えている。緊張しているのがわかった。


 え、これ、文字……?


 私の甲に、何か書いている。

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