R イオランタ
「めちゃんこ上がったぜあちきはさぁ‼︎ アドレナリンドバドバでなんだよなんだよ同志達ぃ‼︎ 心配返せよこのやろうっ‼︎ ギンギラギンに目が冴えちゃったじゃんもう!もう!もう‼︎ 四人全員描かせろよぉ〜‼︎」
ぽかぽかとずみー氏が走り回りながら
見ろよ、グレー氏が嬉しさ
少しばかり苦手な人間模様から距離を置こうと足を動かせば、逃げるなとばかりに服を引っ張られる。何故だ。ってか誰だ。こうなったら仕方ないッ、古来より代々伝わる悪霊払いの秘技を使う時が来ましたぞッ!
「びっくりするほど……ッ」
「は?」
「あっ、すいません」
服掴んでるの
何も言わずにフード越しに頭を掻く賀東殿を前に黙っていると、襟首を掴まれ引っ張られる。おいおいっ、おいおいおいっ。マジで〆に来たの? ダンスで負けたからって暴力はいくないッ。勝負は終わったのだ。熱い握手を交わして終了にしようそうしようッ。
「あんた……ダンス歴一週間と少しとか嘘でしょ……」
「……ふぁ? なんて?」
「あんた達全員もっとダンス歴長いでしょ!そうなんでしょ! じゃなきゃおかしいもんッ!あんな動きっ、普通できる訳ないッ‼︎」
きもいきもい言われる
「あのぉ賀東殿? 賀東殿達の方がダンス上手ですぞ?」
「……なにっ? 慰めっ? 勝者の余裕ってわけッ?」
「まさかまさか。嘘でなく。
マジで。
「嘘だ」
「嘘ではないと言ってますぞ。
「……嘘だよ」
「三度も同じ事言わせるな常考」
一ラウンド目から賀東殿が本気で
「嘘だってッ、だってそうじゃなきゃッ、私達はッ」
「負けるのが嫌だから大会には出たくないんですかな? 気持ちは分かりますぞ
きっと。そうであるはずだ。二ラウンド目の賀東殿のダンスは激しくそれでいて綺麗だった。賀東殿が負けてはい終わりのような気性であるならば、ここまで
フードを強く握り締めたその下の暗闇から零れる滴。暗闇の中身を見ないように視線を合わせる事はしない。
「そんなの分からないじゃんッ、日本一とかッ、本気でやって、それでっ、負けたら? 私はそこまで自分が上手いとは思わないッ、私より上手な
「……なるほど」
そういう事か。本気でやって負けてしまえば、懸けた事が無駄になると。確かにそうかもしれない。それは怖い。その価値は誰にも値段は付けられない。きっと賀東殿はプロのダンサーが夢なのだ。それがクララ様にへし折られた。モデルが夢のクララ様のダンスの方が上だと。才能という壁の前で立ち尽くした。でもきっと……。
「……結果は誰にも分かりませんとも」
賀東殿の肩を叩き、強引に体の向きを変える。クララ様にダンスの事を聞こうと足を向けている幾人かのダンス部員達の方へ。
「やるだけやったなら、後悔だけはきっとしませんぞ。賀東殿が本気でなくても、本気の者は少なくとも一人以上いる。クララ様だって。敵ではなく味方ですとも。『絶対』に。賀東殿の本気の夢を
教室の隅で座っているだけで踏み出してこなかった。
「その時は……あんたも居るの? ダンス部員だもんねあんたも……」
「ふぁい? いや、え? いや、いやぁ……」
「決まってるでしょ! 今年は勝てるって間違いなし‼︎ ダンス部最後の年にクララちゃんに! ショコラちゃんに! ソレガシくんにあられくんにサレンちゃん‼︎ 他の子達も本気ならずぇったい勝てる‼︎ 退部とか絶対認めないよー‼︎ うわっはっはっはッ‼︎」
部長殿キャラぶっ壊れてね? メンブレしてね? ガクガク揺さぶられて気持ち悪いんですけど。くぅ〜疲れましたとばかりにこれで終わりにはならないの? ギャル氏に顔を向ければ苦笑している。いや、ギャル氏も逃げられないからねこれ。
ってかショコラちゃんて誰? 賀東殿? 賀東殿ってガトーショコラって言うの⁉︎ 嘘だろそんなキラキラした名前が存在するというのか⁉︎
「ははっ、ワロス。ちょっとその話は置いといて、今日はもう疲れましたのでそろそろお暇をですな……」
「ソレガシあんた……ちゃんと来てよ。勝ち逃げは許さないからっ」
「……あらほらさっさっ。ではそういう事でッ!」
スルスルと背後へ後退し、壁際に置いていた荷物を背負う。各々の鞄をそれぞれギャル氏、グレー氏、クララ様に投げ渡し、部室の鉄扉を開けてくれるずみー氏を追うように四人揃って部室から出る。
もう限界だ。体力の限界を感じる。ダンス部がどうなるかの話はちょっと明日まで待って欲しい。
また明日ー! とダンス部室に手を振り五人小走りで校舎を後にする。
「はぁ、兎に角、期待には応えられましたかな?」
「最初からあーしは大丈夫だって分かってたっつーの! 」
「俺も想像以上に楽しめたぜ! ははっ! 部活動も悪くないって!」
「次はあちきもめちゃんこ混ざるぜ!」
「もう本当……私はずっと期待以上だったよ……ありがとねみんな」
見慣れた駅舎を前に走る足を次第に緩め、
重たい体を引き摺って、小さく息を吐きながらクララ様を追って
「……ちょっと待って」
「なんだよ
「いやッ‼︎ 階段で行きましょうぞ階段であぁぁぁぁッ⁉︎」
グレー氏に背を押され、
「いやいやいやありえんてぃ⁉︎ そそ、ソレガシっ!どど、どどどどッ⁉︎ どうす……ッ⁉︎ 扉ぶっ壊すの安定ね‼︎」
「ままままッ、待ったったったッ⁉︎ もももももちつけ
「……スケッチブックどこやったっけ?」
「ずみー氏は落ち着き過ぎな件についてぇぇぇぇッ‼︎」
「ッ、ソレガシきみさぁうるさいんだけど?」
「なんで二人はそんな騒いでんだ?」
「
「ソレガシお前……閉所恐怖症か?」
そうだったらいいな‼︎ 閉所恐怖症だったらな‼︎ 別天地行きの揺り籠に乗ってるかもしれないからメンブレしそうなんだよぉ‼︎
いや落ち着けッ‼︎ 必ずしも
だからそうっ、これは夢だ……。なんか
「……あら?……あらあらこれは、ソレガシ卿にウメゾノ卿、イリガキ画伯まで、お久しぶりでございますね。お帰りなさいませ」
白いフードを纏う
息を飲む音が二つ聞こえる。
ただいまなどと告げる以前に取り敢えず今は何より欲しい物がある。
「あのぉ……仮眠室とか借りられますかな?」
今は寝させてくれ。現実逃避できるぐらいぐっすりと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます