第2話



 届けられた同窓会の案内状には、あの日ホームルームで決められた日付けと場所が書いてあった。

 幹事の名前を見て、なるほど自ら申し出ただけあって、きっちりと約束を守るものだと感心してしまう。


 SNSを使うのではなく、葉書での案内状とはまた渋い。まあ、この葉書が来るまでに半年ほどかけてSNSで当時のクラスメイトとほぼ繋がって、誰がどこで何をしているのかを把握しているからこその、この葉書ではあるが。

 行方知れずだった何人かも、一人を除いて全員連絡がついたと昨夜メッセージが入っていた。

 

 その一人こそ、ひよりが誰よりも会いたい司だった。


「司は、一体どこで何をしているんだか」


 進藤 司の足跡は、十五歳で家族と外国に渡った後、大学を飛び級し、何処かの研究所に所属した二十一歳で途絶えていた。

 読むことが出来ていた司の論文も、いつのまにか消えてしまい跡形もない。

 英文で書かれたそれは……確か、ティプラーのタイムマシンとその改良案についての論文だったと記憶している。


 あの時、将来の夢を揶揄からかったひよりだが、司が夢に向かって着実に歩んでいることを知り、嫉妬しながらも胸が熱くなったものだ。


 なんだ。

 司、やるじゃん。


 勿論ひよりがそれを、一人で読みこなせたわけではない。親切に根気よく読むのを手伝ってくれた人が、いつ帰るとも知らない司ではなく、ひよりの結婚相手となるのは、自然な流れだった。

 ひよりは決して認めないが、無意識のうちに司に似ている人を選んだのは間違いない。

 その論文を読んだ当時ひよりの彼氏だったその人は、既存のティプラー・マシン理論について、宇宙船も光速も必要とせずに未来だけでなく過去にも行ける可能性のマシンであること、また司のこの改良案はタイムマシンの実現に一歩近づいたと熱弁を奮ったものだ。


 この週末、その夫は仕事がある為ひより一人が実家に帰って同窓会に出席する。

 久しぶりに懐かしい顔が見れるのは楽しみであるのは間違いない。

 しかし司のいない同窓会に出掛けるのは、億劫に思えるのもまた事実だった。


「初恋なんだろう?」


「さあ、どうなのかなぁ」


 ひよりが幼い恋を認識する前に、司は傍から居なくなってしまった。


「でもまあ、初恋はそっとしておくのが一番だよ。四十年ぶり? 久しぶりに会う同級生なんて、ぞっとするほどジジイで驚くよ? ハゲてるわ、そうでなけりゃ腹は出てるわ。女性は綺麗にしている人が多いから、その格差たるや……。いっそ七十過ぎてから会ったほうが無難だな」


「頭髪がないのに、あなたほど魅力的な人はいないと言いたいのね?」


「その通りです。奥さま」


「ふむ。真実を調べる価値がありそうね」


 

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