オマケにしては長いエピソード 海だ! 水着だ! イカの一夜干しだ! 魔王の妹だ! その5
と、そんなこんなでクラーケンの死体が都合21匹海に浮かび上がっていた。
「何だよお前ら……化け物かよ……」
「なあ船長? クラーケンを丸ごと……一匹持って帰りたいんだが」
「え? どうして? 討伐部位は目玉だからそれで冒険者ギルドで報奨金は出るぜ? 一匹当たり金貨500枚ってところだな」
金貨1万枚か。
海運商会の買収で使用した金額が丁度戻ってきた感じだな。
で、ドン引きしている船長だったが更に俺が船長をドン引きさせる発言をしてしまった。
「いや、どうしてって言われても……食うんだよ」
「食うのっ!? クラーケンをっ!?」
まあ、地球でもイカを食うってだけでドン引きする国も多々あるもんな。
見た目は確かによくよく見てみると悪魔的な感じだが……食えば美味いんだけどなァ……。
で、クラーケンだが、カモメが集まってきてて、クラーケンをつついているので……まあ、食えるだろうと言う判断だ。
マリアは鑑定眼持ちで、曰く「毒は無い」とのこと。
まあ、不味かったら肥料にでもすれば良いしな。
で、ボートを出してクラーケンの死体をザクザクと切り取って、まるごと一匹分アイテムボックスに収納した。
内臓もたっぷりで、イカの塩辛を作っても良さそうだ。とりあえず味見をしてから塩を大量に買い込んで帰ろう。
まあ、イカ……更に内臓と言えば一瞬で腐ってしまう食材だ。
この辺りは俺のアイテムボックスは時を止める形での収納ができるからこその芸当だな。
制限有りなので1匹しか持って帰れないけど、トン単位での重さなので食いきれないだろう。
そうして全てのクラーケンの目玉を回収し終えた時に――それが起きた。
「うわああああっ! 大王クラーケンだっ!」
説明口調で船長が叫んでいる方角をみると、さきほどのクラーケンの倍はありそうな大きさのクラーケンがこちらに向けて泳いできていた。
あのイカに船を襲われるとひとたまりもないのは間違いないだろう。
「ふむ。それでは我が……」
コーネリアがそう言った時に、亜斗夢君が手でコーネリアを制した。
「うわァ……ようじょつよい……ってのも萌えますが、やっぱり戦いは男の仕事ですぜ……アネキっ!」
何かこの子……お付きの雑魚臭が凄いことになってきているな。
まあ、俺等のノリにとっても良く順応していると言うか何というか……。
で、それはさておき、亜斗夢君は賢者らしく念を込めた後に宙に浮かび上がった。
「飛翔魔法!」
おお、空飛んでる。
ガチムチマッチョってことで疑っていたんだが、キッチリ賢者だったみたいだな。
そうして亜斗夢君は大王クラーケンに向かって飛んで行った。
「喰らえっ! 獄炎(ヘルファイア)っ!」
亜斗夢君の掌から大王クラーケンに向かって巨大な火の玉が放たれた。
ってか、そこそこの火の大きさで、手乗りウサギ一人くらいなら倒せるってのも……満更嘘でも無さそうだ。
そして巨大な火の玉は海に接着して――
「何っ!? 獄炎(ヘルファイア)が消えただとっ!?」
いや、そりゃあ海に向かって火を放ったら消えるだろう。
ってか、考えたら分かるだろ。
と、そこで大王クラーケンが水面から顔を出した。
「好機っ!」
そうして亜斗夢君は腰から短剣を取り出して、水面に浮かび上がった大王クラーケンの頭に短剣を突き刺した。
「刺さった……が……デカすぎるっ! まるで効いちゃいねえっ!」
いや、だから考えたら分かるだろっ!?
そして大王クラーケンの足が水面に浮かび上がって――
――ペチンっ!
「うぎゃっ!」
宙に浮かんでいた亜斗夢君が大王クラーケンの足に叩き落とされて、ドボンとばかりに海に落ちた。
と、そこで俺はヘナヘナとその場に崩れ落ちて、漏れそうになる笑いを必死に堪えた。
確かあの子……高校で3回留年してんだよな。そこで「フハっ!」と俺はついに笑いを声に出してしまった。
ああ、駄目だ。
――俺――亜斗夢君好きだ。
決して弟キャラでも、舎弟キャラとして好きじゃない。
アホキャラとして……かなり好きだ。
と、それはさておき、亜斗夢君がクラーケンの足に絡めとられて、マジで溺れてしまっているようだ。
「仕方ねーな」
俺は船の上を10メートルほど走って、走り幅飛びの要領で大王クラーケンに向かってジャンプした。
【スキル:農作業レベル10が発動しました】
途中、空気を蹴って微調整。
そうしてジャストで水面に顔を出している大王クラーケンの脳天目掛けて――クワを一閃。
【スキル:農具取り扱いレベル10が発動しました】
――ズビュヒョンっ!
カマイタチっぽい何かが発生して、突き刺さったクワの上下が裂けて――正に一刀両断。
相変わらずのチートだな……と笑いながら俺は亜斗夢君の所に飛んだ。
そのまま亜斗夢君に纏わりついていた大王クラーケンの足を切る。
「アニキ……やっぱすげえや。一生ついていきますぜ」
そうして、何だか良く分からんが、感動している亜斗夢君と二人で俺たちは平泳ぎで船へと戻ったのだった。
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