第23話 罠透視の魔道具2

 カイの尋問はまだまだ続きます。


「それでラシャさんは、先日罠の解除に失敗して、グレコが爆発したって話ね。さて、一体グレコのどこがどんなふうに爆発したのかしらねぇ」


「カイ! 爆発したのは宝箱の罠だ! 俺のなにかじゃない!」


「そうなんですよ~、だから本来の盗賊技術での調査に加えて、透視魔法も併用して、今後は失敗しないように最善を尽くそうと、高価な魔道具を買おうと決心したんです」


「ふん、3万Gの透視の魔導具ぐらいは高価でもなんでもないわ。グレコ専用の鉄化の指輪は8万Gだぞ」


「でも、そのお金、カイさんがグレコと組んでこなした人質救出の依頼で稼いだお金で買ったんでしょ? 実質、カイさんがプレゼントしたみたいなものじゃない」


「くっ!」


 それまで攻勢だったカイが怯みました。


「3万G前金で用意できるか?」


「問題ないわ」


「この透視の魔法は、あくまで罠などの機械的構造が頭に浮かび上がるだけで、服を透かしたりはできないからな。悪用できると思うなよ」


「知ってます。パーティに僧侶がいるので聞いてますから。別に服の下を見たければ、脱ぐように頼めば脱いでくれるし、ねぇ、グレコ」


「は、話をこっちに振るな、ラシャ! 俺は、ぬ、脱がないからな」


「シンプルな水晶球そのままでいいか?」


「できれば、首飾りにしてもらえると嬉しいけど」


「あいわかった」


 打ち合わせが終わると、ラシャとグレコは、カイの店を後にしました。もちろん、ラシャは前金3万Gを支払っていきました。


 店を出てしばらく歩くと、急にラシャがグレコの腕をとり、自分の胸を押し付けました。革鎧は着ていますが。


「グレコ、あんたカイさんとどこまで行ったの?」


「な、なにを言ってるんだ。なんにもねぇよ」


「すごいバチバチ嫉妬の炎が飛んできて、正直ひいたんだけど」


「・・・まあ、カイと会っているときに、他の女が同席したのは初めてかもしれん・・・たしかに、普段と違って妙だった」


「まったく・・・私は色より金の盗賊なんだから、うぶな二人のロマンスに巻き込まないでよね」


「う、うぶじゃねえ!」


 そんなラシャとグレコの後を、透明化の魔導具を使って、カイがつけてきていたのは、二人には内緒のことです。


 そして、一週間後。


「先日は最終試験も・・・一応、思うところはあったが合格だったので、罠透視の首飾りを納品するぞ」


「わーい、ありがとう。けっこう綺麗ね!」


「片手で首飾りを握り、片手を宝箱にかざして、透視と呪文を唱えれば罠透視の魔法が起動して、頭の中に内部の構造が浮かぶだろう。クールタイムは10分だ。そうそう連発するような魔法でもないから問題ないはずだ」


「わかったわ、これで、カイさんの大事なグレコさんが爆発しないように、しっかり罠を解除するわね!」


「そうか、ならば納品もこれでつつがなく終了だ。私は少しグレコと二人で話があるので、先に帰るがよかろう」


 ラシャがカイの店を出ると、カイがおもむろに、いつもの無表情でグレコに告げました。


「私はお前が罠で爆発しても構わんが、あの女の上で爆発したらぬっころすぞ」


「そ、そ、そんなことはありえないから、怖いこと言うのやめてください!」


「あと、わかると思うが、私は、あの女の名前と顔を確認したから、探魂の首飾りでいつでも居場所が特定できるからな。怪しい時間に怪しい場所で、お前たち二人の位置座標が一致したら、尋問の後にぬっころすからな」


(こいつ、自分の店の売れ筋顧客層と精神構造が近似している・・・)


 恐ろしい幼馴染だと思ったグレコでした。

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