お題「補欠」

高校になって始めた野球。3年間ずっと補欠。

今日は高校生活最終戦。甲子園は無理だったけど、勝てば県3位の成績になる。


試合は9回裏2アウト、我が校が1点ビハインド。しかし、全ての塁にランナーが居る。

3塁ランナーが帰れば同点、2塁ランナーが帰ればサヨナラ。

そんな中、監督は俺を代打に出した。


監督からは「お前は誰よりも練習してきた。だから、胸張って行け!」なんて言葉をくれた。

俺は今、強打者の気分だ。誰にも負けない。

見てみろ、相手ピッチャーもビビってる。見たら分かる。


打席に入り、ピッチャーを見据える。ピッチャーが首を横に振る。1度、2度……ようやく頷く。

ピッチャが振りかぶり、白球をキャッチャーミット目がけて投げる。



……はずか、その白球は俺の方へグングン向かってくる。


デッドボールHit by pitch!」

審判の声がこだまする。俺は脇腹に食らった白球で身体が崩れる。

うなだれる相手ピッチャー。喜ぶ我が校応援団。喜びながら心配するチームメイト。

俺は無意識にガッツポーズをし、そのまま記憶が消えていった……。

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