第二十七話『狙撃の名手』

 青い空に白い雲、人工物が一切ない自然の風景。

 大草原に一本の舗装された道が続いている、舗装されているとはいっても除草され大きな石が取り除かれているだけだ。

 それでも、幾分かマシだ。

 遠くに連なる白い山脈、大自然の空気。

 こんな壮大な絶景は、何度見ても素晴らしいと思える。


 窓から入る風に吹かれながら、僕が持ってきた新聞紙を読んでいる。

 モルは最初はこの絶景を食い入るように眺めていたものの、飽きてしまったのか今では熟睡している。

 梟さんは、ライフルを抱きながら外の景色をぼんやりと眺めている。

 そして、僕は事故を起こさないよう気をつけて運転している。

 それぞれ自由で、会話はない。


「しりとりしませんか」

「ん〜?やだ〜」


 なひゆさんは新聞紙から目を離さず、適当に僕をあしらった。


「梟さんはしたいですよね、しりとり」

「……」


 どうやらしりとりは苦手らしい、モルの方を鏡越しに見てみるが、気持ちよさそうに眠っているので起こさないでおくことにした。

 ─────なんだあれ。

 後ろから、かなり距離はあるがなにかが近づいてきている。

 車なのは、分かるが。

 かなりスピードが出ているようだ。


「ほぇぷッ」


 あぶねっ!危険運転反対!

 だめ!絶対!

 とっさの判断で、右に避けたが。

 青い車(たしかブルーバードとか言う車種)、そしてその後に続いてもう一台僕たちが乗っている車より一回り大きな車が。


「なんですかあれ」

「びっくりした〜」


 びっくりしたと言う割には、呑気にあくびをしているなひゆさん。

 どうやらブルーバードの方が追われているらしい。それでもって、追っている車に乗っている奴らが容赦なく発砲していた。


「ふなぁ〜、おはよー、ふくろーさん大丈夫?」

「大丈夫、頭ぶつけただけ、痛い」


 今の衝撃でモルが起きたらしい、そして負傷者も出てしまった。


「首突っ込むべきでしょうかね」

「たぶんね」


 なひゆさんはそう言うとまた新聞紙を読み始めた、後ろでモルが梟さんを撫でている。

 梟さんがすごい嫌そうな顔をしているのは、見なかったことにして。


「スピード出しますよ」


 僕は今度こそ間違えずに、アクセルを踏み込んだ。



      〇



 後ろから近づいただけで発砲してきた、どうやらブルーバード側につくべきなようだ。

 ハイハドの車に傷がついてしまった、僕は弁償はしません。


「梟さんどうですか、やれそうですか」

「車から撃つの難しいの、黙ってて」

「すみません」


 屋根から上半身を出してライフルで前の車をどうにかしてもらう算段なのだが、やはりそう簡単にはいかないらしい。

 下でモルが梟さんの足を押えている。

 そして僕はそんな梟さんに鉛の玉が貫通しないように、必死に避け続けている。

 かなりヒヤヒヤする、確かに空気もひんやりしているが。それとはまた別の原因があるのだろう、例えば鉛玉によってヒビが入ったガラスだと前が見えにくく下手すると事故死してしまいそうだとか。

 そういった、原因が。


「あぶなっ」


 爆ぜた。

 後ろが。

 手榴弾、投げてきた。


「これ急がないとやばいですよっ」

「黙ってて」

「あ、はい」

「みて、この記事、ニュークリアだって〜」

「すみません、今見れないんですが」


 なひゆさんが新聞紙の記事を見せようとしてくるが、見たら事故る。というか、死ぬ。


「とん」


 梟さんがそう呟いて、ライフルの引き金を引いた。

 ライフルの弾は、前の車の車輪に直撃。


「終わり」


 撃ち抜かれた車は失速しバランスを崩し、草原に脱線した。

 役目を終えた梟さんは、ストンと席に座り屋根を閉めた。


「お疲れ様です」

「あの人たち大丈夫かな?心配」


 モルが後ろの方を眺めて言った、けれどたぶんこの心配はではなく、の方だろう。

 あくまで、多分だが。

 僕はスピードを落としたブルーバードに並んで、クラクションを鳴らした。

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