第22話 精霊の愛し子②
精霊さんは、いってきますと言って出掛けていったのだから、そのうちここには帰ってくるつもりなのだろう。
精霊さんたちがいなくなると、部屋はすっかり静かだ。寝室や浴室はともかく、この作業部屋やリビングには大体いつも精霊さんがいたから、余計にそう感じるのかな。
完成したパンケーキのベリーソースがけ味の魔力ポーションを瓶に詰める。
アイネに渡す分、お店で買い取りをお願いする分、精霊さんにあげる分、それから自分用の予備にわける。お店に持っていく分は、魔力ポーションの品質Aでは値段も高くなるだろうし、本数は少なめにしておく。
あと作りたいポーションの味は、ラタトゥイユとトマトケチャップのオムライスとミネストローネの三種類だ。
これらと似た味を持つ薬草で、品質Aのものを鑑定をして探していく。
……精霊さんに貰った薬草、この間貰った時より増えているのでは?見覚え、というか鑑定した覚えのない薬草が混じっている気がする……。
精霊さんから貰った薬草は、貰った日にすべてざっくりと鑑定をしている。けれどほとんど品質と何のポーションが出来るかくらいしか注視せずに流し読みしていたから、定かではない。というか多かったから覚えていないし、メモするより鑑定をした方が早いから。
同じ理由で、味についてもどんなものがあるのかあまりよく見なかった。
今回作りたいポーションは全部トマトだし、トマトっぽい味の薬草でもあれば一発なんだけどな。
「それにしても、色んな味があるな。しょっぱい、苦い……美味しいだしが出る、なんていうのもあるんだ。薬草って幅広いんだなあ」
ざくざく鑑定していくけど、どれもこれも品質AとBのものばかり。お礼にしてはかなり過剰だと思う。
精霊さんにはお世話になってばかりだ。
「ん……?」
見覚えのある形。
なんだかトマトの葉っぱに形が似ている気がする。
その薬草を鑑定してみる。
ヘタレ草
品質 A
体力回復ポーションによく使われる薬草
暖かい地域でよく育つ
葉をかじるとトマトのような味がする
生でも美味しく、よくサラダに使われる
魔力を注いで加熱することで、酸味と甘みが良い感じ
……これは最早葉っぱの形をしているだけのトマトでは?
しかし名前が何故にヘタレ草。これはひどい。トマトを食べすぎるとヘタレになる、とかいう迷信のせいかな?それが本当かどうかは謎だけど、トマトをよく食べる国の人って陽気な性格の人が多いらしいとは聞く。
まあとにかく、これでポーションを作ろう。
しっかり鑑定もしているし、想像も余裕だから失敗する要因も特にない。なので、スムーズに三種類とも作れる。
あとは冷めたら鑑定するだけ、という状態だ。美味しそうな匂いがするから、恐らく無事に出来ていることだろう。
このまま魔法でぱっと冷まして昼食を兼ねて試飲する、という手もあるけど、ポーションを作る為に想像し続けていたらとにかくお腹が空いた。こういう時は、きちんと食べたい。
ポーション待ちをしている精霊さんも今はいないし、自然に冷めるのを待つことにして、昼食は作って食べることにしよう。
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