侵略者を撃つな! 81

 まず園田刑事が切り出しました。

「実は1ケ月前、板橋線のガード下で殺人事件がありまして、そのことでお訊きしたいことがありまして」

「ああ、あの事件・・・」

 芹川刑事はちょっとびっくり。

「おお、ご存じでしたか」

「ええ、かなり大きなニュースになってましたよねぇ。まだ捜査中でしたか」

 今度は園田刑事が反応しました。

「ええ。犯人どころか、被害者の身元もなかなかわからなくって・・・ 今日やっと判明した状況なんですよ」

 今度は隊長がびっくり。

「ええっ、1ケ月も経ってんのに?」

 園田刑事。

「まあ、恥ずかしい話ですが・・・

 実はあの事件の被害者はコンクリートブロックで何回も何回も顔面を殴打されてまして、頭蓋骨の顔面部分はぐちゃぐちゃ。そのせいで身元がまったく判別できない状態でした」

 芹川刑事。

「スーパーインポーズ法や復顔法も使えない。歯も一部の奥歯以外全部折れてまして、歯の治療痕も使えない状況でした」

 園田刑事。

「DNA型鑑定も行いましたが、我々警察が持ってるデータベースに登録はありませんでした。他のデータベースにもアクセスしましたが、なかなか見つからなくって・・・

 けど、やっと見つけることができました。特別な許可をもらい公安部のデータベースにアクセスしたところ、ようやく血縁者が見つかったのです!

 被害者は豊原辰巳さんでした」

「豊原辰巳?」

 隊長にとってはまったく知らぬ名前。が、園田刑事の話には続きがありました。

「こちらに在籍している黒部すみれさんの父親です」

 それを聞いて隊長はまたもやびっくり。

「ええ!?」

 す、すみれの父親? すみれの父親が殺された?・・・ 隊長は唖然としてしまいました。

 園田刑事はさらに言葉を続けます。

「黒部すみれさんに会わせてもらいたいのですが?」

 けど、隊長は唖然としたまま、反応しません。2人の刑事はあせり顔で質問。

「あ、あの~ 香川さん?・・・」

 隊長はふと我に返りました。

「あ?・・・ ああ、すみません。

 黒部隊員は6年前の戦争で全身に大けがを負いまして、ときどき人間ドックのような検査を受けないといけないんですよ。今その最中で、あと2・3日は・・・」

 隊長はメガヒューマノイドの話を避けるために、わざとウソの説明をしました。2人の刑事は残念そう。芹川刑事。

「あ~ そうですか・・・」

 園田刑事は立ち上がりながら、

「それじゃ、黒部さんが退院したら、またお伺いすることにします」

 2人の刑事は自動ドアを開け、出て行きました。それを立ちあがって見送る隊長。隊長は再び思いました。

「まさかあの事件の被害者がすみれの父親だったなんて・・・」

 実は隊長はある程度すみれ隊員のプロフィールを知ってました。

 1歳のときに両親が離婚。すみれ隊員は母親に引き取られ、母親1人で育てられました。母親1人で育てられたというとかなり苦労して育てられたような感じがありますが、この母親は結婚前から立ち上げていた化粧品のブランドが好調で、金に苦労することはありませんでした。

 ちなみに、この母親、6年前の戦争で亡くなってます。

 すみれ隊員は父親をどう思ってたのでしょう? 両親は離婚したとはいえ、逢うことはできたのか? それとも1度も逢うことはできなかったのか?

 どっちにしろ父親が殺されたと聞いたら、すみれ隊員は悲しむはず。いや、すみれ隊員は脳に大けがを負って心が希薄になってます。父親が殺されたと聞いても、何も反応しないかもしれません。

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