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「お前らが1キルずつ献上したのは誤算だったがこれで三対一。ちゃんと餌は巻いてある。後は……おっ! 早速かかったぞ!」


 反応したのはロイのスキル『モーションセンサー』。

 壁や床に設置し、近くに敵を感知すると知らせる。

 

「座標はX123、Y53の崩れかけた建物だ! ユニゾンスキル起動!」


 ユニゾンスキルとは一試合で一回のみ可能な特殊スキルで、レベル50で解放。

 生存している味方のスキル効果を一定時間共有できるという強力な物。

 三人はそれぞれブースト、ジャンプを発動し散会。

 逃げ場のないように三方向から追い詰める陣形をとった。

 さらに目標地点に近づいた頃、サーチを発動し、獲物が二階にいる事を確認。


「よし! 合図を出すまで待機。俺は吹き飛んだ天井から、ヒンジは右の窓、スーは左の窓から突撃な!」


「「了解!」」


 無線に二人が同時に答える。

 


 ロイにとってうんざりするのは獲物にちょこちょこと逃げられる事。

 そして興奮を覚えるのはそんな獲物を罠にかけた時。


 ロイがもう一つ仕掛けた物、それは――


「よし! 続けてひっかかりやがった!」


 スキル『スタンマイン』。

 モーションセンサーと同様に近づくと自動で発動。

 対象を痺れさせ、一定時間動きを封じる。



「ユニゾンスキルが切れる前に行くぞ! お前ら!」


 ロイの掛け声とともに三人が一斉に突入。

 目論見通り、床には死んだように座り込む一ノ瀬がいた。


 念には念を入れてロイがアサルトライフルの照準を向けたまま、残りの二人が左右から抱えるようにして一ノ瀬を無理やり起き上がらせた。


「さあて、良くも今までコソコソと逃げ回ってくれたなぁ、隊長さんよぉ」


 一ノ瀬は返事はおろか首を持ち上げる事すらできない。


「安心しろ。仲間をいたぶり損なった分、あんたにはその分も楽しんでもらうからよぉ」


 そう言ってロイが銃器を振りかぶった時――、


「……ら……に……ない」


「あー、麻痺が解けたて来たか? 聞こえないんですけど?」


「お前らは……絶対に……絶対に生きて返さないと言ったんだ!」


 あまりの凄みに威圧されたヒンジとスーが不安そうな表情を浮かべるが、ロイだけは鼻で笑った。


「はっ、この状況で何イキっちゃってんの? あんたはこれからなぶり殺されんだよ!」


 しかし、一ノ瀬はにやり笑みを浮かべ、


「いいや、死ぬのはお前らの方だ」


 そう言い切った瞬間。遥か上空から飛来した矢が三本、タン・タン・タンと順に床に突き刺さった。


「あっぶねえ! でも、外れだなぁ! まあ、当たったところでカスみたいなダメージにしか――」


「いいや、当たりだ」


 遅れて飛来した四本目が着弾した瞬間、床に亀裂が入り一気に崩壊した。


 一ノ瀬が仕掛けたトラップ。

 ロイが初めにガトリングで家屋を破壊した事からもわかるように、建築物には耐久度の概念が存在し、武器毎に何発で壊れるかが決まっている。

 つまり、一ノ瀬はモーションセンサーがある事を承知で一階に侵入。

 あらかじめ一階の天井すなわち二階の床に矢を放ち耐久度を削った。

 そして後数発で壊れるところで二階へと上がり、ステルスを使用した状態で上空に不可視の矢を放った。

 元々矢の発射音は小さいがステルス状態で放つ事により検知はまず不可能。

 そしてわざとスタンマインを踏んで敵がやってくるのを待っていたのだ。



 崩落の中、一ノ瀬はナイフを取り出し体をひねるようにして二人の首を一気に撫で斬り、蹴り飛ばし、その反動を利用して正面のロイに覆いかぶさる。

 そのまま地面に叩きつけると同時にクビに深々とナイフを突き立てた。

 ナイフの先は首を貫通し、ロイはまるで昆虫標本のように床に固定された。



「自衛官を舐めるな」


「ガ……ガガ……ガアッ」



 気道が変に捻じれてうまく声が出せないロイはそのまま虫けらのように死んだ。

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