#4-3「主婦やりながら、魔法少女もやってます!」

 ――あれは、確か小学一年生の夏。


 授業参観の日に、お母さんが『ママ友』を紹介してきたときのことだ。



「ほのりー。紹介するわね。お母さんの友達の、雪姫ゆきひめさん」


「こんにちは。ほのりちゃん」



 当時、かぶとの育児休暇を終えて魔法少女活動を再開していたお母さんは、今思うと学校でも浮いた存在だった。


 まぁ……「主婦やりながら、魔法少女もやってます!」なんてのたまう人がいたら、そりゃ誰でも引くよね。


 そんなわけで、わたしが入学して以来初めてできたママ友に、お母さんは必要以上にはしゃいでいたわけだ。



「じゃあ有絵田ありえださん、今度はこっちが紹介するわ。ほら、光篤みつあつ。挨拶なさい」


「あ、こ、こんにちは。ゆきひめ、みつあつです」



 黒髪のショートヘアに、くりくりとした瞳。

 睫毛はわたしなんかよりよっぽど長くて、ちょっと羨ましい。


 そんな、女の子っぽい顔付きをしたクラスメートの男子――雪姫光篤。


 彼と家族ぐるみで親しくするようになったのは、この頃からだった。




 それからの毎日。


 わたしのそばには、いつも雪姫がいた。



「ほのちゃん」



 薙子なぎこも含めて、幼なじみ三人でつるんでいることも多かったけど。


 雪姫とは学年が同じってこともあり、薙子以上に一緒にいる時間が長かった。



「ほーのりんっ!」



 小学校時代からの腐れ縁で。


 いつの間にか男の子から男のにジョブチェンジしちゃった、業の深い奴。


 迷惑掛けられることもたくさんあったけど。


 鬱陶しいときも山ほどあったけど。



 わたしが辛いとき、悲しいとき……あいつはいつだって、わたしの味方でいてくれた。


 そばにいてくれた。



 ――魔法少女だから一緒にいたんじゃない。



 わたしにとって雪姫は。


 大切な、大切な友達で。


 いつだって同じ時間を過ごしてきたから。




 ――やっぱり、あいつがそばにいないのは、落ち着かない。

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