オマケ その2 ウロボロスとハヤシライスの魔王様
農作業が一段落した。
ウロボロスが用意してくれたお茶で、庭のウッドデッキでお茶をみんなで飲んでたら、ソーニャがぴょんぴょんしながらこんなことを言い出した。
「しかし、魔王コーネリアの側近……悪魔元帥ウロボロスをメイド扱いとは……タツヤは凄いのですー♪」
「え? 実はウロボロスってそんなに凄かったの?」
いや、コーネリアの側近だったというのは知ってるけどな。
と、そこでウロボロスはクスリと笑った。
「そんなことはございませんよ」
「でも、ソーニャがそんなことを言ってるのは恐らくよっぽどだと思うぞ」
まあ、普段から能天気を地で行く感じだからな。
上下関係とかにも疎そうだし。
「ふふ、弱者に比べれば私は凄いかもしれませんが、本当の強者の中では私など……」
いや、強いのは知っている。
俺が聞きたいのは権力的な話なんだけどな。
ウロボロスの前の主人はロリババアということで、イマイチ威厳がないんだよな。
ウチじゃ完全にメイド扱いだし。
「ちなみにウロボロスの部下って何人くらいいたの?」
「コーネリア様の龍神宮では私は幹部ですからね。ふーむ……私より下の立場の者といえば、20名程度でしょうか?」
「お? 意外に少ないんだな?」
まあ、何だかんだでカレー好きのただのお子様魔王だからな。
今は、半分は隠居みたいなノリの変わり者という話だし、そんなに権力はないといわれても頷ける。
「まあ、昔は使用人や兵士もたくさんいたのですがね。今ではコーネリア様は非武装と倹約を旨としておりますので」
「ちなみに昔はお前の部下はどれくらいいたんだ?」
「龍神宮の常勤で50万名程度でしょうか?」
「本当に凄かったんだなお前っ!?」
「魔王の側近……その部下ですからね。それくらいの数にはなるでしょう」
屋敷の常勤の人数だけで50万か。
なるほど。これは本当に昔はすごかったようだな。
いや、でもよく考えると、コーネリアは普通に今でも魔王だし、本気出して召集かければ、数百万とかいう単位で魔族がすぐに動くんだろうな。
ふう、ただのカレー好きと侮っていると、いつか怪我しそうだ。
今後はあいつにはもう少し気を遣って、カレーに福神漬けを乗せてやろう。
ふふ、あいつのニッコリ笑顔が目に浮かぶぜ。
「ってか、50万人も入るほどにデカいのか? 龍神宮ってのは?」
「ええ、大きいですよ?」
「っちゅうと、具体的にはどれくらいの大きさなんだ?」
「玄関からコーネリア様の寝所まで20キロメートル程度でしょうか? 敷地は30キロ四方で、兵士詰め所や内勤者の宿舎、酒場に日用品を売る店もございました」
「最早それは屋敷じゃなくて都市だな」
「ドラゴンやリザードマンを含めた、爬虫類系の王ですからね。私もウロボロスという名前そのままで、神蛇という亜神の一種ですし」
「亜神か……スゲエな」
「コーネリア様に至っては、亜ではありませんよ? なにせ、12柱の魔王の1柱……ほぼ、神と同義の存在の方です」
「……良し、福神漬けだけじゃなくて、肉の量も増やしておこう」
「はい? 何の事でございましょうか?」
「いや、こっちの話だ」
普通に仲良しこよしの感じでやってるが、実は俺は結構ヤバいことをしていたのかもしれん。
良く、からかったりもしてるし……。
この前、カレーじゃなくてハヤシライス出した時はマジギレしてたしな。
ババ抜きの罰ゲームなんかでは、ほっぺたをギューっとツネったりしたこともあるし……。
「ウロボロス? もう少し給料っていうか、お前の小遣いをあげてやろうか?」
「え? どうしてでございましょうか?」
「亜神を月給銀貨25枚(日本円で25万円)でコキつかってちゃ不味いだろ?」
元々は、コーネリアからの罰則という形でウロボロスはウチへの奉公に来てるからな。やはり、神には神なりに待遇はちゃんとしておいたほうが良いかもしれん。
と、そこでウロボロスはクスクスと笑い始めた。
「構いませんのですよ、ご主人様」
「っつーと?」
「そもそも、ひもじい思いはしておりません。食事は龍神宮より美味しいですし、服等もご主人様がいつもプレゼントしてくれるではありませんか」
「まあ、そりゃそうなんだがな。もう少しくらいなら小遣いを上げても全然良いんだぞ?」
そうして、ウロボロスはニッコリと笑ってこう言った。
「私はご主人様にお仕えできることで、今は無類の幸福を感じていますので」
こりゃ一本取られたな。
こんなことを言われては、俺としてはニヤっとしてしまうしかなくなるじゃないか。
・お知らせ
新作始めています。
主人公最強モノで商業含めて私が書いた中でも、相当完成度高い方じゃないかなと思います。
個人的に物凄く期待している作品ですので、よろしくお願いいたします。
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