15-2

 ルキアは言葉を詰まらせたあと、束の間沈黙した。真剣に考えてくれているときの、いつものくせだった。やがて考えながら、言葉を選びながら言った。


「……あのね。私は、ジョーンズさんがフォシアを嫌っているなんてことはないと思うわ。でも、私はジョーンズさん自身ではないから、フォシアを安心させられないこともわかる」


 フォシアは知らず、すがるようにルキアを見つめていた。かつてない漠然とした迷路のような不安を、姉なら解き明かしてくれるのではないかと期待した。


 ルキアは、少しはにかんで、照れたような笑い顔をした。


「あのね、のよ。ジョーンズさんが何を思っているか、結局はジョーンズさんから直接聞かないとわからない。フォシアがいま不安に思っているのなら、言葉にして伝えなくちゃ」

「! で、でも……っ」


 ――そんなことできない、とフォシアはとっさに反論しようとした。

 そんなことをしたら。


「め、迷惑かもしれないし……怖いもの」


 知らず、声が小さくなった。自分でも子供のような駄々をこねていると思った。

 だがルキアは呆れたりはせず、むしろいっそう優しい眼差しになった。


「ええ、怖いわよね。聞くのが怖くて、でも聞かないまま自分一人で考えているとどんどん底に落ちていく……そうしてもっと怖くなる。もっと聞けなくなってしまう」


 フォシアははっと息を飲んだ。

 姉の言葉は、いつも以上に胸の奥深いところに染みた。――まるで姉もまた、同じ思いをしたことがあるとでもいうように。


「ジョーンズさんももしかしたら同じように悩んでいたり、あるいは誤解があったりするかもしれないでしょう」

「そう……なのかしら」

「ありえないことではないはずよ。それはジョーンズさんにしかわからないことだけれど。前に進むためには、自分の言葉で聞いてしまったほうがいいのは確かだわ」


 柔らかいルキアの声が、フォシアの心をそっと押した。不安に動けなくなっていた足に、少し力が戻る。


「……そうね。きっとルキアの言う通りだわ。私……グレイさんに、聞いてみる」


 ええ、とルキアは微笑みながらうなずいてくれた。

 少し体が軽くなったように感じて、フォシアは立ち上がった。


 この勢いをかりて、すぐにグレイに面会を申し込むつもりだった。使用人を呼び、グレイに言伝を頼もうとしたとき、少し慌てたような足音が聞こえた。

 ふだんは落ち着いている侍女が、急いだ様子で部屋にやってくる。そしてフォシアの顔を見るなり言った。


「いま、ヴィート様とグレイ様のお二人がいらっしゃいまして、ぜひフォシア様にお会いしたいと……!」


 まさに思い描いていた相手の訪問に、フォシアはこぼれんばかりに目を見開いた。

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