第75話「元勇者と陽キャは相容れないので潰します(確定事項)」


 教室に入ると黒板には”人でなし”と書かれていたり、相変わらず新聞のような会報が貼られていて学習能力が無いのがよく分かる。見ると金田は俺達が来たと同時に解法されて、俺はため息をつきながらスマホに呟いた。


「はぁ……ガイド。手を抜こうとも考えていたが、思いっきりやれ」


『分かりました。第一弾として例の動画を公開します』


 スマホをポケットにしまうとセリカが広報を剥がしモニカが黒板消しできれいにした。そのまま俺達四人が席に着いて数分後、教室中が一気に騒がしくなった。


「これって……」


「うっそ、マジかよ」


 予想通りとはいえ本当に朝からスマホしか見てねえな現代人。俺みたいに友達いない人間のためのツールがスマホなんだよ。友達いるなら朝からポチポチすんな。


「おいおい快利!! これ見ろよ」


「なんだよ金田……俺はルリと姉さん達とモニカとセリカと慧花のデートの日程組むのに忙しいんだ」


 これは本当で今度のシルバーウィークは六日間休みが有る。俺は何気なく『六日も有るなら皆と遊べる』とか陰キャにあるまじき言葉を放っていた。結果、俺の六日間の予定は全て埋まってしまった。


「そうか、お前、陰キャから六股野郎に……ってそうじゃねえ、これだよ。これ」


「何だよ……へ~、面白そうな動画が上がってるじゃないか」


 わざと大声を上げる。夏休み明けから俺は、ずっと勇者モードだから堂々としている。バイバイ陰キャな俺。そんな事を思いながら動画を大音量で再生した。


『完璧だ、翔子。いいネタだ……陰キャでボッチは最近のトレンドだからな』


『うん。お兄ちゃん、コイツ陰キャボッチの癖に変な理屈で文句言うから、やっちゃってよ』


『部長、この秋山、ボッチ過ぎて情報が集まりませ~ん』


『コイツはイジメられてた以外は最近イメチェンしてイケメンになってから調子乗っててムカつくのよ。私が情報集めるから』


 これは昨日の内にフラッシュドラゴンが見つけた動画で、IT部の会議の光景がそこには映っていた。


「ここって、放課後の学食じゃね?」


「あっ、本当だ。四時になったら閉まってるはずなのに」


 他のクラスの連中が騒ぐ中で俺がわざとらしく金田に言った。注目の的だな、勇者モードじゃない夏休み前の俺だとビクビクしていただろう。


「もしかしたら、防犯カメラに映っていた映像が流出でもしたのかな?」


「カイ、それって……どう言う事なのっ!?」


 金田はポカンとしてるのにルリは役に入り過ぎている。さすが俺を欺いてイジメをしていた演技力だ。芸能界の演技指導ってすげえ。


「あ、ああ。実は聞いたんだ俺ともう一人の姉の由梨花姉さんが盗撮された動画も防犯カメラの動画が流出したんだってさ」


 そう発言した瞬間に教室の隅でガタッと大きな音がした。週明けの月曜日に朝から逆ハーレム状態の河西と取り巻きの男共だった。


「おや~、河西翔子さ~ん? どうかしたのかな?」


 だが奴が何か言う前にチャイムが鳴り担任が入って来た。今日は随分と早いのが気になったがベストタイミングだ。





 そして昼休みに入っても嫌がらせは続く。ガイドは授業中にも動画をアップロードし続けている。もちろん乗っ取ったIT部のアカウントからでバレることは万に一つも無いフラッシュを捉えるには凄腕のハッカーでも連れて来ないと不可能だろう。


「秋山……くん話が」


「俺は無いな。さて、そろそろ時間か」


 河西が話しかけて来たが……もう遅い。俺が言った瞬間に校内放送が流れた。それは生徒の呼び出しで目の前の女、河西翔子の呼び出しだ。


「あんた、まさか!?」


「早く行った方がいいんじゃない?」


 さらに名前が呼ばれたのは河西の取り巻き連中だった。河西を含め四名が呼び出され教室を出て行く、そして全員お約束のように俺を睨んできたが完全無視。


「さぁ~て、楽しい昼食だ。飯食おうぜ」


 俺が声を上げると止まっていた教室の時間が動き出す。別に魔法も何も使ってないが周りの生徒が一斉に動き出した。金田が俺を王様とか揶揄する気持ちも分かった気がしないでもない光景に気分が悪くなった。





「初日は上々、何日で音を上げるかと思っていたが一日で終わりそうだな」


『そうですね。私の想定で、この世界の人間なら三日は持つと思ったのですが』


 そう言って同意するガイドは河西兄妹のSNSの裏アカウントを学内ネットワークに公開していた。さらにIT部の過去の悪行も晒していく。ネット社会って怖いね。


「えっと、ガイドさん。つまりどう言うこと?」


『はぁ、足りない頭で少しはお考え下さい瑠理香様。現在の勇者カイリは異世界基準で動いています。つまり向こうでされた軽度の嫌がらせを敵に行使しています』


「え? 向こうでもネットとかスマホが有るの?」


「違うよルリ。向こうでは貴族の噂話から徐々に民衆へ伝播させ政敵を失脚させたりとかが基本で俺は応用しただけさ。そこら辺は俺よりもセリカの方が詳しいよ」


 セリカが貴族の嫌がらせの実例を話すと一気に顔色が悪くなっていくルリ。本場の貴族ほどじゃないが俺がやっている事は今言った事がメインだ。世界が変わっても人間のやる事、そして人間の嫌がる事は変わらない。

 その後、河西たち呼び出された者たちが教室に戻る事は無く、帰りのホームルームで無期限の停学になった事が発表された。


「そうだったのか~。まさか犯人が河西だったなんてな」


「でも、盗撮とか怖いですわね……動機は、そう言えば動画で自白してましたわね」


 俺とセリカが大声で話しモニカとルリが相槌を打つと瞬く間にクラス中が騒ぎになる。担任も途中までは止めようとしたが諦めて騒ぎの中にいた。そして最終的に学級崩壊気味にホームルームは終わり。解散となった。


「ね、ねえ秋山くん」


「あ? なんだ女子Aか。どうした?」


「カイ、横山さんだから覚えてね」


 ルリが横から言って来るが頷くだけで覚える気は無い。この女子Aは確かルリと飯食ってた片割れで女子Bこと河西と仲が良かった女だ。


「翔子を許して欲しいんだ」


「は?」


 俺はそこそこ間抜け面をしていたが、目の前の横山さんなる人物は俺の都合などお構いなしに話し始めた。


「あの子ってさぁ――――」


 話が長いので要約すると調子に乗っただけだから許して欲しいとのことだ。十分以上スピーチをしていたがその程度の話だった。途中から話が脱線しクラスが一緒になってからの親友だから放っておけないとか、俺の態度も問題が有ったとか色々言っていたが興味が無いのでザックリとしか聞いてない。


「で?」


「いや。だから、ここは――――「ええっと横山さんとやら。色々と話が見えてないようなのでいいですかね?」


「どういう意味よ!?」


 気が付いたらクラス連中が集まり出した。俺の横で勝手にセコンドに付いた金田に聞いた話によると横山は、エリ姉さんがクラスそのものを名指しで批判した後から女子Bこと河西とは違う意味でクラスをまとめていたらしい。


「ええと横山さん? 学級委員さんすか、まずは今年の四月からルリがイジメをしてたのを見逃していた分際で事実が見えてるとか平然と言えるよな?」


「そ、それは許されたんじゃ――――「いや俺はルリしか許してないって言ったんだが? あと俺はルリのこと好きだから許しただけだから」


 そう言うとルリに抱き着かれて背中に柔らかい感触。姉さん達が大き過ぎるだけでルリも普通に大きいから抱き着かれると困る。ちなみに今の話の”好き”とは親友としての好きなのだが一々言う余裕なんて無い。


「で、でもウチらも――――「それと今回も俺は被害者だ。最初に公開された動画と黒板の広報、俺の姉さんとその友人が勝手に写真や動画撮られて晒されたんだが?」


「そ、それがどうしたのよ。スマホで動画撮るのと同じ感覚じゃない。別に恥ずかしい動画じゃないんだし」


 これだからリア充の女子高生はと俺は盛大にため息をついた。俺なんか友達にスマホを向けた事なんて一度も無いんだぞ。元陰キャボッチ舐めんなよ本当に友達居なかったんだからな。


「いや、相手の許可取って無いなら普通にアウトだから。無許可撮影したらアイドルのライブなら外につまみ出されるし、最悪の場合は肖像権の侵害とかそういう系で訴えられるらしいから」


 そんなことが本当に有るかは知らないけど盗撮は御法度だし、ライブを盗撮してた奴らがスタッフに連れて行かれるのを見た事も有る。

 後ろで俺に抱き着いたままのルリも真剣な顔をしてたので隙を突いて上手い事引き剥がすことに成功した。


「は、はぁ?」


「RUKAさん追い続けて早三年、そういう奴らは五万といたからな、その度に警察に連れて行かれてたんだ。簡単な注意から留置所とかで一晩とかも有ったとオタク仲間に聞いた事もある」


 そうやって話していく中でクラスの空気が変わり始めた。最初は「このドルオタ陰キャボッチ何言ってんの?」的なクラスの雰囲気が徐々に変化してきた。

 そもそも高校生にもなって盗撮が犯罪だと認識してないとか正気なのかと精神年齢二十四歳の元勇者は思ってしまう。


「だから河西が良い奴とか調子乗ってたとかそういうのは関係ない。俺が知ってるのは誰かがアップロードした動画で何の関係も無い俺の姉さんと、その友人が盗撮されたっていう事実だけだから」


「でも、翔子だってかわいそうなんだよ。クラスを良くしようと――――」


 あ~、これ面倒くさいパターンだ。俺は呆れて金田を見ると奴も頷いていた。


「クラスを良くするためなら犯罪してもいいのか? あと黒板に貼られてたのを剥がそうとしてたのは金田だけだ。その時点で、このクラスの本質は何も変わってないのは明白だろ?」


 どうよ俺の完璧な論破。ルリやモニカは微妙な顔をしていたがセリカは俺と目が合うと頷いて自信を持っていたら目の前の横山は金切り声を上げていた。


「だからウチらはそういうんじゃなくてぇ!!」


「あと横山さんは何でそんなに庇う? もしかして共犯ですか?」


 だから俺は奴の言い分を遮ってわざと煽る。金田は呆れ顔をしているがガン無視する。前回見逃したのに再び来た時点で許すなどという選択肢は無い。


「は、はぁっ!? 違うから私は親友だから――――」


「親友なら庇うんじゃなくて叱るか諭すかすべきじゃない? 違う?」


「ああっ、もうっ!! ああ言えばこう言う、だから陰キャなのよ。あんたが翔子たちをチクったんでしょ!! だから許してってお願いしてるんじゃない!!」


 我慢の限界が来たようで、お願いする態度じゃないのがウケる。こういう場面で感情的になった奴は八割負け確なんだよ。しかし俺はすぐに別なことを思いついてしまった。


「は? 今度はも無いのにをチクった? やっべぇ、笑えるんですけど横山さんセンスいいね~」


 ここで予想外の出来事が起きた。俺の発言で一瞬にしてクラス中が固まった。目の前の横山ですら怒りを忘れて真顔で俺を見た。やめて、そんな目で見ないで勇者ジョークだよ? 向こうの貴族ですら苦笑いしたんだから真顔は止めて。


「快利兄さん、それ面白くないです」


「快利にユーモアのセンスは有りませんもの」


 モニカとセリカにまで言われるとは、最後の希望のルリを見たが目をそらされた。泣きたい。そんな俺の肩をポンと叩いて振り向くと金田に首を横に振られた。


「味方なんて居なかった」


「ふざけんな!! なんで他のクラスメイトとそう言うのが出来ないの!!」


 錯乱した横山が騒いで一気に俺の心は冷え切った。そしてイラっとした。どの面下げて言ってんだろうか、この女。


「いや、出来るわけ無いだろ。お前ら俺のこと見捨てただろ? それともイジメられる側にも悪い所が有るとか言う系ですか~?」


「ちがっ、私は――――「お前のルールなんて知らねえから。俺のルールは大事な人が許してくれって謝れば許すけど他人のお前らはシラネってスタンスだ」


 これは姉さん達を始めルリや義妹になった女の子に適用している俺ルールだ。何度も言ってるが好きな物は好きだし嫌いなものは嫌いだ。

 現代社会でズレていても俺は勇者生活七年間の失敗を生かし以降はこのスタイルで生きて行くから変える気は一切無い。好きな事をして生きて行く。どこかで聞いた安っぽいフレーズだが俺は大事なことだと思う。


「そんな自分勝手なこと――――「こういうのも個性って言うんだろ? 自分と違うから同調圧力とかマジで恐いんですけど~? 陽キャこわ~い」


 陽キャでもこのクラスにいないDQN系、またはウェ~イ系と呼ばれる奴らと違いコイツはクラス皆が仲良くとか秩序を守る真面目系だ。そんな真面目ちゃんは煽るに限るよなぁ?


「あんたには人を思いやる気持ちが――――「言ってて恥ずかしくない? そんなの気持ちあったらイジメなんて起きないから。ルリを止められなかった分際で何を言っても手遅れなんだよ」


 こっちは被害者なんだから永遠に言い続けてやる。勇者の心得『アドバンテージは死ぬまで使い潰せ。使えなくなったらポイしていいよ』だ。


「過去は消せないし消えるもんじゃない。その上で過去をどうするかの決定権は加害者には無い。有るのは被害者だけなんだよ。ところで横山さんとやら」


 俺は話しながらスマホをポチポチしていた。相手はもちろんガイドだ。面白い情報をフラッシュが持って来た。目の前の女の情報だった。


「一昨日の土曜日の十三時過ぎ、どこで何してた?」


「は? いや、その時間は、はっ――――「大人の人と会っていなかった~? サラリーマン風の男性と、場所は、最寄り駅から三駅離れた――――」


 俺が続きを言う前に奴が叫んだ。恐らく俺が決定的なことを言うと思ったのだろう。そこまで鬼じゃないさ。


「止めて!! そんなこと、あっ、あんた何者なのよ」


 まさかホテル街にいたとは俺でも言わないさ。お小遣い稼ぎが大変だったんだろう。でも売りをやってる女子高生って、どこかファンタジーだと思っていたけど身近にいるもんだ。


「なるほど、快利その辺で止めとけ。マジで」


「分かってる金田、で? 誰かまだ俺とレスバする奴いる?」


 俺の一言で完全に勝敗は決した。これで俺にイチャモン言ってた連中は全滅かな。そして再度女子Aこと横山を見ると彼女は脱兎の如く逃げ出した。





 そして俺達一行は教室の後始末を金田に任せ生徒会室に報告に行くと生徒会の二人とエリ姉さんが待機していた。


「快利、どうやら無事に終わったようだな」


「うん。エリ姉さん。正直、今回は俺が動く前にフラッシュとガイド、それと学校側が潰しちゃったから拍子抜けだよ」


 今回は俺がチートというよりも周りがチートでヌルゲーだった。学校への根回しは生徒会の二人だし、証拠集めはユリ姉さんの眷属のフラッシュドラゴン、そしてガイドがスマホから動画をアップしまくっただけだ。

 エリ姉さんの宣言もクラスの連中を震え上がらせるのに効果が有った。新学期からの一連の面倒なクラスの陽キャ共を潰すのは俺は何もしてないに等しく、せいぜいレスバしたくらいだ。


「むしろ俺はドラゴンの問題メインだったからさ……」


「ドラゴンの問題は世界の危機と言われたしな。むしろ学校の問題程度なら私達が何とかしなくては姉としても情けないだろ?」


 そう言ってエリ姉さんは俺の傍に近寄ると背伸びをして頭を撫でる。こうやって褒められるのが最近は増えた。昔は木刀か拳だったので凄い照れ臭いけど嬉しかった。


「や、やめてよエリ姉さん。皆の前だからさ」


「ふふっ、後で私の部屋で二人っきりで褒めてやろう」


『勇者カイリ。その場合恐らく異世界での宿願の一つ童貞卒業を実現出来ますが、お勧めできません』


 気のせいだろうか、最近、無機質だったガイドの音声が変わっていた気はしていたがスマホに移したらより顕著になった気がする。


「そ、それはダメ!! カイの童貞は私のものだから」


「こちらの世界では初めては貴重なのですね。取っておいて正解でしたわ」


「そうですねセリカ様!!」


 止めて、ここに男の子は俺一人だよ。それに俺が童貞じゃないという発想は……無さそうですねこの女共。そうだよ異世界でも捨てられませんでしたよ。


「家でのアドバンテージも無くなって来たからな……やはりあの時に無理やり奪っておくべきだったか」


『勇者カイリ。やはり夜は結界を張るべきです。もしくは……これは、何者かがここに来ます。警戒して下さい』


 そして扉がノックをされた。エリ姉さんとルリそれに黒幕会長以外は全員が即座に戦闘態勢に入った。この部屋には俺達の入室と同時に百合賀が結界を張ったからだ。俺ほどじゃなくても、この世界で結界の施された部屋を一般人が知覚する事は出来ないはずだ。


「なるほど、つまり……ここに来るのは魔力持ちと言うわけか?」


 俺の説明で理解したエリ姉さんに頷いて返事をした瞬間、生徒会室のドアがドロリと溶けた。木製の扉が腐るようにして溶けて入室したのは意外な人物だった。


「酷いじゃないか秋山、クラスの王様がこんな所で結界なんてダメじゃな~い」


 それは俺のクラス担任でルリと黒幕会長は困惑しているが俺は逆に冷え切って冷静になれた。あまりにも迂闊で何で気付かなかったと過去の自分をぶん殴りたい。


『警戒して下さい。勇者カイリ。敵は――――』


「分かってるガイド。いつからだ!? いつから俺のクラスに入り込んでいた!! ポイズンドラゴン!!」


 俺は聖剣に聖魔術を付与して奴に叩きつけたが効いていない。さすがは毒の竜。しかし表面は剥がれて毒が噴き出す。やつの毒は普通の毒以上に恐ろしい効果が有る。


「あなたがこの世界に渡ってからずっとよん。お前が魔王と戦っていた時や女とイチャ付いてる間にブラッドとアタシはここの人間達を苗床にしてたってワケ」


 つまり俺が戻って来てすぐにコイツらは動いていた。俺も弱体化していたとは言え迂闊過ぎる。そもそもドラゴン七体を体にくっ付けて戻るという失態を犯しているのを最近知ったのも問題だった。


「どうしてすぐに俺を狙わなかった!!」


「決まってるじゃない……アタシの毒が、この学校にぃ、満ちるまで待ってたに決まってるでしょおおおおおおお!!」


 奴が言うと部屋全体が異様な瘴気に包まれ百合賀の結界が完全に崩壊した。そして目の前の担任の体がグズグズに溶け出し奴の本性が現れる。


 俺はエリ姉さんとルリを抱き抱えて窓から外に飛び出す。モニカもセリカを抱えて続き、百合賀も四天王モードになって翼で黒幕会長を庇いながら脱出していた。


「逃がすかよおおおおおおお!! 腐り果てろおおおおおおお!!」


 校舎から出て来た形容し難い物体が黒と白を基調としたドラゴンに変化する。前と戦った時と同じ不気味なドラゴンだ。奴の出現と同時に校舎の一部が溶け、飛び出した先の校庭も徐々に青紫色に変色し地面も溶けていく。


「ポイズンの一番厄介なのはあらゆる物体を腐らせ溶かす能力……ガイド!!」


『心得てます勇者カイリ。提案が……有ります!!』


 まさか陽キャを討伐したら裏から毒を吐く竜が出て来るなんて思わなかった。だけど、やっと勇者らしい活躍が出来そうだ。

 やはりレスバの強い勇者よりも剣と魔法で戦う勇者の方がらしくは有るな。俺は勇者の装備を固めて全員を守るように構えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る