第10話 人質救出作戦
「赤字補てんになりそうな依頼を探しに来てみれば・・・」
モンスター退治ではない、珍しい依頼が張り出されていました。しかも、緊急案件です。
「盗賊団にさらわれた娘を救出してください。盗賊団のアジトは不明。1週間後に身代金との交換場所を指定されています。身代金を払っても娘を開放するかは不明。身代金と同額とはいきませんが、無事に娘を救出いただいた方には20万Gをお支払いします」
グレコがその依頼を読んで口笛を吹きました。
「ひゅー、独り占めすれば、10ヶ月分の稼ぎになるな」
「稼ぎの問題ではない。人命がかかった緊急案件だ。引き受ける」
「さすがはカイだな。して、策はあるのか?」
「まず、依頼人に会おう」
カイとグレコは、依頼を受ける旨を冒険者ギルドに申請し、両親に会いに行きました。
「まずは、人質の娘さんを対象に探魂魔法を使って、盗賊団の潜伏先を特定しましょう」
カイは両親から、娘さんの名前を聞きました。そして、カイは探魂の首飾りを握りながら、母親とおでことおでこをくっつけて、魔道具の術式を発動しました。
「探魂」
それからいったん席を外して、依頼人の両親に見られていないところで、もう一度・・・
「探魂 +10」
そして、部屋に戻り、街の地図にカイの頭の中に浮かび上がった方位と距離を当てはめると・・・
「東の町外れで使われなくなっていた空き家だな。今晩にも突入しよう」
「どういう作戦で行くんだ? 強行突破か?」
「人質に危険が及ぶようなことはできない。可能な限り静かに片付ける」
さて、カイとグレコは、その晩、盗賊団のアジトになっている空き家の近くまでやってきていました。
「グレコ、縄は十分持ってきたか?」
「ああ、30人は縛れるぐらいは持ってきた」
「では、これから、眠りの杖を使って、睡眠の魔法をフルパワーでかける。対象は建物全域だ。建物の中にいる人間は、人質も含めて皆眠っているはずだから、盗賊は発見次第縛り上げ、人質は回収する。人質を建物外に逃がしたあとは、再度眠りの杖をかけて、建物内をくまなく調べて、ひとり残らず縛り上げる」
「承知した」
「いくぞ」
カイは暗がりから建物の壁まで忍び寄ると、魔導具箱から眠りの杖を取り出して起動しました。
「眠りの杖 +10」
建物の中から、小さく、ドサリというような、人が倒れたような音が聞こえました。睡眠の魔法が効いたようです。
ドアには鍵はかかっておらず、ドアを開けると、さっそく目の前に盗賊が一人、床に転がって眠っていました。
グレコが手早く両手両足を後ろに縛り、身動きできなくしていきます。その間も、盗賊が眠りから覚める気配はありません。
そうして1階で5人を縛り上げたあと、地下室に向かうと、かわいそうに、人質の女の子が手を後手に縛られ、さるぐつわをかませられていました。そこで、さらに見張りの盗賊を1人縛り上げ、グレコが女の子をおぶって、建物の外に避難させました。
眠りの杖を念の為もう一度使い、建物内に戻り2階を調べると、あと3人盗賊が寝ていたので、これも縛り上げます。
こうして、人質救出作戦は、カイの作戦通りつつがなく終了したのでした。
「しかし、眠りの魔法って、初心者の魔法使いが使う地味な魔法ってイメージだったけど、威力が増大すると恐ろしいな。敵は全くなす術がないんだから」
「どんな魔法も魔道具も使いようさ」
「それにしても、1人あたり10万Gの報酬だぜ。いったい何に使おうか? カイはどうせ研究開発で消え去るんだろうけどさ」
「まあ、それには異論は挟まないが、なんならグレコもたまにはうちで魔道具でも買ってみてはどうだ? 友情価格で安くしておくぞ」
「愛情価格ではないんだな・・・うーん、転送印の預け金に2万G使っても、まだ8万Gあるのか。考えてみるよ」
なお、縛り上げた盗賊たちは全員官憲に突き出されて逮捕されました。
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