第52話「夏休みデビューに成功した奴がいるとか誰のことだよ?」



 夏休み最終日、なんとか昨日の夜に宿題を終わらせて今日はゆっくりしようとしていた日、さすがにバイトは無く異世界に行く気も無かった。例の記者やホステスを異世界に放り込んで一週間以上が経っていた。


「ま、運が良かったら生きてるかな? 絶望的だろうけど……」


「どうしたんですか快利兄さん?」


 部屋のドアをノックする音に振り返るとモニカが居て声をかけられた。どうやらもう昼飯らしい。一階に降りていつも通りで昼食を食べる。


「え? 六人?」


 今日も親父と母さんは二人揃ってホテルで缶詰めだ。あの日以来、親父を見る目が色んな意味で変わったが同時に両親の仲が良い姿を見るのは単純に嬉しかった。そんな事より我が家は両親を除けば男は俺一人で姉二人、妹二人の女所帯なはずだ。


「エリ姉さんとユリ姉さんが居て、ルリが居て、セリカとモニカが……って、サラッと何で混じってるんだよルリ!?」


「カイ? 忘れたの? 今日はセリモニの服とか色々買いに行くんだよ?」


「セリモニとは私たちの事ですの? 瑠理香さん?」


 なんか昔流行ったアイドルみたいな略し方だな。とか思って二人を見るとモニカはともかくセリカと瑠理香は言い合いをしている。姉さんたちを見ると困惑顔をしながらも笑顔を浮かべていた。


「ま、そう言うわけよ。私一人じゃセンスが偏るから瑠理香にも来てもらったのよ。他は絵梨花はセンスがアレだし二人はこっちの世界の服にまだ慣れてないからね」


「そっか、じゃあ何で俺が呼ばれ――――「そりゃ荷物持ちに決まってるでしょ?」


「はいはい……分かってたけどさ~」


 ユリ姉さんにそう言われて俺は即応式万能箱どこでもボックスの容量を確認するが基本的に無限だった。向こうにいた時は最初は箪笥一つ分だったのに今は広大でガイド音声が言うには東京ドーム十個分までは確認出来ているらしい。


「ねえ、カイ少しいいかな?」


「どうしたの? ルリ?」


「カイってさ……家でもその格好なの?」


 その格好って、今の恰好は前にデート用に買った服の一つだけど変なところは有るのだろうか?


「うん。腹筋とか、そのぉ、胸の先……とか見えてて凄いセクシーじゃなくて!! なんでそんなに小さい服を着てるの!?」


「そう言えば快利、お前、背が伸びていたんだな!?」


 ルリの指摘で今さら気付いた感じのエリ姉さんと頷いているユリ姉さんと義妹二人。気付いてたなら言ってよ。え? 俺は全然気にして無かったぞ!! 夏休み中はパンツとTシャツそれとジャージが基本だからな!!


「カイはさ……基本はその、カッコいいんだよ? だから、服装もね?」


「この服ってRUKA、つまりルリとデートするために駅前で買った服なんだけどな……」


 あの時は頑張ったな、店員さんにも協力して貰って必死に釣り合うデート服をコーディネートしてもらった。


「えっ!? じゃあそれは額縁に入れて私が家に貰って帰るからカイは新しい服を買おう、私が全部選ぶからっ!!」


 あれ? 今回はセリカとモニカの服とか学校の物とか色々選ぶんじゃ? そんな事を考えながら急遽、俺の買い物まで追加されてしまった。今さらサイズ変更が可能な調整の魔術が使えるとは言い出し辛い雰囲気だった。





「私の行きつけ……は、セリモニ向けだから、男の子の服か、実は選んだ事無いんだよね、由梨花さんは男性向けの店とか分かりますか?」


「いいえ、そもそも男の子向けの店とか知らなかったわ。地道に探すしか……」


「じゃあさ……実は俺の行きつけ有るんだけど、どう?」


 そう、俺には行きつけの店が有る。ルリとデート用に選んだ店だ。幸いスタンプカードも有るからそれを見せてドヤ顔をする。


「そっか、私が持ち帰るカイのお洋服を買ったお店に行けばいいんだ!!」


「あの瑠理香さん? 結局はカイリの服は持ち帰るんですのね……」


 セリカが若干困惑していて俺も思ったけどルリの中では確定事項のようで反論出来なかった。さっきまで着てた服とか全部持って行かれるんだろうか?





 店内に六人で入ってすぐに視線が凄かった。そりゃ五人の美少女に囲まれてればこうなるだろう。そしてこの間の店員さんが俺を見て少し困惑した後に近づいて来た。


「いらっしゃいま……ああっ!! この間のイケメン君? なんか大きくない?」


「あれから背が伸びまして……そうだ、お姉さん。また服を――――「カイの服は私達が選びます!!」


 なぜかルリが全力で妨害に入っていた。店員さんは頬を引きつらせながら目で言っていた。これはどう言う状況なのかと。俺も目線で謝った。本当にごめんなさい。なるべく静かにさせますと……。


「では本日はカイリに会う服を見繕うと言う勝負内容で?」


「そうよ!! セリカ!! カイに一番似合う服は私が決める!!」


「私も及ばずながら由梨花姉さんと一緒に選びます!!」


 料理組は二人一緒で選んでくれるらしい。そしてエリ姉さんは頑なに俺の傍から離れなかった。エリ姉さん以外が店内に散らばると店員さんが再び近付いて来た。


「お客さん、本当に背が凄い伸びましたね。それにしてもデート、上手く行ったみたいじゃないですか~。おめでとうございます」


「え? あ、ありがとうございます」


 見ると店員さんは男性恐怖症で一人だけ今回は不参加のエリ姉さんを勝手に彼女だと勘違いしたようだ。最近は慣れて来たけどエリ姉さんの胸が腕に押し付けられて控え目に言って最高です。


「お隣の彼女さん? とも仲睦まじくて」


「あっ、いや、私は…………はっ!? そうです!! 私が彼女です!!」


「ちょっ!? エリ姉さん!?」


「やっぱりぃ~お似合いですぅ~!!」


 なんかエリ姉さんが事実を歪曲し始めたんだが……ちなみに当然のように訂正に来たユリ姉さんに説教されて姉だと言って落ち着いた。その後、セリカは全身真っ赤な服を一式持って来たので買わずにルリの選んでくれた少しお値段の張る良さげな服を購入する事になった。


「お客様センスありますね~? 合わせ方とかセンスが、まるでコーディネーターが合わせた感じみたいです。もしかして服飾関係の学生さん?」


「えっと、母がそう言う関係で……」


「なるほど、前に私が学生時代にファッションの勉強に参考にした人とコーデが似てたんで~」


 ちなみにそれもその筈で、RUKA状態のファッション担当の人がその人物だったと後からルリに教えられた。世間は意外と狭いもんだと思いながら俺はその場でその服を着せられた。


「う~ん。なんか装備として貧弱なんだよな……収納用のポケットも少ないから武器も仕込めないし……」


「カイ……異世界に行ってたから実用性重視なのは分かるけど、ファッションってそう言うのじゃないからね?」


 言いたい事は分かるんだけど、回復薬や防御用のアクセサリを装備出来ないのは少し不安になってしまう時が有る。異世界あるあるだね。と言ったら異世界組から即座に反論が来た。


「いいえ。向こうでも女性はなるべくファッションは着飾りたいのが本音でした。ですが戦況がそれを許さなかったのです。殿方中心に回っていたせいでファッションなんて二の次だっただけです」


「そうですわ。せっかくゆとりのある世界に来たのですから楽しまないと!!」


 そう言うと今度はルリのおススメのブティックに行く事になった。予算は母さんいわく、親父のお小遣いから全額出資されるらしく俺へのバイトのボーナスらしい。その証がこのカードだった。


「プラチナカード……これがあればほぼ無制限なの?」


「ああ母さんがそう言ってた。義父さんのカードだそうだ」


 エリ姉さんが母さんから渡されたらしい親父名義のカード、ありがとう親父……大事に使わせてもらうよ。ちなみに俺の服もこのカードで購入した。当初はルリが出すと言って聞かなかったが親父と母さんの意思と言って諦めさせた。


「この日のために私もスマホにチャージ出来るだけギャラ分のお金入れて来たんだから、せめてペアの指輪かペンダントか最低でもバングル、あ、でもこの腕輪は外したく無いから、ペアルックのシャツとかにする?」


 取り合えずルリの目がヤンデレモードになりつつ有るので落ち着かせようと考えてる内に今度は親友に戻った記念のペアリングを買いそうになったり、明日から一緒に登校する記念のペンダント(自分の写真入り)などを購入させるのを必死に止めた。


「ルリ、別に記念品なんて無くても俺は……」


「不安だもん、すっごい不安だから何かで縛っておきたいの!! また遠くに行かれたら嫌だし、異世界とか行って欲しくないから!!」


 やはりルリを不安にさせていたようで、この間の異世界への拉致はルリの不安感を煽るのには充分だったみたいだ。


「ま、まあルリが不安になるなら、取り合えずこれ貰っておいてくれる?」


「イヤリング?」


「そ、向こうの世界の職人に作って貰ったんだ。一点物だし良ければ――――」


 言い終わる前に奪われて両耳に付けていた、勇者でも気迫負けする狂気的な愛に相変わらずこの状態のルリは少し怖い、でも振り返って笑いかけて来るのはただの可愛い女の子で本当に色んな意味で怖い。


「それは誓約の耳飾りイヤリングですか? カイリ?」


「ああ、やっぱセリカは知ってたか」


「ええ、しかしなるほど……いざとなったら暴走する瑠理香さんにそれを付けるのは正解かも知れませんわね」


 誓約の耳飾り、いざとなったら本人の意思を無視して一定時間支配下に置く事が出来る本来なら従者に主人が付けるもので王家の職人だけが作る事を許された耳飾りである。


「モニカも欲しがってましたからね。あなたに付けて欲しいと愚痴ってましたわ?」


「そうなの?」


 コクコクと横で頷いているモニカを見て今更ながら俺の知り合いの女の子は基本重い子が多いのかも知れないと思って、やっと落ち着いたルリにセリカとモニカの服や学校で使う雑貨やらを見てもらいながらその日は過ぎて行った。そして俺の怒涛の夏休みは終わってしまった。





「じゃあ快くんとエリちゃんは後から来てね~。セリカちゃん、モニカちゃんは先に先生方に挨拶に行くからね~!!」


「お先に行きます快利!!」


「カイリ兄さん。同じクラスだそうなので後ほどお会いしましょう」


 そう言って母さんの車に乗せられ二人は先に行ってしまった。そしてエリ姉さんには対策として例のシャツとさらに恐怖耐性を上げるネックレス。タリスマン的なものを夏休みの間に作っていた。

 昨日までエリ姉さんは頑なに使わなかったが今日まで症状が直らなかったので付けて行ってくれるらしい。これで一先ずは一学期の頃のエリ姉さんのままで違和感は無くなった。


「ふむ、自然と力が湧いて来た。それに快利に抱き着かなくても歩けるようになった!!」


「学年違うからね、一応は生徒会の二人にも話はしておいてね? 万が一の時には助けになってくれるだろうし」


 そんな話をしていたら途中の神社の前で待っていたのは予想通りの人物だった。


「カ~イ!! おはよう!! 待ってた!!」


「ルリ、おはよう、耳飾りは見つかったらマズイから上手く隠そうな?」


 そう言って元気に返事をすると三人で電車に乗って高校に到着する。相変わらずな感じで数ヵ月前は、正確には七年半前は来るのが億劫になっていたけど今は違う。取り戻した親友と色々あったけど仲直りが出来た? 義姉も居る。

 ちなみにもう一人の義姉は今日も大学が夏休みなので惰眠を貪っている。今日は午後から路上検定とか言っていたので少し心配だ。


「さて、行くかな……」


「大丈夫だよ。ここからは私がクラスでいつでもカイの味方だから!! もう絶対に辛い思いはさせない!!」


「お姉ちゃんも昼休みに顔を出すからな、じゃあ行くぞ快利!!」


 前みたいに卑屈な陰キャ学生でも無く、元勇者としてでも無くて秋山快利として俺は九月一日に校舎に向かって歩き始めた。注目されている、やはりエリ姉さんの微魅了が原因か? それともルリ目当てなのか? そんな事を思いながら俺は下駄箱でエリ姉さんと別れ二人で教室に向かう。視線がしつこい。


「ふふっ、注目されてるね。予想通り!!」


「ルリは一学期にはカラコン取ってたのに、やっぱ注目されると思ってたの?」


「違うから、ま、教室入ったら分かるよ。注目されてるのはカイだからね?」


 そう言ってドアを開けて一緒に入ると教室には人はそこそこ揃っていた。まずは俺の横のルリを見て次に俺を見て固まっていた。そのリアクションを数回されて俺は自分の席へ向かう。ルリも俺の後ろの席なので後ろから付いて来た。そして俺が座った瞬間。


「「「えええええええええええ!!!」」」


「「「秋山なのかよっ!?」」」


 教室が怒号に包まれた。カバンを置いて後ろを向くとルリがニッコニコの笑顔でこちらを見ていた。


「ね? 言ったでしょカイ?」


「でも何でこいつら驚いてんだ?」


「カイが修行して戻って来て変わったのはど~こだ?」


 俺が戻って来て変わったとこ? 神刀や英雄化のスキルが増えたくらいじゃないかな、正直言うと分からない。


「背が伸びたの!? カイは夏休みの間で背が伸びて顔も凛々しくなって、ますます私好みになったの!!」


「ああ、そう言えば伸び盛りだったな俺の身長、あと顔は普通だろ俺?」


「そう思ってるのはカイだけなんだよね~」


 ルリはそう言ってくれるが俺は普通なはずだと思っているとルリと割と話していた女子が数名集まって来る。そして金田や一部男子も近づいて来る。


「お前、本当に秋山か?」


「そうそう、秋山……くん、その雰囲気変わっててさ……」


「はぁ、あのさ金田と陽キャ女子A。俺はルリと話してるから静かにしてくれ」


 こいつら何で友達面して話しかけて来たんでしょうかね? そもそも忘れてないからな? お前らクラス総出で俺をイジメてたから。


「あの、カイ……せっかくだから、皆とも……」


「ルリ、俺はルリとは仲直りした。俺も知らなかったとは言えルリを傷つけた。ま、それにしては過剰にやられた感は有るけど、それでも俺はルリを許した」


「うん。ありがと……あと、ごめんね」


「ああ、もう許したから良いんだよ。だ・け・ど、コイツらを、イジメに協力してたこのクラス全体を許すとかしてねえからな?」


 そう言って勝手に親しそうに近付いて来た奴らを睨むとそれだけで「うっ」呻いて怯ませる。俺と目を合わす事すら出来ない。向こうで鍛えた眼力だから、こっちの世界の学生ごときじゃ失禁ものだろう。


「夏休み挟んでもダメかぁ……」


 金田が今は俺より背が低いので少し見上げるように俺を見ていた。コイツは怯まないようで俺を見て来るが、男が見上げてもあれだからと塩対応は基本だ。


「当然だ。特にお前は一応は延べ棒の借りが有るとはいえ準主犯だしな?」


「じゃあ謝ればいいのか?」


「さあな? 自分で考えろよ」


「カイ、その……金田は私の指示だし、クラス全体で動いてたけど生徒会とかには反対はしてたし……」


 知ってるよ隠れ身の腕輪で見てたからコイツが反省してるのは知ってるよ。それに正直に言うと俺は言う程このクラスを恨んではいない。ただ興味も無いだけだ。単純に今さら関わってくるなと言うだけだ。


「手厳しいねぇ……ま、良く分かったよ。じゃあ一つ情報だ。今日は転校生がクラスに二人も来るぜ?」


「ああ、よ~く知ってるさ。身内だからな」


「はっ!? え? どう言う事だよ!?」


 このタイミングで俺のクラスならセリカとモニカしか転校生は有り得ない。二人とも事情が事情なので複雑な親戚と言う体で同じクラスになると事前に聞いていた。


「ノーコメントだ。ルリは気にせずに他のクラスメイトと話して大丈夫だよ。俺は今まで通りに陰キャでボッチを貫くさ」


「カイ、わたしは――――」


「何よそれ、悪者はアタシらなわけ?」


 ルリが何か言う前に遮ったのは陽キャ女子Aの横の女子Bで頭が茶髪で、そう言えばルリと一緒に弁当食ってた奴だ。


「あのさ秋山さ、少しカッコよくなって背が大きくなって、それからイイ感じでイケメンぽくても……別に好みじゃないけど!! そうじゃないけどさ……一番悪いのは風美さんだったからアタシらはクラスでの立ち位置的に従ってただけじゃん」


 言い分はよ~く分かる。だけど女子Bは決定的に間違っている事が有るんだよな。と、俺が言い返そうとしたら金田が割って入って来た。


「あ~これはそう言う感じかぁ……そら夏休みデビュー大成功だしな秋山と瑠理香は二人揃って」


「えっ!? 秋山瑠理香!? ま、まだ早いよ金田。将来的にはそうなる予定だけどさぁ……ふへへ」


 秋山瑠理香って一応は金田はちゃんと区切ってたんだけど聞こえて無かったのかな? 最近になって知ったけどルリは俺との事になると周りが見えない時が有るから良く見て無いと危険なのを最近知った。


「とにかく、風美さんが許されて巻き込まれたアタシらが悪いなんておかしいんですけど、ま、まあ秋山……君がクラスに馴染むなら――――」


「寝言は寝て言え。俺はルリが好きだから許しただけだぞ? お前らと一緒にすんなよ。そもそも中学からの親友の女子とただのクラスメイトが同列な訳ねえだろ?」


「カイ!? わたっ、私もっ!! す、好きだからね!!」


 クラス中がまたしても喧騒に包まれる中でルリにいつもの感じで告白された。ま、告白を保留してるからな、いまさら感は有るんだよね。


「ありがとルリ、返事は今度きちんとするからな? それとルリにはサシで謝ってもらって夏休み中に関係は修復した。ルリを庇うわけじゃないが、ルリは金田やら五人で俺をイジメてたけどクラスのお前らにイジメを指示はして無かった。お前らが空気を読んで協力してただけだろ」


「うっ、それは……」


「ルリが俺をイジメてた動機も聞いたから、むしろお前らを巻き込む事は積極的にはしない。つまりお前らは空気読みのために俺を無視したり、ヒエラルキーのスクールカーストのトップのルリに気を使ってゴマすりしてただけ。それを許せはさすがに虫が良過ぎる」


 ルリは俺に構って欲しくて独占欲と好意が暴走してああなった。つまりは俺を独占したがったから他人は極力近づけたく無かったはずだ。これはイジメを受けていた中でも特定の五人としか関わって来なかった俺がよく知っている。


「あ、あのね……皆にはクラスの雰囲気悪くしてたなら私が謝るから、ごめんなさい、もう変に威圧したりとかしないから」


 ルリが改めて頭を下げるが昔のような威圧感も芸能人オーラも出さないルリに急に強気になったクラスの連中は文句を言い出した。


「そんな、でも、おかしいよ!! 今さら風美さんだけズルい!!」


「そーだよ、俺達だって巻き込まれたくなかったんだ!! たまたま同じクラスでリア充達に睨まれないように必死にやって来たんだよ、それを少し協力しただけで俺らだけ悪者扱いかよ!! 主犯は風美だ!!」


 ルリは何を言われても耳を真っ赤にして耐えている。俺が悪者になれば問題は無いと動こうとした時にちょうど同じタイミングでドアが開け放たれた。


「愚かですわね!! さすがは庶民が集まる学び舎、少しは頭のいい人間が居るかと思えばこの体たらく、そしてそれは瑠理香さんも同じでしてよ!!」


「セリカ様、いいえセリカ姉さまに同意です。瑠理香さん、間違えたのは家でお聞きしましたが、それでも快利兄さんと居る事選ばれた以上は堂々とすべきです!!」


 そこには今朝、先に学園に連れて行かれたセリカ&モニカが居た。

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