第23話 精霊の愛し子③

 作業部屋を出て、キッチンへ。

 折角だしこのヘタレ草がどこまでトマトなのか食べてみたい。いや、ちょうどよくヘタレ草の品質Bもあったんだよ。そうなると、勿論食べてみたいよね。

 というわけで、お昼はサンドイッチだ。手軽に作れるから、お腹が空いていても早く食べることが出来るし、食パンは朝によく食べているから多めに常備してある。

 まずサンドイッチを作る前に、洗ったヘタレ草をちょっと千切って一口だけ食べてみる。

 うん。味は完全にトマトだ。食感は普通の葉物野菜と同じ。みずみずしくて、どれかといえばレタスに近いかな。

 となれば、ここはシンプルにチーズと一緒にしよう。

 パンとパンの間にヘタレ草とチーズを挟む。食感はシャキシャキだけど、味はトマトとチーズになっているはずだ。挟む前にパンの内側にはマーガリンを塗っておいたから、シンプルに美味しい仕上がりになっているはず。

 包丁でパンを斜めに半分に切ると、見慣れたサンドイッチの形になる。


 これだけでは足りないからもう一品。

 お肉屋さんで買ってきておいたハンバーグが冷蔵庫にある。自分で作るとなると面倒だけど、既に成形されたハンバーグだから焼くだけ簡単だ。

 焼くだけに整えられているとはいえ、本当に簡単だし良いよね。そしてお肉屋さんが作ったものだから、お肉がジューシーで美味しい。冷蔵庫にいくつかストックを置いておくくらい、このハンバーグは良い。悪くならないように魔法を掛けておけば、多めに買っておいても安心だしね。

 こんがり焼いたハンバーグはそれだけで美味しそう。けれど今回はサンドイッチにするつもりだったから、レタスと一緒にパンに挟む。こちらのパンの内側にはマーガリンではなく、バターを塗っておいた。

 お皿の上で、包丁で半分に切る。じゅわ、と肉汁が溢れてお皿に落ちていった。

 肉汁がもったいなく感じてしまうけど、やっぱりこの断面がサンドイッチの醍醐味だしね。


 とはいえ、その溢れた肉汁を無駄にするのはどうしてももったいないから、今朝作って食べたスープに投入する。元々お昼にも食べようと思って、朝少し多めに作っていたものだ。

 朝に食べた時はコンソメとレタスのシンプルな、というか若干シンプルすぎる野菜スープだったけど、そこにお肉の旨みが加わればそれはそれでまた美味しいはずだ。




 出来上がった昼食は、ヘタレ草とチーズのサンドイッチ、ハンバーグとレタスのサンドイッチ、野菜スープ改だ。

 のべ食パン四枚を使用している上にがっつりハンバーグも入っているから、満腹になることは間違いない。

「いただきます」

 まずは温かいうちにハンバーグとレタスのサンドイッチから。

 やっぱりお肉屋さんのハンバーグは美味しい。バターがほんのり混ざっていい感じだ。

 ヘタレ草とチーズのサンドイッチは、まさに思ったそのままの味。馴れ親しんだトマトとチーズだ。で、食感がレタス。でもこれ本物のレタスを一緒に入れても美味しいかも。

 野菜スープ改もいいね。さくっと作って自分で食べるには、十分すぎるくらいだ。


 うん、美味しい。

 品質Aのポーションを売るのは大変だし、安定供給とか薬草の入手を考えると生活費を稼ぐにはやっぱり品質Cくらいのポーションがちょうど良いと思うんだよね。

 野菜スープは手抜きだから除外するにしても、このサンドイッチ二種類はポーションで作ろうかな。

 ハンバーグの方はお肉屋さんの味そのままだから、今度お肉屋さんに許可を貰いに行こう。

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