侵略者を撃つな! 70
ほぞを噛む副機長。
「くく・・・」
副機長はヘッドセットに話しかけます。
「機長、説得失敗しました」
ヘッドセットから、
「了解。近くの飛行場に着陸する。操縦席に戻ってくれ」
副機長は応えます。
「了解」
副機長は2人の警備員を見て、
「君たちはこの2人がこれ以上悪さをしないよう、見張っててくれ」
「了解」
が、2人の男は悪びれた様子がありません。現在も金目ひなたにカメラを向けたままです。カメラを持った男がもう1人の男を見て、
「あは、オレたち、何も悪いことたか?」
「こいつは完全な言いがかりだ。帰ったら警察に名誉棄損で訴えないといけないな!」
2人は同時に笑いました。
と、ここで機内アナウンス。
「当機では現在お客様同士によるトラブルが複数発生してます。やむを得ず最寄りの空港に一時着陸します。ご了承ください」
突然飛行機全体に今までとは違うGがかかりました。飛行機が旋回し始めたようです。男の1人がそれを感じ、
「ん、着陸する気か、ほんとうに?」
もう1人の男。
「あは、構うことないさ」
カメラを向けられてる金目ひなたはひたすら怯えてました。
現在、ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。巨大なたまご型のテーブルに座って話をしてる日向愛隊員。
「私はあのとき、すべてが嫌になりました。こんな飛行機なんか墜ちちゃえばいいんだ。全部無くなっちゃえばいいんだ! と、本気で願いました。そしたら、そしたら・・・」
日向隊員の心の中、夜間の山腹に墜落していく飛行機。
「ほんとうに・・・ ほんとうに飛行は墜落しちゃいました。お父さんもお母さんも、みんな、みんな、死んじゃった・・・」
日向隊員は大声で泣き始めました。
「うわ~!」
「よしよし、よく話してくれたな」
隊長は日向隊員の頭を優しく抱きました。
隊長はふと横目で周囲を見回しました。女神隊員と倉見隊員は、特に興味を示してません。上溝隊員はそっぽを向いてます。隊長はちょっと残念な顔を見せました。悪事を働いた少女がその悪事をすべてぶちまける。これにはかなりエネルギーが必要なはず。それを理解して欲しかったようです。
その一方で隊長はあることに気づきました。日向隊員の心には、まだ欠けているところがある。それをなんとかしないと、テレストリアルガードでは使いものにならないぞ・・・
隊長は少ししゃがんで、日向隊員の眼を見ました。
「で、これから君はどのように生きてくつもりなんだ?」
「え・・・」
思わぬ質問。日向隊員はちょっと考え、応えました。
「一生懸命生きます!」
「なんのため?」
「死んだお父さんのため・・・」
「あはっ、そうじゃないよ。君が自殺に追いやってしまった山際怜子にどういうつぐないをするのか? それを訊きたいんだよ」
日向隊員は再び少し考え、応えました。
「
隊長は呆れたという顔を見せました。
「あは、そっか、それはとても残念だ」
日向隊員はびっくり。
「え?」
「今の君の発言は典型的な加害者の論理だ。いいか、今日本人の多くはこう思ってるはずだ。なんで国は金目ひなたを逮捕しないんだ? なんで死刑にしないんだ、てね」
それを聞いて日向隊員は強いショックを受けました。
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