私の居場所 32

 いきなり質問されたもので明石悠はおどおど。そのまま質問に応えようとします。それを見た日向隊員は、むっとして、

「ええ、この人、バカ正直に答えるつもりなの、私が被害者だって? もう、何考えてんのよ!」

 と思いました。日向隊員は明石悠の手を思いっきり引っ張りました。

「来て!」

 そのせいで明石悠はバランスを崩します。

「うわっ!」

 そのまま明石悠は日向隊員に引っ張られ、行ってしまいました。

「そんなに強く引っ張らないでよ~っ!」

 明石悠を見送る記者たち。全員呆気に取られてます。と、そこにもう1人のマスコミの記者が駆けつけて来ました。

「おーい、被害者が誰だかわかったぞ! 被害者の名前は明石悠。名前は日本人ぽいけど、外国人らしい」

 1人の記者が反応します。

「ええ、外国人?」

 別の記者がさらに質問します。

「どこの国の?」

 くだんの記者が応えます。

「さあ、国籍は不明だけど、肌が黒いって・・・」

 それを聞いてその場にいた記者全員がびっくり。

「ええーっ!・・・」

 2人の記者が顔を見合わせ、同時に大声で発言しました。

「さっきの!?」

 記者たちは一斉に日向隊員と明石悠が去って行った方向を見ました。が、すでに2人はいません。焦る記者たち。

「おい、あの、どこに行ったんだ!?」

 記者たちは路地を捜します。けど、2人の姿は見つかりません。地団駄を踏む記者たち。

「くそーっ!・・・」


 再び時刻を巻き戻します。今度は1時間ほど巻き戻しましょう。

 ここは街道。2台の警察用のバスが走ってます。

 その先頭のバスの車内、フル装備の機動隊員が乗ってます。その数15人ほど。その先頭の席にはジャケット姿の刑事が乗ってます。四之宮警部、30代の少年課の男性です。

 バスの運転手が横目で四之宮警部を見ました。

「四之宮警部、間もなく目的地です!」


 2台のバスが道端に停車。バスから機動隊員が続々と下りてきました。2台合わせて30人ほど。そのまま一列になって移動開始。その先頭にいる四之宮警部と機動隊の隊長らしき人物が会話してます。まず四之宮警部から。

「目的の建物はこの先です」

「了解!」

 隊長らしき人物は横目で後ろに続く機動隊員を見て、

「しかし、こんなに機動隊員が必要なんですか?」

「ああ、情報だと集まってる不良は10人以上はいるらしいんだ」

 機動隊の隊長はため息混じりに応えます。

「はあ・・・」

 相手はガキだろ? ほんとうにオレたちが必要なのか? なんかこの人、あまり乗る気ではないようですね。


 ここは薄暗い建物の内部。周りを見ると、ちょっと前まで町工場だったて感じのそこそこ大きな空間のある建物です。

 地面(コンクリートの叩き)からちょっと高いところ、壇上のようなところに1人の恰幅のいい中年の女が立ち、怒鳴り散らしてます。

「なんじゃい、この数は!? できる限り兵隊を集めて来いと言っただろ!」

 女の髪の毛は縮れ毛の金髪。濃い化粧。ギンギラギンな上着。どうやらこの女、そっち方面ではかなり名の通った人物のようです。

 女の前にいるモヒカンの男は、申し訳なさそうに、

あねさん、いくらなんでもそれはムリっすよ」

 その隣にいるリーゼントの男も、恐る恐る漏らします。

「そ、そうですよ。平日の昼日中ひるひなかですよ、今は。いくらオレたちがドロップアウトしてると言っても、学校に行ってる者もいれば、バイトしてる者も、就職してる者もいるんですよ。これがやっとですよ」

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