episode175 西の観測所への出発
翌日、今日も俺はエリサ達と共に会議に参加するために城に来ていた。
今回の参加メンバーは俺、エリサ、ルミナ、エルナ、レイルーンに国の関係者七人の計十二人だ。
「今日ここに呼んだということは、傭兵として雇う気になったようね」
「まあそういうことだ。ひとまず、座ると良い」
促されたところで、昨日と同じように席に着く。
「さて、ルミナの推薦でお前達を正式に傭兵として雇うことにした。これが契約書だ」
そして、王の側近の男は一枚の契約書を渡して来た。
「確認させてもらうわね」
渡された契約書をエリサと共に確認していく。
契約書には契約の期間や契約金の金額、契約中の行動はルミナに従うことなどが記載されていた。
「問題は無さそうだな」
「そうね」
契約書を隅々まで確認してみたが、問題は無さそうだった。
「では、これで契約を通しておこう」
「それで、今日の会議は軍事会議といったところかしら?」
「まあそんなところだ。とりあえず、契約が成立したことを伝えて来るので、その間に資料の内容を確認しておいてくれ」
「分かったわ」
そして、王の側近の男は契約書を持って部屋を出て行った。
「とりあえず、資料を確認するか」
「そうね」
このまま何もせずに待っているわけにもいかないので、言われた通りに資料を確認することにした。
「待たせたな。では、始めようか」
そして、しばらくして王の側近の男が戻って来たところで、会議が始められた。
「さて、資料の通りにお前達には斥候として敵の様子を偵察してもらうが良いな?」
「ああ」
「ええ、良いわよ」
俺達に与えられた最初の任務は西の山脈に向かった敵の偵察だ。
潜入や調査は得意だからな。恐らく、俺達の得意分野を活かせるようにルミナが割り振ってくれたのだろう。
「それでは、改めて戦略を確認をしていくぞ」
「ああ、頼んだ」
「ひとまず、各所の警戒を強めて敵の動きに備えて、襲撃が予想される国の西側にはエルナが率いる部隊を配置する。お前達はその部隊に同行して、偵察任務に励んでくれ」
「分かった」
「分かったわ」
敵は西の山脈に向かっていて、そちらから襲撃して来るだろうからな。
そちらに戦力を置いておく必要があるので、俺達はそのついでという形でエルナの部隊に付いて行くことにする。
「他はワイバスに置いている戦力の一部を西の街や村に移す。移す部隊は資料の通りだ」
もちろん、戦力も襲撃が予想される西側に集めておく。
「一応、聞いておくが、西の山脈に送り込まれたレグレットの戦力が陽動という可能性は無いのか?」
戦力の送り方があからさま過ぎるからな。西の山脈に送り込まれた戦力が陽動という可能性も十分に考えられる。
「その方面での調査もしているけど、今のところはその様子は無いわね」
「そうか」
「まあ何かあったときのために私達がいるのだから大丈夫よ。あなた達はこちらのことは気にせずに、自分達の任務に集中しなさい」
「分かった」
まあルミナやレイルーンに加えて『
ルミナの言うようにそちらのことは気にせずとも大丈夫そうだ。
「お前達の飼っている騎乗用の魔物についてだが、基本的にリトルバハムートはそちらで自由にして良いが、ミストグリフォンとワイバーンはルミナの指揮で動いてもらう。ただし、そのリトルバハムートも事態によってはルミナの指揮で動いてもらうが、それで良いな?」
「ええ、それで構わないわよ」
ルミナであれば安心して預けられるからな。その点は問題無い。
「物資と運搬用の部隊の手配は済ませてある。出発は明日だ。それまでに準備を整えておけ」
「分かった」
「分かったわ」
「では、今回はこれで解散とする」
そして、会議が終わったところで、俺達は準備をするために商業施設へと向かった。
商業施設で必要な買い物を済ませた俺達はルミナの店へと戻っていた。
「食料はこんなところか」
「そうね」
俺達が商業施設に寄ったのは保存食を買うためだった。
食料は国から支給されるが、俺達は単独行動が多く、そちらから補給できない可能性があるからな。
食料は多めに持っておきたいので、このタイミングで買っておいたのだ。
「……で、どうだったの?」
荷物を置いてリビングのソファーに座ったところで、アーミラが会議でのことを聞いて来る。
「西の山脈に向かったレグレットの部隊の偵察に行くことになったわ。出発は明日よ。私、アーミラ、エリュ、シオンの四人で向かうから、明日までに準備を整えておきなさい」
「はーい」
「分かったよ」
「では、俺は装備品の点検でもしておこう」
消耗品の準備は済んでいるので、俺は地下で装備品の点検をしておくことにした。
そして、その日は準備を終えたところで、各自で自由に過ごした。
翌朝、西の山脈に向かうメンバーで集合場所である城の広場に向かっていた。
「集まっているな」
「そうね」
城の広場に向かうと、そこには西の山脈に向かう部隊が集まっていた。
「来ましたね」
と、ここで部隊の先頭にいたエルナがこちらに気付いて、ゆっくりと歩み寄って来た。
「もう来ていたのか」
「一応、部隊の隊長ですので。とりあえず、そこに並んでおいてくださいますか?」
「分かった」
ひとまず、ここは隊長であるエルナの指示通りに並んでおくことにした。
そして、並んでからそのまましばらく待っていると、メンバーが全員揃ったところで出発式のようなものが始まった。
「暇だねー……ねえエリサ、面倒だから終わるまでどっか行ってて良い?」
「ダメよ。もう少しなんだから、このまま待っていなさい」
痺れを切らしたアーミラがどこかに行こうとするが、エリサに止められてしまう。
「……終わったようだぞ」
と、そんな話をしていると、王の側近の男の話が終わっていた。
「みたいだね」
「ボク達が乗る船は……あれだね。それじゃあ行こっか」
「ああ」
そして、出発式のようなものが終わったところで、俺達は飛空船に乗り込んだ。
飛空船に乗った俺達は休憩室でのんびりと過ごしていた。
「いやー……速度は魔物に乗った方が圧倒的に速いけど、やっぱりこっちは快適だね」
「そうだな」
飛空船であれば風を防ぐための風魔法による結界を張る必要も無いし、ちゃんとした床があって安定しているからな。快適性で言えばこちらの方が断然上だ。
「シオン、アーミラ、この後の予定は分かっているな?」
二人にも説明したので大丈夫だとは思うが、念のために確認しておくことにする。
「もちろんだよ。この飛空船で西の観測所に向かった後は、ボク達はザッハートに乗って西の山脈に行くんだよね?」
「ああ、そうだ」
この飛空船の行き先は西の観測所だ。
エルナ達の部隊はそこに駐在する予定だからな。俺達はそこで別れる予定だ。
「で、上空からレグレットの部隊を探して、場所を確認したら、潜入して調査をするんだよね?」
「そうだ。その際には頼んだぞ、アーミラ」
潜入の際にはアーミラの変身能力が必要になるだろうからな。頼りにさせてもらうことにする。
「任せといて!」
「とりあえず、観測所に着くまでは各自自由にしていてくれ。着いたらここに集合、それで良いな?」
「はーい」
「分かったよ」
そして、確認が終わったところで解散して、観測所に到着するまで各自で自由に過ごした。
「着いたね」
「そうだな」
そのまま船内で適当に過ごしていると、ちょうど正午頃に観測所に到着した。
「時間的にもちょうど良いし、昼食を摂ってから出発するか」
「それが良さそうね」
昼食はザッハートに乗って移動しながら摂ろうとも思っていたが、ちょうど良い時間なので、昼食を摂ってから出発することにした。
「それなら、荷物の積み下ろしを手伝っていただけますか?」
と、そんな話をしていると、エルナが荷物の積み下ろしの手伝いを依頼して来た。
「分かった。お前達もそれで良いな?」
「ええ」
「うん」
「良いよー」
別に俺達は無理に急ぐ必要は無いからな。ここは荷物の積み下ろしを手伝うことにした。
「それでは荷物を観測所内にある倉庫に運んでください。倉庫はあちらです」
「分かった」
そして、俺達はエルナ達の荷物の運搬を手伝うこととなった。
荷物の運搬を終えた俺達はエルナと共に昼食を摂っていた。
昼食は保存食では無く、普通に観測所内にあるキッチンで作った物だ。
普通に料理ができる場所で保存食を使う必要も無いからな。観測所の職員が料理した物を食べている。
「ところでエルナさん、西の山脈に向かったレグレットの部隊についての情報は無いのか?」
会議で資料はもらっているが、その資料にはそれに関しての情報が無かった。
なので、何か情報が無いのかどうかを聞いてみることにする。
「部隊が向かったことは確認されていますが、どの部隊が向かったかまでは分かっていません」
「そうか」
だが、残念ながらそのことについては分かっていないらしい。
どうやら、資料に記載が無かったのはそのことについての情報が無かったからのようだ。
「だからこそ、あなた達に調査を依頼したのです」
「なるほどな」
今回の偵察はその調査も兼ねていたらしい。
「まあ無理はしないでください。最悪、規模の報告だけでも十分です」
「無理はしないが、流石にそれだけで戻って来るつもりも無い。まあ期待しながら待っていてくれ」
「ええ。期待せずに待っています」
「……人の話を聞いていたのか?」
一言目と二言目が完全に矛盾しているのだが。
「まあ私達もいるから大丈夫よ。報酬をもらっている以上、それ相応の仕事はするわ」
「ええ、お願いしますね」
「さて、私は出発できるように準備を整えておくわ」
「ああ、頼んだ」
ここで先に昼食を終えたエリサは準備をしに向かった。
「私もすべきことがあるので、もう行きますね」
それに続いて、昼食を終えたエルナも部屋を出て行く。
「俺達はゆっくりとするか」
「そうだね」
準備に多少時間は掛かるだろうし、そんなに急ぐ必要は無いからな。
そして、残った俺達はそのままゆっくりと昼食を摂るのだった。
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