第5章閑話 神域にて佇む者5

 神域にて佇むマキナは地上の様子を見ていて、ワイバスに戻るエリュ達を見届けていた。


「これで無事に解決……とは行きそうにありませんね」


 普段ならばこれで解決と言っているところだが、今回ばかりはそう言うわけにも行かなかった。


「彼らの本来の目的はオールドイスがレーネリアに手を出せないようにすることでしたが、結局それは解決できていませんからね」


 勢力争いに参加したのも、元はと言えばオールドイスがレーネリアに手出しできないようにするためで、最終的にルートライア家を失墜させることを目標としていた。

 しかし、結局ルートライア家にはさらに力を付けられてしまい、結果としては状況が以前よりも悪化してしまったと言える。


「ルミナとレーネリアがそれぞれ別の勢力の出身というのもあって、面倒なことになっているようですが、レーネリアはルートライア家に戻る気が無いようなので、エンドラース家側の勢力とカウントして良さそうですね」


 レーネリアは出身はルートライア家ではあるが、当然そこに戻るつもりは無く、ルミナに対して協力的なので、実質的にはエンドラース家側の勢力になっていた。


「今回の騒動は三家の覇権争いが引き起こした騒動ですが、その陰にあったレーネリアの存在は大きかったですね。そうでなければ、レグレットのことに興味の無いルミナの参戦はありませんでしたから」


 今回のメインとなった三家の勢力争いだが、それに大きな影響を与えることになったのはレーネリアの存在だった。

 勢力争いに直接的に影響を与えたのはルミナではあるが、そもそもレーネリアのことが無ければ彼女が勢力争いに参加することは無かったので、レーネリアの存在が勢力争いの激化に繋がったと言える。


「同じ街の出身の貴族の娘でありながら勢力も境遇も違う二人は、そこから遠く離れた街で偶然の出会いを果たし、その運命を大きく変えました」


 貴族の娘という立場をしがらみのように煩わしく思い、自由を求めて自らの意思で国を出たルミナと、その扱いを見兼ねて街から逃がされたレーネリア。

 敵対する勢力だったはずの二人は偶然にも同じ街で出会い、その運命はそれぞれの過去によって結び付き交錯した。


「その二人をワイバスの街に連れて行ったのはレイルーンなので、彼女の存在が最も大きいものだったのかもしれませんね」


 その二人を偶然、見付けてワイバスの街に連れて行ったのはレイルーンなので、彼女こそが最大の功労者だったとも言える。


「圧倒的な戦闘センスを持っていたことにより不幸にも利用されそうになっていた少女は、彼女の平穏を願う者によって救われました」


 レーネリアはオールドイスに非道な方法で政略的に利用されそうになっていたが、それを見兼ねた二人のメイドによって脱走に成功した。

 さらに、その後も数々の幸運が重なって、最終的にルミナの下に置かれたことによって、無事に平穏を得ることができた。


「そして、三年半前から膠着状態だったレーネリアを中心にした騒動は今になって大きく動き始め、一気にその結末が訪れようとしています」


 レーネリアがルミナの店に匿われるようになってからはほとんど動きが無かったが、今になって事態が一気に動き始めて、そのまま結末にまで進展しようとしていた。


「レーネリアを巡る騒動の結末まではもうすぐです。このまま最後まで見届けましょう」


 そして、最後にそれだけ言うと、マキナは地上を映し出していた空間を閉じた。

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