侵略者を撃つな! 85

 日向隊員は横目ですみれ隊員を見ます。そしてニヤッと笑うと、両二の腕・両太もも・両すねの補助用エアジェットエンジンを開け、点火。旋回開始。すみれ隊員の身体を軸に大きく螺旋を描き始めました。すみれ隊員は猛スピードで飛んでます。そのスピードに合わせて螺旋を描いてるのです。これはとてつもないテクニック。隊長はこれを見て、感嘆の声をあげました。

「おお~ こいつはすごいな!」

 日向隊員は螺旋を描くのをやめ、またすみれ隊員とサイドバイサイドで飛び始めました。飛びながらすみれ隊員に話しかけます。

「どうです、すみれさん」

 すみれ隊員は横目で日向隊員を見ると、大きく旋回。今度はすみれ隊員が日向隊員を軸に螺旋を描き始めました。が、すぐに外にそれてしまいました。遠心力に負けてしまったのです。日向隊員はクスッと笑いました。南原主幹。

「うん、日向さんは両手両脚のエアジェットエンジンをうまく使ってるけど、黒部さんは体内の反重力エンジンをまだ使いこなしてないな」

 隊長。

「しかし、日向が空飛ぶの、今日で2回目だろ。よくもこんなに早く飛行術を掌握できたな」

 南原主幹。

「日向さんはまだ小6。若い分、吸収が早いんですよ」

「あは、そっか、実年齢20歳はたちを越えてるすみれには、ちょっときつかったか・・・ ふっ、まったく小学生は最高だぜ!」

 と、隊長はふいに冷たい視線を感じました。横目で確認すると、倉見隊員と寒川隊員が自分を冷めた眼で見てました。

「おい、おまえら、今のオレのセリフ、曲解したろ」

 2人はたどたどしく応えます。

「い、いいえ」

「な、何も・・・」

 隊長はぷいっとあっちの方向を見て、

「ふん」


 大空を舞ってた日向隊員が両手、両脚の補助用エアジェットエンジンを使って空中で立ち上がった状態になり、そのまま隊長の近くに着陸。隊長を見て、ニコッと笑います。隊長は話しかけました。

「ふっ、もう慣れたみたいだな」

 今度はすみれ隊員が帰ってきました。すみれ隊員も空中で立ち上がった状態になりました。その姿勢で着陸しますが、着地寸前バランスを崩してしまい、尻もちをついてしまいました。心配する寒川隊員。

「お、おい、大丈夫か?」

 すみれ隊員はいつものように無言で立ち上がりました。そして横目で日向隊員を見ました。珍しく怖い眼です。寒川隊員はそれに気づき、

「お、おい・・・」

 日向隊員がすみれ隊員に近づいてきました。そして握手を求め、右手を水平に上げました。

「黒部さん、初めまして。私、今度テレストリアルガードの隊員になった日向愛です」

 すみれ隊員はその手をにらみました。と、すみれ隊員はその手を無視するようにぷいっと横を向いてしまいました。驚く日向隊員。

「え?」

 すみれ隊員は歩いて行ってしまいました。日向隊員はそれを見て、

「私、またなんか悪いことしちゃったかなあ?・・・」

 日向隊員に近づいてきた隊長が応えます。

「うん・・・ これはオレの想像だが・・・

 あいつはえびちゃん・・・ 海老名隊員にいろいろと嫌がらせを受けていた。だからメガヒューマノイドになってなんとしても海老名隊員以上の力を発揮する気でいたんだ。なのにえびちゃんの身体を受け継いだ君に負けてしまった。それが悔しいんじゃないかな」

「え~ 海老名さんて、意地の悪い人だったんですか?」

「ふ、まあな」

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