侵略者を撃つな! 75

 南原主幹は首の切断面に円盤を押し付けました。円盤は切断面と同じ大きさ。厚さは5cmくらい。色は日向隊員の肌と同じ色です。底には空気の取り入れ口が見えます。

 南原主幹は円盤を45度回転させます。カチャッという音。その音で日向隊員ははっとします。

「ん? 何か取り付けた?」

 南原主幹はニヤッとします。次の瞬間、両手下手投げで日向隊員の首を空中に放り投げました。

「ほらっ!」

 びっくりする日向隊員。

「うわーっ!」

 が、日向隊員の首は空中に停止。切断面を下に静止してしまったのです。日向隊員は何がなんだかわからないまま、口をぽかーんと開けてます。

「あ、あれれ? 私、浮いてる?・・・」

 南原主幹。

「ふふ、それは開発したばかりの小型空中浮遊ユニットだ。日向、前に進んでごらん」

「ええ?」

「前に進めと念じればいいんだよ」

「あ、はい・・・」

 日向隊員はぶつぶつと小声でつぶやきます。

「前に進め、前に進め、前に進め・・・」

 すると日向隊員の首は、すーっと音もなく前進しました。日向隊員は歓喜。

「あは、すっごーい!」

 南原主幹。

「今度は後退」

「はい」

 日向隊員の首は、今度はすーっと後退。日向隊員はまたもや歓喜。

「あはは、すごーい、すごーい!」

 日向隊員の首は自らの意志でくるくると円を描き始めました。日向隊員はもう笑うしかありません。

「きゃははは」

 その日向隊員に説明する南原主幹。

「君の首に取り付けたユニットの中には、超小型の反重力エンジンが入ってるんだ。高性能の人工心肺のユニットも入ってるから、食事と睡眠を無視すれば、ずーっとその状態で生きていけるぞ」

 が、日向隊員は説明を聞いてません。ともかく好き勝手に飛び回ってます。南原主幹は再び呼びかけます。

「どうだ、テレストリアルガードの最新技術は?」

「あはは、首だけなのにこんなにすいすい飛べるなんて、すごいよ!」

 が、そんな日向隊員を見てる隊長の眼はしらけてます。こんなことを思ってました。

「なにが最新技術だ、ただの安っぽいオカルトだろ、これ・・・」

 女神隊員と倉見隊員はただ苦笑いしてました。

 さて、気持ちよさそうに飛んでる日向隊員ですが、実は今頭の中でよからぬ企てが湧いてきました。それは復讐。日向隊員はまだまだ困ったちゃんのようです。


 クレイン号が浮上を開始しました。通常のジェット機ならジェットエンジンの音が響くところですが、クレイン号は反重力エンジンを使ってるせいか、まったくの無音です。

 クレイン号コックピット。操縦席に隊長と倉見隊員が座ってます。隊長はコンソールのモニターを見てます。モニターには草原に佇む南原主幹が映ってます。南原主幹の視線はこのカメラの方を見てます。

 隊長は宙に浮く首だけの日向隊員を思い出し、つぶやきました。

「まったく、不気味なものを作りやがって。どんなオツムしてるんだ、あいつ?・・・」

 隊長は倉見隊員を見ました。

「なあ、倉見。今日はこのままジェットエンジンで帰ってみないか?」

「いいんですか? ジェット燃料を過剰に使って?」

「基地まで20分もかからんだろ。たまには空中散歩を楽しまないか?」

「ふ、わかりました」

 クレイン号外観。クレイン号のジェットエンジンが起動しました。


 クレイン号コックピット。隊長が5点式シートベルトをはずし、後ろの席に。後ろの席には女神隊員と日向隊員が座ってます。

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