侵略者を撃つな! 72
日向隊員は持っていた傘と花束を落としました。そしてその場に崩れるようにしゃがみ込みました。車いすの男性はびっくり。
「ど、どうしました?」
涙声の日向隊員。
「ご、ごめんなさい!」
日向隊員は慌てて立ちあがると、今来た方向に一目散に駆け出しました。途中嗚咽なのか、大声をあげました。
「うわーっ!」
日向隊員はそのまま山門の外へ。その場で待っていた隊長にいきなり抱き付きました。大号泣、涙がほとばしってます。
「私は、私は、とてつもなく悪いことをした女! こんな女は死んじまった方がいいのよーっ!・・・」
隊長はその日向隊員の頭を優しく撫でました。
「そっか」
隊長は感じました。こいつ、ようやく自分がしでかした事の重大性に気づいたか。その一方で、頭の中でこんなつぶやきもしました。
「ま、ここで死なれたらテレストリアルガードは大変困るんだけどね。君の身体にはびっくりするほどの大金がかかってるから」
隊長は日向隊員の両肩を掴み、彼女の身体を引き離しました。
「さあ、涙を拭いて、行こっか」
日向隊員は幼児のように両手で涙を拭き、そして隊長の顔を見て、応えます。
「はい」
隊長はスマホを取り出し、それに話しかけました。
「倉見、リフトアップ頼む」
すると上空から一筋の淡い光がサーチライトのように舞い降りてきました。隊長と日向隊員がその光に入ると、2人の身体は浮上し始めました。そのまま上空に上がっていく2人の身体。
実は2人の上空には認識ステルス機能を作動させたクレイン号が浮いてました。認識ステルス機能とは、すべての人の肉眼からその存在を消してしまう機能です。レーダーからも消滅します。現在クレイン号は可視できない状態になってるのです。
クレイン号機内。コックピット。テレストリアルガードの隊員服に着替えた隊長が副操縦席に座りました。操縦席には倉見隊員が座ってます。倉見隊員が隊長に話しかけます。
「いいんですか、こんなところで光の昇降機を使っちゃって? 誰かに見られてたら、東〇ポ1面ものですよ」
隊長は笑って応えます。
「あは、いいさ。東〇ポ1面じゃ、誰も信じちゃくれないだろって。
さあ、行くぞ!」
「了解!」
透明なクレイン号はほんとうに消滅しました。
ここは晴天下の草原。近くに巨大な富士山が見えます。そう、ここは故海老名隊員がメガヒューマノイドテストを行った場所。今この上空に透明なクレイン号が現れました。
クレイン号コックピット。操縦席の倉見隊員がディスプレイを見て、
「ジャンプアウト完了! チェック、ライトオールグリーン!」
続いて副操縦席の隊長が指令を出します。
「よし、認識ステルス機能解除!」
倉見隊員が応えます。
「了解!」
上空。透明だったクレイン号がこつ然と姿を現しました。
コックピット。あたりを見回しながらつぶやく隊長。
「ふっ、こっちは晴れてるんだな」
隊長は再び倉見隊員に命令します。
「着陸!」
「了解!」
上空。クレイン号が反重力エンジンを使って静かに降下を始めました。
コックピットの背後、40人程度が座れる席ですが、今は2人しか座ってません。女神隊員と日向隊員です。2人ともテレストリアルガードの隊員服。女神隊員はウィッグで特徴的な単眼を隠してます。
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