episode178 再びリグノートへ!
夜になって代わりの偵察部隊と合流した俺達はすぐに山脈を出発して、リグノートの近くにまで来ていた。
「ひとまず、無事にここまで来れたな」
「そうね」
ザッハートに乗って上空を飛んで来たので、見付かること無くここまで来ることができた。
「それで、どうやって街に入るつもりなの? 絶対、警戒されてるよね?」
シオンの言うように俺達は警戒されているので、普通に街に入ることはできない。
さらに、裏口も閉鎖されているので、街に入る方法を考える必要がある。
「それについては既に考えてある」
だが、それに関してはこちらに来るまでの間に考えてあるので問題無い。
「どうするの?」
「アーミラに姿を変えてもらって、普通に門から侵入する」
侵入方法は至って単純で、アーミラに姿を変えてもらって普通に門から入るというものだ。
「でも、前に使ったハイスヴェイン家の組織の奴は使えないよね?」
「まあな」
しかし、以前使ったハイスヴェイン家の組織の者は公にも死亡したことになっているので、あの姿はもう使えない。
「じゃあどうするの?」
「新しい者を用意する」
だが、使えなくなったのであれば、新しい者を使えば良いだけの話だ。
「当てはあるの?」
「ああ、ルミナさんに調べてもらったからな。当てはあるぞ」
出発する前にルミナに連絡して、各組織の動きを調べてもらっていたからな。ちゃんと当てはある。
「そうなんだ。それで、その当てって何なの?」
「ルートライア家の配下の貴族の配下の裏組織の連中がリグノートに向かうらしくてな。それを狙う」
もちろん、狙うのは裏組織の連中だ。
適当なところから金で身分証を貸してもらうという方法も考えたが、密告されると面倒だし金も掛かるからな。
結局、裏組織の連中を潰して身分証と姿を奪うことにしたのだ。
「ルートライア家の配下の貴族の配下の裏組織……何かややこしいね」
「そこは気にするな」
「それで、どんな連中なの?」
「禁制品の取引をしている連中だ」
今回の
ルミナからの情報によると、麻薬類を専門に取引している組織とのことらしい。
「じゃあついでにその禁制品もいただいちゃう?」
「いや、
まあ仮に商品を持っていたとしても麻薬は処理に困るので、正直いらないのだがな。
「そうなんだ。それで、
「今いると思われる場所に向かっている」
もちろん、ルミナからの情報を基にして現在の居場所はある程度絞っているが、正確な場所までは分からない。
なので、その周辺を探してみるしかない。
「上空から探すの?」
「ああ」
「この高さから?」
「まあこの高さでないと地上から見られるからな」
この高さだと望遠鏡を使わないと正確に見えないが、これぐらいの高さはないと地上からこちらのことが確認されてしまうからな。ここから望遠鏡を使って地上を探すしかない。
「
作戦を決めた後にルミナからデータを送っておいてもらったので、それを既に三人の端末に送ってある。
「分かったよ」
「では、頼んだぞ」
そして、そのまま
「この辺りだ。全員、望遠鏡で地上を探してくれ」
それからしばらくして目的地近くの上空に着いたところで、シオンとアーミラに望遠鏡を渡す。
「エリサは持っているな?」
「ええ、持っているわよ」
そう言うと、エリサは自分で持っている望遠鏡を取り出した。
「では、早速探してみるか」
全員が望遠鏡を持ったところで、それを使って地上を探していく。
「ねえ、あれじゃない?」
と、探し始めてすぐにアーミラが何かを見付けたらしく、地上のある一点を指差して声を上げた。
「そのようだな」
その場所を確認してみると、そこには
「すぐに見付かったね」
「まあこの高さなら探せる範囲は広いからな」
今はかなり高い位置にいて、広範囲を探すことができるからな。すぐに見付かっても不思議ではない。
「それにしても、よく見付けたな」
「人がいたから見てみたら、たまたま一発で見付かっただけだよ」
「そうか。相変わらず視力が良いな」
普通はこの高さからだと人かそうでないかを判断することも難しいからな。
それが人であると認識できるだけで、かなりの視力があると言える。
「ふふーん♪ 凄いでしょ!」
そう言われたアーミラは自慢気にしながら気を良くする。
「周辺に他の者はいないな」
ここでその周辺を確認してみるが、近くに他の者は見当たらなかった。
「では、このまま少し離れたところに飛び降りるぞ。準備は良いな?」
「ええ」
「うん」
「良いよー」
「ザッハートはこのまま上空で待機していてくれ」
「グル……!」
「では、行くぞ!」
そして、闇魔法で姿を消した俺達は
「分かっているとは思うが、できるだけ死体は傷付けるなよ?」
姿のコピーを取る必要があるからな。できるだけ傷付けないように殺す必要がある。
「しかも、予備が無いから慎重にお願いね」
さらに、敵はちょうど四人しかいないので、うっかり死体を消し飛ばしたりしてしまうと面倒なことになる。
「分かってるよ」
「それで、どうする?」
このまま襲撃を仕掛けても良いが、できれば馬車もそのままいただいてしまいたいので、壊したり汚したりしないようにしたい。
「私とアーミラで敵を馬車から引き摺り出すから、エリュとシオンが仕留めてくれるかしら?」
「分かった」
「分かったよ」
「アーミラとシオンは前方から御者台の敵を、私とエリュは後方から馬車内の敵を片付けるということで良いかしら?」
「ああ」
「うん」
「それで良いよ」
方針が決まったところで、俺は両手に、シオンは右手に短剣を装備して構える。
「それじゃあ行くわよ」
「ああ」
そして、エリサの指示で二手に別れて同時に駆け出した。
「はっ……」
「行くよ!」
まずはエリサとアーミラが闇魔法で形成した鞭で敵を拘束して、そのまま馬車から引き摺り出す。
「はっ!」
そして、俺は両手に持った短剣で素早く三連撃を放って、引き摺り出された三人の敵の喉を斬り裂いた。
「……そちらはどうだ?」
「こっちも片付いたよ」
シオンの方を確認すると、そこには喉を斬り裂かれた御者をしていた男が倒れていた。
どうやら、こちらも無事に片付いたようだ。
「俺は馬車の中を確認してみる。エリサとアーミラは死体の処理を頼んだ」
「分かったわ」
とりあえず、コピーを取るのは二人に任せて、俺はその間に馬車の中を確認してみることにした。
馬車の中を確認すると、そこには保存食や自衛用だと思われる武器、紙が入った鞄などが置かれていた。
「これは……取引記録か?」
鞄に入っていた紙を確認してみると、そこには内容が暗号化された資料が入っていた。
暗号化されているのでその内容は分からないが、リストになっているので取引記録だと思われた。
(まあ見られたら困る物だし、暗号化されているのも当然か)
イヴリアが持っていた資料は本家に保存された物なので、暗号化されていないか復号された物だったが、これは連絡用に提出する物だろうからな。
途中で部外者に見られては困るので、暗号化されているのも当然だ。
(見たところ、換字式暗号っぽいが……解読は難しいか)
何と無く換字式暗号な気はするが、すぐに解読することはできそうに無かった。
単純なシーザー暗号なんかであれば何とかなりそうだが、流石にそんな単純な暗号ではないはずだからな。
(まあ解読する必要も無いし、解読はせずに持って行くだけにしておくか)
そもそもの話をすると資料の内容を知る必要は無く、解読する必要も無いので、内容は気にせずにそのまま持って行くことにした。
「他は……特に気になる物は無いな」
他にも何か無いか探ってみるが、特に気になる物は無かった。
「こちらは終わったわよ」
と、ちょうど馬車内を調べ終わったところで処理が済んだらしく、エリサがこちらの様子を確認して来た。
「何かあったかしら?」
「特に何も無かったな。まあ敢えて言うのなら、取引記録だと思われる暗号化された資料があったことぐらいだな」
「そうなのね。それじゃあ人が来る前に撤収しましょうか」
「そうだな」
そして、用が済んだところで荷物と馬車を回収して、上空で待機しているザッハートの元へと戻った。
ザッハートの元に戻ったところで、俺達はリグノートに向かっていた。
「リグノートでの調査は明日からだったよね?」
「ああ」
この後の予定としては今日は街の外で夜を明かして、リグノートでの偵察は明日の朝から行う予定だ。
この身分証を使うとルートライア家の者にバレてしまう以上、宿に泊まったりすることができないからな。街の中で夜を過ごすのは面倒なので、今日の夜は外で過ごす予定だ。
「とりあえず、最初は見付からないように行動することが優先だったよね?」
「ああ、そうだ」
隠密調査にも限界はあるので、暴れたり強引な調査をすることも考えているが、それはルミナの指示があってからだ。
まあバレてしまった場合は独断で暴れても良いとは言われているが、できるだけそうならないようには動くつもりだ。
「最優先調査事項はルートライア家の動向、特にオールドイスの動向の調査だ。状況を見て調査の内容は変えるので、臨機応変に動くぞ」
「分かったよ」
「はーい」
調査項目や優先順位についてはルミナから伝えられているので、基本的にはそれに沿って動くことになる。
「まあ詳しいことは休息予定の場所に着いてから話すか」
「そうね」
今、話しても良いのだが、取り急ぎ話さなければならないようなことでも無いので、落ち着くことができる休息予定の場所に着いてから話すことにした。
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