季節の番外編 年越し
年越し!と言えば!そば!
でも蕎麦はない!ガッデム!
「リュシュー……そば食べたいよぉぉ」
十二の月が巡り、一の月に戻る夜。
私は我慢ならずに水晶を取り出しリュシューを呼び出した。
夜も遅いというのにリュシューはすぐに反応してくれる。
『こっちには蕎麦も、除夜の鐘もないからなぁ』
「年末感がない……」
『どっかの国じゃ感謝祭みたいなことやってるらしいぞ』
「オールスター感謝祭?」
『違う』
「はい」
『やー、こっち来てからあんまりそーゆーこと考えないようにしてたから、懐かしいや、色々』
「そうなの?」
『うん。母さんに口止めされたからさー。子供心に、考えないようにしようって。なんかアレなんだろ? キャトラスの王様とかは城に転生者を囲い込んでるんだろ?』
「うーん、キャトラスでは城に入るとか入らないとか以前に近付けもしなかったから分かんないんだよねぇ。サビには、奴隷として高く売れるから隠しておけって言われたけど」
『げ、奴隷……そっか、キャトラスって奴隷売買あるんだっけ』
「うん。この辺だとキャトラスだけなんでしょ? 知らなかったよ。こっちの世界では普通なのかと思ってた」
『こっちじゃ奴隷のどの字もないよ」』
「それがいいよねぇ〜」
『あ、そろそろ新年だよ』
「ホントだ」
それから私たちは二人でカウントダウンをして、新年を迎えた。
「明けましておめでとう!」
『明けましておめでとう』
「やー、言えると思ってなかったなぁ、あけおめ」
『だな。ラ〇ンでスタンプ送るばっかだったけど、言い合うのもいいね』
「そうだねー。色々さ、やっとけば良かったなって思うことあるからさぁ」
『うん』
「こっちの世界では我慢とかしないでやりたいこと全部やろって思うんだよね」
『なるほど、それでトリキね』
「そうそう」
『なんか使えそうなもの見付かったら、すぐ連絡するよ』
「今年もよろしくお願いしまーす!」
『しまーす』
転生日本人二人の、静かな年越しだった。
紅白も観てないし、ガキ使も観てないし、ジャニーズコンサートも観てないし、ゆく年くる年も観てないけど、もう、観られないけど、それでも別の時間軸で、私の生きる時間は年を経る。
どれほど掛かるのか分からないけど、それでも絶対に諦めない。
後悔はしないって決めたから。
待ってろよ、焼き鳥ー!
待ってろよ、トリキー!
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